善意、悪意、過失、重過失
【解説】
「善意」「悪意」という言葉は、説明の必要のない人もいるでしょうが、基本的な言葉なので確認しておいて下さい。
法律用語としての「善意」というのは、あることを知らない、という意味に使います。
逆に「悪意」というのは、あることを知っている、という意味です。
たとえば、AからBへ不動産の売買契約がなされたが、それはBがAを詐欺したために締結されたものであった場合、詐欺の事情を「知らない」CがBから不動産の転売を受けたときは、Cは「善意」ということになり、知っていれば「悪意」です。
このように法律用語で「善意」「悪意」という言葉を使うときは、単に知っているか、知らないかということであって、「善い」とか「悪い」とかいう意味合いはありません。
そして、法律用語として「善意」「悪意」というときは、一部の例外を除いて、ほとんどこの意味で使います。これは、「善意」「悪意」という言葉をそのように定義して使っているわけで、ここで「それはおかしい」と言ってみたところで、無意味です。素直にそういうふうに覚えましょう。
この善意・悪意に関して、「善意無過失」という言葉もよく出てきます。
善意というのは、あることを知らないことですが、知らない場合でも、知らないのも「やむを得ない」ということもあれば、「うっかりして」知らなかったという場合もあるでしょう。
この知らないのもやむを得ないというのを「善意無過失」、うっかりして(つまり過失で)知らないというのを「善意有過失」といいます。つまり、善意には善意無過失と善意有過失の二つがあります。
これに対して、悪意は知っているわけですから、過失・有過失に分けたりはしません。
また、過失でも、「重過失」というのも出てきます。宅建で勉強する範囲では、債権譲渡で出てきますが、重過失というのは、重大なる過失という意味で、「非常にうっかりして」というような意味です。
この重過失は、たとえ善意であっても、非常にうっかりしているわけですから、「悪意」(あるいは故意)と同視されることもあります(まだ勉強を始めたばかりの方は、分からないと思いますが、債権譲渡の譲渡禁止特約について、この「重過失」が出てくる場面では、この考え方でよく理解できると思います。)。