手付

【解説】

手付は、みなさんご存知のように「宅建」試験では非常に重要な言葉です。不動産取引においては、手付というのは避けて通れないので、本試験でも、民法で出題されるか、宅建業法で出題されるかは別として、必ず毎年出題されるものと考えて下さい。

この手付が一番典型的に登場するのは、不動産の売買契約の締結時に、売買代金の何割かを買主から売主に対して交付するという場合です。
この手付金は、売買契約が順調に最後まで進んだ場合は、売買代金の一部となりますので、買主は払った手付金が無駄になることはありません。

ただ、手付というのは、必ずしも売買契約に限定されるわけではなく、たとえば、請負契約などでも使われるようですが、宅建試験においては、売買契約を念頭において勉強されていればいいと思います。宅建業法の手付の規定は、宅地建物取引業者が「自ら売主」の場合で、売買契約を前提にしています。

それでは、この「手付」というのは、そもそも何のために交付されるのでしょうか。これにはいくつかの目的があります。

まず、証約手付といって、売買契約が締結されたことの証拠として交付される場合があります。そして、この証約手付は、当事者が手付として交付したものは、すべて最低限のこの証約手付の意味があるとされています。つまり、当事者が次に述べる解約手付や違約手付として手付を交付している場合でも、最低この証約手付としての意味も併せて持つということです。
当事者が、証約手付としての意味だけで金銭を交付するときは、通常は少額の金銭の場合が多いとされます。たとえば、2,000万円とか3,000万円の物件でも、5~10万円でもいいということです。

次に、違約手付というのもあります。これは、当事者が債務不履行をした場合に、違約罰として没収されるものです。つまり、買主に債務不履行があれば、手付は売主に没収され、売主に債務不履行があれば、売主は買主に手付の倍額を支払う必要があります。
なお、この違約手付には二通りあって、上記の手付の没収又は倍返しに加えて、別途損害賠償を請求できるものと、請求できないものとがあります。

三つ目は、解約手付です。これが最も重要で、解約手付を交付しておけば、契約の相手方が履行に着手するまでであれば、買主は手付を放棄して、売主は手付を倍返しして、契約を解除できるものです。
解約手付を交付すれば、いったん締結した売買契約でも、相手方の債務不履行の有無を問わず、契約から抜けることができるという意味を持つのが解約手付です。
当事者が手付を交付したときに、手付が上記のどの意味を持つのかは、当事者の意思、つまり契約の内容によって決まります。そして、当事者の意思がはっきりしない場合は、解約手付と推定するというのが判例です。

試験では、このうちの解約手付について出題が集中しているので、解約手付をしっかり理解するようにして下さい。

その他の宅建用語集に戻る