下記の問題及び解説は、必ずしも現時点における法改正及びデータを反映したものではない場合があります。

管理業務主任者 過去問解説 平成23年 問1

【動画解説】法律 辻説法

【問 1】 マンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成12年法律第149号。以下「マンション管理適正化法」という。)第2条第1号に規定するものをいう。以下同じ。)の管理組合A(以下本問において「A」という。)の管理者B(以下本問において「B」という。)とマンション管理業者(マンション管理適正化法第2条第8号に規定する者をいう。以下同じ。)C(以下本問において「C」という。)との間で管理委託契約(以下本問において「本件契約」という。)が締結された場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 本件契約の締結に当たって契約書面が作成されたが、当該契約書面の押印につきBが実印を用いていない場合でも、本件契約の効力は妨げられない。

2 Bが、Cの代理人である場合には、Aは、本件契約が効力を生じないことを主張できる。

3 本件契約が第三者からのBに対する強迫に基づいて締結された場合、Aは、強迫を理由に本件契約を取り消すことができる。

4 本件契約がBが法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤に基づいて締結された場合には、BがCに対してその認識を表示していないときでも、Bは、法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要な部分に錯誤があることを理由に本件契約の取消しを主張することができる。

【解答及び解説】

【問 1】 正解 4

1 正しい。管理委託契約は、委任契約又は準委任契約であるとされる。そして、委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。したがって、書面の作成も必要ではなく、契約書面にBが実印を押していなくても契約は有効である。
*民法643条

2 正しい。管理組合の管理者は区分所有者の代理人である(区分所有法26条2項)。したがって、BがCの代理人にもなれば、双方代理となる。そして、同一の法律行為について、当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなされるので、Aは本件契約が効力を生じないことを主張できる。
*民法108条

3 正しい。意思表示の効力が強迫によって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決する。そして、第三者の強迫は、相手方の善意・悪意を問わず、取り消すことができる。そして、代理人が行った行為を取り消すことができる場合は、本人が取消権を有するので、Aは強迫を理由に契約を取り消すことができる。
*民法101条1項、96条2項反対解釈

4 誤り。本肢はいわゆる動機の錯誤であり、その動機が相手方に表示されていた場合にのみ錯誤による取消しを主張できる。本肢では、BがCに対してその動機を表示していないので、Bは、法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要な部分に錯誤があることを理由に本件契約の取消しを主張することができない。
*民法95条2項


【解法のポイント】この問題は、正確に正解を出すには、いろいろな条文を使うので、難しかったのではないかと思います。解説を参考に正確に理解して下さい。