下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

管理業務主任者 過去問解説 平成29年 問2

【動画解説】法律 辻説法

【問 2】 甲マンション(以下、本問において「甲」という。)において生じた不法行為に関する次の記述のうち、民法、区分所有法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 甲の管理組合法人の防災担当理事Aが、過失により防災訓練実施中に区分所有者Bにけがをさせた場合、甲の管理組合法人とともにAもBに対して損害賠償責任を負う。

2 甲の管理組合法人から設備点検を受託している設備会社Cの従業員が、過失により甲の施設を点検中に設備を損傷した場合、Cは、その従業員の選任及び監督について過失がなかったときでも、甲に生じた損害について損害賠償責任を負う。

3 甲の区分所有者Dが、過失により浴室から漏水させ、階下の区分所有者Eに損害を与えた場合、EがDに対して損害賠償請求をした時からDは遅滞の責任を負う。

4 甲の大規模修繕工事に際し、同工事を請け負った建設会社の従業員が、過失により建築資材を地上に落下させ、通行人が負傷した場合、甲の管理組合法人は、注文又は指図について過失がない場合でも、当該通行人に対して損害賠償責任を負う。

【解答及び解説】

【問 2】 正解 1

1 正しい。防災担当理事Aは過失により区分所有者にけがをさせているので、不法行為責任を負う。また、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律78条の規定は管理組合法人に準用されているが、同法によると、一般社団法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。したがって、甲の管理組合法人とともにAもBに対して損害賠償責任を負う。
*区分所有法47条10項、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律78条

2 誤り。ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたときは、この限りでない。Cが従業員の選任・監督に過失がなければ、Cが使用者責任を負うことはない。
*民法715条1項

3 誤り。Dは、Eに対して不法行為による損害賠償債務を負うが、不法行為による損害賠償債務は、期限の定めのない債務ではあるが、不法行為のときから遅滞に陥るとされている(判例)。損害賠償請求をした時から遅滞になるわけではない。
3 誤り。Dは、Eに対して不法行為による損害賠償債務を負うが、不法行為による損害賠償債務は、期限の定めのない債務ではあるが、不法行為のときから遅滞に陥るとされている(判例)。損害賠償請求をした時から遅滞になるわけではない。

4 誤り。管理組合法人は建設会社と請負契約を締結しているが、注文又は指図についてその注文者に過失があったときを除き、注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。したがって、管理組合法人は、通行人に対して損害賠償責任を負わない。
*民法716条


【解法のポイント】法的な根拠を考えると、正解肢の肢1は難しい肢だったと思います。しかし、肢2~肢4は「誤り」だと分からないといけないので、消去法でも正解を導けたと思います。