下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

管理業務主任者 過去問解説 令和4年 問37

【動画解説】法律 辻説法

【問 37】 滞納管理費が一部弁済された場合の充当順序を判断する要素である次のア~オについて、民法の規定によれば、優先順位の高い順に並べたものとして、最も適切なものはどれか。

ア 規約の定めによる充当順序
イ 管理組合が滞納組合員に対する意思表示により指定した充当順序(滞納組合員から直ちに異議を意思表示しなかった場合)
ウ 滞納組合員が管理組合に対する意思表示により指定した充当順序
エ 滞納組合員の利益の多い順序
オ 弁済期の先後

充当順序
  第一順位 第二順位 第三順位 第四順位 第五順位


【解答及び解説】

【問 37】 正解 1

債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合について、民法に規定があるが、これらの民法の規定にかかわらず、弁済をする者と弁済を受領する者との間に弁済の充当の順序に関する合意があるときは、その順序に従い、その弁済を充当する(民法490条)。つまり、当事者の合意が優先されることになるが、滞納管理費の充当については、この当事者の合意は規約の定めになるので、最も優先されるのは、「規約の定めによる充当順序」(ア)である。

次に、債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないときは、「弁済をする者」は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる(民法488条1項)。したがって、弁済者は本問では滞納組合員であるから、二番目に優先されるのは、「滞納組合員が管理組合に対する意思表示により指定した充当順序」(ウ)である。

次に、弁済をする者が弁済の充当の指定をしないときは、「弁済を受領する者」は、その受領の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。ただし、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない(民法488条2項)。本問では、「弁済を受領する者」は、管理組合になるので、三番目に優先されるのは「管理組合が滞納組合員に対する意思表示により指定した充当順序(滞納組合員から直ちに異議を意思表示しなかった場合)」(イ)である。

次に、弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも指定をしないときは、全ての債務が弁済期にあるときは(本問は、「滞納」管理費であるから、これに該当する。)、「債務者のために弁済の利益が多いもの」に先に充当する(民法488条4項2号)。したがって、四番目に優先されるのは、「滞納組合員の利益の多い順序」(エ)となる。

最後に、債務者のために弁済の利益が相等しいときは、「弁済期が先に到来したもの」に充当する(民法488条4項3号)。したがって、五番目に優先されるのは、「弁済期の先後」(オ)である。

以上より、優先順位の高い順に並べると、ア→ウ→イ→エ→オの順になり、肢1が正解となる。


【解法のテクニック】この問題は、マイナーな範囲で、しかもポイントが絞られた問題でしたから、難しかったのかもしれませんが、民法では、契約自由の原則がとられているので(本問は契約ではありませんが…)、当事者の意思が優先されます。いろいろなところで、「当事者が別段の意思を表示しなかったとき」のような文言をみかけると思いますが、これは当事者の意思がまず優先されることの表れです。したがって、アが先頭に来そうだと分かれば、それだけで正解が導けました。本試験の現場で、そこまで機転が利くか分かりませんが、何とか食らいついた人は正解できた人もいたのではないかと思います。