下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

管理業務主任者 過去問解説 令和3年 問41

【動画解説】法律 辻説法

【問 41】 区分所有者Aが、自己の所有するマンションの専有部分をBに賃貸する契約において、AB間で合意した次の特約のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、無効であるものを全て含む組合せはどれか。

ア Bが、賃料を滞納した場合には、Aは、直ちに専有部分に入る玄関扉の鍵を取り替える特約

イ Bは、賃貸借の契約期間中、中途解約できる特約

ウ Bが死亡したときは、同居する相続人がいる場合であっても、賃貸借契約は終了する特約

エ BがAの同意を得て建物に付加した造作であっても、賃貸借契約の終了に際して、造作買取請求はできない特約

1 エ
2 ア・イ
3 ア・ウ
4 イ・ウ・エ

【解答及び解説】

【問 41】 正解 3

ア 無効。借主が賃料を滞納すると、債務不履行になるが、債務不履行があっても直ちに解除事由となるのではなく、信頼関係が破壊されたときにはじめて解除事由となる。さらに、契約の解除事由が発生したとしても、玄関扉の鍵を取り替える行為は、違法な自力救済で不法行為にあたるものであり、このような特約は無効である。
*民法709条

イ 有効。当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、各当事者は、解約の申入れをすることができる。したがって、本肢のような特約も有効である。
*民法618条

ウ 無効。賃借人が死亡すれば、賃借権は相続されるので、賃借人が死亡すれば賃貸借契約は終了する旨の特約は、賃借人に不利であり、そのような特約は無効である。
*借地借家法30条

エ 有効。建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。しかし、この造作買取請求権は特約で排除することができ、本肢のような特約も有効である。
*借地借家法33条、37条

以上より、特約が無効なのは、ア及びウであり、肢3が正解となる。


【解法のポイント】本問は、なかなか難しかったのではないかと思います。個数問題ではなく、組み合わせ問題だったという点が唯一の救いでした。本問の各肢で絶対にできないといけない肢は、エです。これが有効であることは必ず知っておくべき知識です。そうすると、エを含む肢1と肢4は、正解から除外できます。肢2と肢3がどちらかが正解であるかは、イとウの比較ということになります。これは過去問の知識だけからでは、なかなか分かりにくいですが、イは解説の通り、民法の条文にあります。その条文を知らなかったとしても、「B」が中途解約できるということですので、賃借人に不利はなさそうです。以上のようなやり方で考えれば、それなりに正解は導けたと思います。