下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

管理業務主任者 過去問解説 平成23年 問2

【動画解説】法律 辻説法

【問 2】 マンションの管理組合A(以下本問において「A」という。)とマンション管理業者B(以下本問において「B」という。)との間で管理委託契約が締結されていた状況の下で、Bが使用を許されていたA所有のパソコン(以下本問において「本件パソコン」という。)が盗難に遭った場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 Bは、本件パソコンの管理につき善良なる管理者の注意を尽くしていたとしても、Aに対して損害賠償責任を負わなければならない。

2 Aは、本件パソコンの盗人に対して、盗難のあった時から1年を経過した時には、その返還を請求することはできない。

3 盗人が、本件パソコンを当該マンションの敷地内に放置していた場合において、Aは、本件パソコンを平穏かつ公然及び善意かつ無過失で拾得した者に対して、その返還を請求することができる。

4 Aは、本件パソコンを盗人から平穏かつ公然及び善意かつ無過失で買い受けた者に対して、その者が盗人に支払った代価を弁償すれば、いつでもその返還を請求することができる。

【解答及び解説】

【問 2】 正解 3

1 誤り。Bは、本件パソコンの管理につき善良なる管理者の注意を尽くしていたのならば、管理委託契約(委任契約)の債務不履行にはならず、Aに対して損害賠償責任を負う必要はない。
*民法644条

2 誤り。所有者は、盗人に対して所有権に基づく返還請求権を行使することができる。この返還請求権は所有権に基づくものであり、時効により消滅することはなく、「1年間」というような期間の制限はない。

3 正しい。本件パソコンを拾得した者は、たとえ平穏かつ公然及び善意かつ無過失であったとしても、「取引行為」によってパソコンを取得したのではないから、本件パソコンを即時取得することはない。したがって、所有者であるAは、本肢拾得者に対して、所有権に基づいて本件パソコンの返還請求をすることができる。

4 誤り。占有者が、盗品又は遺失物を、「競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人」から、善意で買い受けたときは、代価の弁償が必要であるが、本肢ではそのような事情は認められないから、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を無償で請求することができる。
*民法193条