不動産

【解説】

いまさら「不動産」の定義か、と思われるでしょうが、民法を理解するために重要な基本的な説明も出てきますので、お付き合い下さい。

不動産の定義というのは、民法に一応規定されています。
「土地及びその定着物は、不動産とする。」という民法86条1項です。

「定着物」というのは分かりにくい表現ですが、要するに典型的には建物のことです。この不動産の定義について宅建では深く突っ込まれたことはありませんので、不動産=土地+建物、という理解でいいでしょう。

そして、土地と建物は、「別々」の不動産であるという点は確認しておいて下さい。

たとえば、自己所有地の上に自宅を所有していて、銀行から借り入れのために自宅(土地と建物)に抵当権を設定する場合、感覚的に一つの抵当権を設定するように感じる人もいるかもしれませんが、たとえ所有者が同じであったとしても、土地と建物は別々の不動産なので、土地と建物の両方に別々の抵当権を設定していることになります(共同抵当)。

もう一つ、建物について注意してほしい点があります。土地と建物は別々の不動産ですが、建物は空中に浮いているわけではないので、建物を所有するためには、土地に関する利用権が必要だという点です。
したがって、建物だけの所有権を有していても、土地に関する何らかの利用権がなければ、それは不法占拠であって、土地の所有者から建物の明け渡しを迫られてしまいます。

「借地上の建物の譲渡は、土地の賃借権の譲渡又は賃借物の転貸を伴う」という宅建で必要な知識は、これで理解できると思います。
地主Aから、土地を賃借したBが、自己所有の建物を当該借地上に建てましたが、この建物をCに譲渡しようとしたとします。建物の所有権はBにあるので、BはCに「建物」の所有権は譲渡できます。しかし、Bは土地の賃借権を持っているので、建物を所有するための土地の利用権(賃借権)を有していますが、Cに建物だけ譲渡して、賃借権を譲渡又は転貸しなければ、Cは土地の利用権がないことになります。したがって、借地上の建物の譲渡は、必然的に借地権の譲渡又は転貸を伴うことになります。

これに対して、借地上の建物の「賃貸」は、借地権の譲渡・転貸を伴いません。先ほどの例で、借地上に建物を建てたBが、当該建物をCに賃貸するだけであれば、建物の所有権はBにとどまることになり、Bは土地に関して賃借権という利用権を有しているので法律上特に問題はありません。
したがって、借地上の建物の譲渡は、借地権の譲渡・転貸を伴うが、借地上の建物の賃貸は、借地権の譲渡・転貸を伴わないという知識は理解できると思います。

ということで、「不動産」の定義だけでなく、不動産について学習上押さえておかなればならない知識も含めて解説しました。

その他の宅建用語集に戻る