下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 平成16年 問31

【問 31】 マンション内において生じた紛争について、管理組合が原告として訴訟を提起することができるものは、区分所有法、民法及び民事訴訟法の規定によれば、次のうちどれか。

1 特定の区分所有者が専有部分内で騒音を発生させ、直下の居住者とトラブルとなっているため、その騒音の差止請求

2 管理会社から派遣された管理員が、犬の飼育を禁止している規約の規定に違反して区分所有者が飼っている犬にかまれてけがをしたため、その損害賠償請求

3 特定の専有部分の区分所有権につき複数の者が区分所有権を争っているため、管理の必要上行う区分所有者の確認請求

4 特定の専有部分の占有者が占有権限のないことが疑われるため、管理の必要上行う占有権限の確認請求

【解答及び解説】

【問 31】 正解 3

1 できない。区分所有者が、建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をした場合には、管理組合は、その行為の差止請求をすることができるが、本肢では、直下の居住者とトラブルとなっているにすぎないので、「区分所有者の共同の利益に反する」とは言えないと考えられ、管理組合が騒音の差止請求をすることはできない。
*区分所有法57条1項

2 できない。犬にかまれてけがをしているのは、管理会社から派遣された管理員であり、管理組合が「原告」として訴訟を提起し、損害賠償請求をすることはできない。当該区分所有者は規約の規定に違反して犬を飼っているが、それは「損害賠償請求」とは別に、規約違反で対処すべき問題である。
*区分所有法3条参照

3 できる。区分所有者の確認請求について、管理組合が当事者適格(確認の利益)を有するかであるが、管理組合は管理費を誰に請求するか、議決権を誰に行使させるかについて、確認の利益がある。

4 できない。占有権限の確認請求について、管理組合が当事者適格(確認の利益)を有するかであるが、管理組合は占有者に対して管理費を請求したり、議決権を行使させたるするわけでなく、確認の利益があるとはいえない。


【解法のポイント】正解肢は肢3ですが、肢3と肢4は似たような事例ですが、このような場合は、比較すれば分かりやすくなります。区分所有者かどうか(肢3)と、占有者かどうか(肢4)は、比較すれば管理組合にとって区分所有者かどうかの方がより利害関係を持つことは明確です。これだけで、正解がでるわけでありませんが、少なくとも、肢4が正解でないことだけは分かります。