宅地造成等規制法14条(監督処分)
【解説】
1.監督処分
宅地造成工事規制区域内において行われる宅地造成に関する工事については、許可が必要になるわけですが、この許可に関して、その規制を守らない者に対しては、本条で監督処分に処せられます。
その内容はちょっとややこしいので、まず個々の処分について説明した後、全体のまとめをしてみたいと思います。
2.許可取消処分(第1項)
この許可の取消を受けるのは、「造成主」になります。
もともと宅地造成工事の許可を受けるのは造成主ですから、その許可の取消の対象者は、造成主とならなければおかしい。
取消事由は、以下のものです。
① 偽りその他不正な手段により宅地造成に関する工事の許可又は変更の許可を受けた
② 許可に付した条件に違反した
3.工事施行停止等の命令(第2項)
この処分の対象は、「宅地造成工事規制区域内において行われている宅地造成に関する工事」になります。工事が対象になるので、工事中の処分ということがいえます。
この処分の内容は、「工事の施行の停止を命じ、又は相当の猶予期限を付けて、擁壁等の設置その他宅地造成に伴う災害の防止のため必要な措置をとることを命ずること」です。
処分の対象者は、「造成主、工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)、現場管理者」になります。
処分事由は、以下のものです。
①宅地造成に関する工事の許可又は変更の許可を受けていない
②これらの許可に付した条件に違反した
③宅地造成に関する工事の技術的基準に適合していない
4.宅地の使用禁止等の命令(第3項)
この処分の対象は、「宅地造成に関する工事が施行された宅地」と「工事完了の検査を受けず、若しくは工事完了の検査の結果工事が工事の技術的基準に適合していないと認められた宅地」ですから、工事が完了した後の処分ということになります。
処分の内容は、「宅地の使用を禁止し、若しくは制限し、又は相当の猶予期限を付けて、擁壁等の設置その他宅地造成に伴う災害の防止のため必要な措置をとることを命ずること」です。
処分の対象者は、「宅地の所有者、管理者若しくは占有者又は当該造成主」になります。
処分事由は、以下のものです。
① 宅地造成に関する工事の許可又は変更の許可を受けないで宅地造成に関する工事を施行
② 工事完了の検査を受けず、若しくは工事完了の検査の結果工事が工事の技術的基準に適合していない
この処分事由をよく見てもらえば分かりますが、「工事完了の検査を受けなかった」か「完了検査を受けた結果、技術的基準に適合していない」場合に宅地の使用禁止等の命令を受けますので、「検査を受け、検査済証が交付された」後にはこの処分を受けることはありません。検査済証というのは、検査を受けた工事に対して、その工事が技術的基準に適合している場合にのみ交付されるものだからです。
5.まとめ
以上、監督処分の3種類を個別に見てきましたが、それを見る際のポイントについて説明しましょう。
この3つの監督処分は、その処分がなされる時期に着目して整理すれば分かりやすいと思います。
上図を見て下さい。まず、許可取消については、特に時期の制限に関する文言はありませんので、時期を問わず常時なされる可能性があります。
これに対して、先ほどの説明で分かりますように、「工事施行停止等の命令」は工事中になされます。
また、「宅地の使用禁止等の命令」は工事完了後になされます。
このように時期に着目していると、監督処分を受ける者というのが非常に理解しやすくなります。一つずつ見ていきますと、許可取消は、許可を受けた者(つまり造成主)がその処分を受けるということで分かりやすい。
ちなみに、造成主というのは、すべての処分を受ける可能性があります。
次に、「工事施行停止等の命令」というのは、工事の施行を停止するわけですから、工事中に行わないと意味がないですし、その処分も対象も工事に携わっている者になります。つまり、造成主のほかに、「工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)」と「現場管理者」です。
最後の「宅地の使用禁止等の命令」は、工事施行後の話です。したがって、処分の対象者は、現在宅地を使用している者ということになります。つまり、造成主のほかに、「所有者」「管理者」「占有者」です。