下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

マンション管理士 過去問解説 平成15年 問16

【問 16】 甲マンションの301号室の所有者Aが同室をB社の社宅として賃貸し、B社の社員Cが入居したところ、Cが不注意により洗濯機から溢水(いっすい)させ、同室及び直下の201号室(所有者D)に損害を与えた。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。ただし、301号室には、瑕疵はなかったものとする。

1 Aは、溢水の行為者ではないが、301号室の所有者として、Dに対して損害賠償責任を負う。

2 Bは、Cの溢水行為が社宅内の出来事であるので、Cの使用者として、Dに対して損害賠償責任を負う。

3 Bは、溢水の行為者ではないから、Aに対して損害賠償責任を負わない。

4 Cは、未成年者であっても、A及びDに対して損害賠償責任を負う。

【解答及び解説】

【問 16】 正解 4

1 誤り。土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。そもそも、洗濯機からの溢水は、「工作物の設置又は保存に瑕疵」とはいえない。また、この占有者の責任は、過失責任であるが、本問ではCの不注意により洗濯機から溢水させているので過失があり、所有者AはDに対して損害賠償請求を負わない。
*民法717条1項

2 誤り。ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその「事業の執行」について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。社宅での洗濯機からの溢水は、「事業の執行」とはいえないので、BはDに対して損害賠償請求を負わない。
*715条1項

3 誤り。Bは溢水の行為者ではないが、その履行補助者であるCの過失については、賃借人として賃貸人であるAに対して損害賠償請求を負う。
*民法415条

4 正しい。未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わないが、この「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」というのは、11~12歳程度とされており、CはB社の社員として働いている以上、この責任能力は満たしているものと認められる。
*民法712条