下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

管理業務主任者 過去問解説 令和元年 問3

【動画解説】法律 辻説法

【問 3】 不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 債権が悪意による不法行為によって生じたときは、被害者は、加害者の反対債権が金銭債権の場合であっても、相殺をもってその加害者に対抗することができない。

2 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があり、それによって他人に損害を生じた場合において、当該工作物の占有者及び所有者は、その損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、その損害を賠償する責任を負わない。

3 被害者に対する加害行為とその加害行為の前から存在した当該被害者の疾患がともに原因となり損害が発生した場合において、加害者にその損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、その加害行為の前から存在した当該被害者の疾患を考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

4 不法行為により被害者が死亡した場合において、当該被害者の父母は、非財産的損害については、加害者に対して、賠償請求をすることができない。

【解答及び解説】

【問 3】 正解 3

1 誤り。「債務」が悪意による不法行為によって生じたときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。しかし、「債権」が悪意による不法行為によって生じたときは、相殺をもって債務者に対抗することができない。つまり、加害者側からの相殺は認められていないが、被害者側からの相殺は認められている。
*民法509条

2 誤り。土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、占有者は責任を負うことはなく、その場合は所有者がその損害を賠償しなければならない。所有者の責任は無過失責任である。
*民法717条1項

3 正しい。被害者に対する加害行為と被害者のり患していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、被害者の当該疾患を斟酌することができるものと解するのが相当である(最判平4.6.25)。
*民法722条2項

4 誤り。他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。
*民法711条


【解法のポイント】この問題は、肢3が判例の内容であり、難しい問題だったと思いますが、その他の肢は比較的簡単だったので、消去法で正解を導いて欲しい問題です。