下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

管理業務主任者 過去問解説 令和3年 問10

【動画解説】法律 辻説法

【問 10】 管理費の滞納が生じたときにとられる通常の民事訴訟によらない法的手段に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1 「内容証明郵便による督促」の場合は、簡便な手続であるが、消滅時効の完成猶予をさせる催告としての効力は生じない。

2 「支払督促」による場合は、簡易裁判所に申し立てることにより書記官が支払を命ずる簡略な手続であるが、債務者から異議申立てがなされると通常の訴訟に移行してしまう。

3 「調停」による場合は、弁護士等の専門家に依頼することはできないが、手続が訴訟に比べ簡明であり、調停委員の意見には強制力があることから、紛争が早期に解決される。

4 「少額訴訟」による場合は、通常訴訟に比べ、少ない経済的負担で迅速かつ効果的に解決することができるが、訴訟の目的の価額が60万円以下に制限されるため、滞納額が60万円を超えるときは、制限額以下に分割したとしてもこの手続を利用できない。

【解答及び解説】

【問 10】 正解 2

1 不適切。「催告」があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。この「催告」には、何らの形式も要求されておらず、「内容証明郵便による督促」でもよい。
*民法150条

2 適切。適法な督促異議の申立てがあったときは、督促異議に係る請求については、その目的の価額に従い、支払督促の申立ての時に、支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所又はその所在地を管轄する地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされ、通常訴訟に移行する。
*民事訴訟法395条

3 不適切。調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、裁判上の和解と同一の効力を有する。しかし、これは調停が成立した場合であり、調停委員の意見に強制力があるわけではない。
*民事調停法16条

4 不適切。簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が60万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。そして、滞納額が60万円を超える場合でも、請求額を60万円以下に分割すれば少額訴訟を利用することもできる。
*民事訴訟法368条1項


【解法のポイント】今年の問題は、1問の中でいろいろな法律にまたがる問題が多いですね。本問は、なかなか難しい問題だったと思いますが、正解肢の肢2は支払督促に関する知識として覚えておかなければならないので、正解は導けないといけないと思います。