下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 平成17年 問15

【問 15】 甲マンションの管理者Aは、平成17年5月1日に、201号室の所有者Bに対して滞納している管理費等の請求を行った。この場合におけるBの消滅時効の援用に関する次の記述のうち、民法及び区分所有法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。ただし、滞納期間は、平成11年4月1日から平成17年3月31日までとし、Bは、平成17年4月1日に、201号室の当初の購入者である前区分所有者Cから同室の譲渡を受けたものとする。

1 平成17年4月1日にCが滞納管理費等を自分で支払う旨をBに約束していた場合でも、Bは、その滞納管理費等のうち時効が完成している分につき時効を援用することができる。

2 平成17年5月1日にBがAに対してCの滞納管理費等の支払の猶予を求めた場合でも、Bは、その滞納管理費等のうち時効が完成している分につき時効を援用することができる。

3 甲マンションの入居時に区分所有者全員で管理費等の滞納が発生したとしても時効を援用しない旨の合意をしていた場合は、Bは、Cの滞納管理費等のうち時効が完成している分に付き時効を援用することができない。

4 Bは、平成17年6月1日にCの滞納管理費等をAに支払った場合に、時効の完成を知らなかったときは、時効を援用し、Aに対し、既に支払った滞納管理費等のうち時効が完成していた分の返還を請求することができる。

【解答及び解説】

【問 15】 正解 1

1 正しい。時効を援用できるのは、「当事者」である。そして、この時効の援用権者である当事者というのは、判例によれば「時効により直接利益を受ける者」とされる。そこで、本問のBは管理費を滞納した区分所有者の特定承継人ということで、滞納管理費の支払義務を負っているので、まさに「時効により直接利益を受ける者」になる。したがって、Bは、その滞納管理費等のうち時効が完成している分につき時効を援用することができる。なお、Cが滞納管理費等を自分で支払う旨をBに約束しているが、これはCB間の内部関係にすぎす、Bは管理費の支払義務を負っている。
*民法145条

2 誤り。管理費の消滅時効は5年であるから、平成17年5月1日段階ですでに一部の管理費債権が時効によって消滅しているので、BがAに支払い猶予を求める行為は、時効完成している部分については時効完成後の「承認」に該当する。そして、時効完成後の承認は、債務者が時効完成を知っていたかどうかを問わず、時効の援用権を失うものとされる(判例)。
*民法145条

3 誤り。時効の利益は、時効完成前に放棄することができない。したがって、区分所有者全員が管理費等の滞納が発生したとしても時効を援用しない旨の合意をしていたとしても、改めて時効を援用することができる。
*民法146条

4 誤り。管理費の消滅時効は5年であるから、平成17年5月1日段階ですでに一部の管理費債権が時効によって消滅しているので、BがAに滞納管理費を支払う行為は、時効完成している部分については時効完成後の「承認」に該当する。そして、時効完成後の承認は、債務者が時効完成を知っていたかどうかを問わず、時効の援用権を失うものとされる(判例)。
*民法145条