下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。
平成26年 管理業務主任者 本試験 【問 35】

【動画解説】法律 辻説法

【問 35】 マンションの駐車場に関する次の記述のうち、民法、区分所有法及び判例によれば、最も不適切なものはどれか。

1 分譲業者が、敷地に区画された駐車場部分に排他的利用を可能とする専用使用権を設定して、区分所有権とは別に分譲・販売することは、民法第90条の公序良俗に反し無効な契約であり、分譲業者は受け取った対価を管理組合に返還しなければならない。

2 建物内の構造上、利用上の独立性が認められる駐車場部分を、専有部分として登記して、住戸部分とは別に分譲・販売することができる。

3 敷地上の駐車場使用契約が使用貸借契約である場合には、契約の相手方である駐車場使用者との契約更改がない限り、集会決議によって有償化することはできない。

4 敷地に区画された駐車場について、無償で利用している一部の区分所有者等の専用使用権を消滅させるには、その変更に必要性、合理性、相当性が認められない限り、集会の決議のほかにその者の承諾が必要である。

【解答及び解説】

【問 35】 正解 1

1 不適切。分譲業者が、敷地に区画された駐車場部分に排他的利用を可能とする専用使用権を設定して、区分所有権とは別に分譲・販売することは、民法第90条の公序良俗に反するとまではいえず、契約は有効であり、分譲業者は受け取った対価を管理組合に返還する必要はない(最判平10.10.22)。

2 適切。構造上、利用上の独立性があれば、駐車場部分であっても専有部分とすることができるので、専有部分として登記して、住戸部分とは別に分譲・販売することができる。
*区分所有法1条

3 適切。敷地上の駐車場使用契約が「使用貸借契約」である場合、一旦契約が締結されている以上、契約の相手方である駐車場使用者との契約更改がない限り、集会決議によって有償化することはできない。

4 適切。駐車場について、無償で利用している一部の区分所有者等の専用使用権を消滅させるには、その変更に必要性、合理性、相当性が認められない限り、「特別の影響」が肯定され、集会の決議のほかにその者の承諾が必要である(最判平10.11.20)。


【解法のポイント】管理業務主任者の試験は、区分所有法などは普通に条文の知識だけを問うている問題が圧倒的に多いんですが、この問題は条文の解釈まで問うているような問題で、マンション管理士に多い出題パターンなので、難しかったと感じた人が多いと思います。なお、本問は肢1が確実に「不適切」なので、正解は肢1としましたが、肢3は結構難問だと思います。判例(最判平10.11.20)は、「区分所有者の有するマンション駐車場等の専用使用権を有償化するとの集会決議が右区分所有者の承諾のないままされた場合において、右区分所有者が管理費等をもって相応の経済的な負担をしてきた権利を更に有償化して使用料を徴収することは右区分所有者に不利益を与えるということのみから、集会決議により設定された使用料の額が社会通念上相当なものか否か等について検討することなく、右集会決議を無効であるとした原審の判断には、建物の区分所有等に関する法律31条1項後段にいう「特別の影響」の有無について、法令の解釈適用の誤り、審理不尽の違法がある。」としています。要するに、駐車場の専用使用権の有償化は、社会通念上相当なものであれば認められ、相当でなければ認められない、ということになります。ということは、肢3は、社会通念上相当なものかどうかについて触れることなく「集会決議によって有償化することはできない」と言い切っているので、「×」となりそうですが、肢3では駐車場使用契約が「使用貸借契約」だとしています。したがって、解説に書いているように契約は一旦締結された以上、その内容は履行しなければならないので、当事者の一方(管理組合、つまり集会の決議)の都合で勝手に変更できないということだと思います。上記判例は、使用貸借契約ではなく、「専用使用権」です。専用使用権→規約によって認められる→駐車場の有償化は規約変更だ→したがって、特別の影響を受ける区分所有者の承諾が必要だ(区分所有法31条1項)、という論理だと考えます。以上より、肢3は「適切」で、肢1が正解というのが結論です。