第三債務者

【解説】

第三債務者というのは、簡単に言えば、債務者の債務者です。

宅建試験で、この第三債務者という言葉が最も多く登場するのは、相殺の部分ではないでしょうか(民法511条)。
たとえば、AがBに対して金銭債権を有し、逆にBもAに対して債権を有している場合は、重なり合う金額の範囲内で相殺することができます。
ところが、相殺する前にAのBに対する債権をCが差し押さえたとします。つまり、AがCに対して、AB間の債権債務とは別口の債務を有していて、AがCに対する債務を弁済しなかったので、CがAのBに対する債権を差し押さえたわけです。この場合に、Bは相殺することができるか?というのが民法511条の規定です。

状況をまとめると、それぞれ
A→B債権
B→A債権
C→A債権
という3つの債権が出てきます。

この場合に、単純に債権者・債務者という言葉を使うと、誰のことを指しているのか分からなくなります。
Cは「債権者」であることははっきりしています。また、Bは「債務者」ですが、他方Aに対しても債権を有しています。
特にAは、Cに対しては債務者であり、Bに対しては債権者であるということで、単なる債権者、債務者という表現だけでは、それが誰を指しているのか分かりにくくなります。

そこで、本日の「第三債務者」という言葉が出てきます。
C=債権者、A=債務者、B=第三債務者(差押債権者Cから見て、債務者Aの債務者)と表現すれば、混乱が少なくなるわけです。

念のため、上記の相殺の条文(民法511条)は、差押えなど支払の差止めを受けた第三債務者(B)は、差押え後に取得したAに対する債権による相殺をもって差押債権者(C)に対抗することができない旨が規定されています。

また、宅建に出題されている別の例として、債権質の場合を取り上げましょう。
AがBに対して債権を有しています。したがって、A=債権者、B=債務者です。
また別口の話として、CがAに対して債権を有しています。C=債権者、A=債務者です。AはCに対する債務の担保としてBに対して有する債権に質権を設定しました。このように債権を質入れすることを債権質といいます。

この場合、AはBに対しては債権者ですが、Cに対しては債務者ということになります。そこで、質権者Cから見てAは債務者、Cは債務者Aの債務者で第三債務者と呼ぶことにしています。

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