法令上の制限
【解説】
この「法令上の制限」という言葉も、宅建試験以外ではあまり聞きません。
前に「権利関係」の解説のときに書きましたが、宅建の試験範囲は、法律で決められています。宅地建物取引業法施行規則8条です。
(試験の内容)
第8条 前条の基準によって試験すべき事項は、おおむね次のとおりである。
一 土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること。
二 土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する法令に関すること。
三 土地及び建物についての法令上の制限に関すること。
四 宅地及び建物についての税に関する法令に関すること。
五 宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること。
六 宅地及び建物の価格の評定に関すること。
七 宅地建物取引業法及び同法の関係法令に関すること。
この第8条3号の「土地及び建物についての法令上の制限に関すること」というのが、いわゆる法令上の制限といわれるものです。
法令上の制限は、宅建の全50問のうち8問出題されます。
少ないように思うかもしれませんが、一応主要な科目の一つと考えられており、手を抜くことは許されない範囲です。
そして、法令上の制限の8問のうち
都市計画法(2問)
建築基準法(2問)
国土利用計画法(△)
土地区画整理法(1問)
農地法(1問)
宅地造成等規制法(△)
その他の法令上の制限(△)
このうち、(△)というマークが付いている法律は、過去にその法律で丸ごと1問出題されなかった年もある問題ですが、国土利用計画法と宅地造成等規制法は、毎年出題されることを前提に勉強しておいた方がいい法律です。要するに、圧倒的に丸ごと1問出題される可能性が高い法律です。
ということで、出題の状況をお伝えした上で、そもそも「法令上の制限」って、どういう意味?という疑問について説明する必要があるでしょう。
もともと、憲法には私有財産制が定められています(憲法29条)。したがって、みんな自己の所有する土地や建物については、自由に使用したり、処分したりすることができるはずです。自分の土地である以上、そこをどのように利用しようと、どのような建物を建てようと本人の自由です。
しかし、閑静な住宅街の中にドカンと工場を建てるというのは、明らかに周りの住環境を損ないます。また、建築費を安上がりにするために火災に弱い建物を建てると、一旦火災が起こると周りに延焼して多大な迷惑をかけます。
このように周りに迷惑をかけないようにすることを公共の福祉というような言い方をします。そして、不動産(土地・建物)は、このような制限が大きい財産だとされています。
つまり、不動産については、所有権を持っているといっても、全く自由に使用や処分ができるわけではなく、結構多くの「法令で制限」されています。そこで、このような不動産の使用や処分を制限するような法律を「法令上の制限」として宅建で勉強することになっているわけです。
たとえば、先ほどの例でいうと「閑静な住宅街の中にドカンと工場を建てる」のは都市計画法という法律で制限されています。また、「火災に弱い建物を建てる」というのは建築基準法で制限されています。
だから、都市計画法や建築基準法が法令上の制限の中で出題されるわけです。
それだけでなく、不動産の「処分」も自由にできない場合があります。「処分」という言葉は分かりにくい人もいるかと思いますが、典型的には売買などで売ってしまうような場合です。
この不動産の売買契約も「法令で制限」される場合があります。たとえば、大きな土地の売買であれば、国土利用計画法で届出が要求されたり、農地の売買であれば、農地法で許可が必要とされたりしていて、全く自由に売買できるわけではありません。
このような「法令上の制限」は、不動産の取引に携わる者にとっては必要になってきますので、宅建試験の範囲になっているわけです。宅建業法で勉強する重要事項の説明でも、この「法令上の制限」は重要事項の説明対象になっています。