重要事項の説明等

【解説】

1.重要事項の説明(第1項)

この重要事項の説明というのは、宅地建物取引士の事務(仕事)の中では最も重要なものになります。

宅地建物取引士の事務というのは、以下の3つです。

  1. 重要事項の説明
  2. 重要事項説明書への記名押印
  3. 契約成立後の書面への記名押印

この3つについては、もちろんそれぞれ詳細に説明していきますが、意外に少ないと感じる人が多いのではないかと思います。

この3つのうち1.と2.は重要事項の説明に関するものです。2.と3.は記名押印ですから、仕事としてはハンコを押すだけです。

もちろん、ハンコを押すからには責任が生じますので、内容をチェックするでしょうし、普通の不動産会社では宅地建物取引士の資格を持っている人に作成させます。しかし、宅地建物取引業法の規定として「事務」として規定しているのは、記名押印です。

ということは、最も重要なのはやはり「重要事項の説明」ということになります。重要事項の説明書に記名押印して、説明するということですね。

それでは、そもそもこの「重要事項の説明」とは何か、です。

簡単にいえば、物件の「重要」な「事項」(内容)について買主に事前に「説明」するということになるかと思います。不動産という商品の商品説明のことです。

不動産は、マイホームの購入というような場合には、ほとんどの人にとって一生で一番高価な買い物になりますし、マイホームでなくても非常に高額の商品ということになりますので、購入した後で「こんな物件だとは思わなかった!」ということになれば、大変なことになります。

しかも、不動産の取引というのは、権利関係や契約関係が複雑ですし、様々な法律の規制もあります。

したがって、宅地建物取引業者が、宅地建物の取引に関する専門的な知識をもつ宅地建物取引士をして、買主等に対して取引する物件や取引条件に関する重要な事項を説明させることにより、買主等が取引内容を十分理解したうえで契約を締結することができるようにする必要があります。

2.重要事項の説明の時期(第1項)

それではこの重要事項の説明は、いつ行うか、ということですが、これは「契約前」になります。

重要事項の説明というのは、購入者が買うか買わないか、借りるか借りないかの意思決定をする際の参考にするものです。したがって、契約をした後で「実は、あなたの買った物件は、こういうものですよ。」と言われても後の祭りです。

そして、一応「契約前」ですから、法律的には契約成立直前に説明してもよいことになります。

しかし、あくまで重要事項の説明を聞いた上で、その物件について十分に理解して、契約を締結するかどうかが判断できた方がよいので、取引物件がある程度特定した時期など、できる限り早い時期に説明した方が望ましいことになります。

3.重要事項の説明の義務者(第1項)

重要事項の説明は、「宅地建物取引業者」に義務づけられています。これは、勘違いしないで下さい。

重要事項の説明といえば宅地建物取引士。重要事項の説明の義務があるのは宅地建物取引士だ、というふうに考えると、これは間違い。

重要事項の説明というのは、「宅地建物取引業者」が、「宅地建物取引士を使って」説明するものです。宅建業法の条文でも、「宅地建物取引業者は、…(中略)… 宅地建物取引士をして、説明をさせなければならない。」と表現しています。

そして、宅地建物取引業者であれば、自ら売主の場合であれ、媒介業者として取引に関与する場合であれ、代理業者として取引に関与する場合であれ、重要事項の説明をする義務があります。

宅地建物取引業者でない一般の人は、たとえ売主であったとしても重要事項の説明の義務はありません。A(宅建業者ではない)所有の土地を、B(宅建業者)が媒介して、Cに売却しようとしています。この場合に、誰が誰に重要事項の説明をしないといけないか。Bのみです。Aは売主ですが、宅建業者ではありません。したがって、重要事項の説明をする必要はありません。宅建業者でもない普通の人に重要事項の説明をしろと言われてもできないですよね。

それでは、先ほどの事例でAも宅地建物取引業者であった場合はどうか。この場合、宅地建物取引業者Aは、自ら売主として取引に関与しています。他方、宅地建物取引業者Bは、媒介業者として取引に関与しています。

このように一つの取引に複数の宅地建物取引業者が関与している場合は、それぞれの宅地建物取引業者が、それぞれの立場から重要事項の説明をすることが義務付けられます。結論は、AもBも重要事項の説明の義務があるということです。

ただ、重要事項の説明というのは、物件の説明です。この物件の説明は、人が異なることによって、内容が異なることはないはずです。一つの同じ物件の説明ですから、Aが説明する物件内容と、Bが説明する物件内容が異なるのはおかしい。

したがって、AとBに重要事項の説明義務があるからといって、2度説明する必要はありません。AでもBでもかまわないんですが、たとえば、媒介業者のBの宅地建物取引士が代表して重要事項の説明をしてもかまいません。

ただ、Aにも重要事項の説明義務があるわけですから、Bの宅地建物取引士が重要事項説明書を作成して、記名押印します。そして、Aの宅地建物取引士も(その内容をチェックして)記名押印します。そして、Bの宅地建物取引士が代表して買主に対して実際の説明をするということも認められます。

次に説明しますが、重要事項の説明を行う宅地建物取引士というのは、必ずしもその宅地建物取引業者の従業員である必要はありません。宅地建物取引士の資格を持っている人なら誰でもかまいません。したがって、先ほどのようなことも認められます。

それでは、先ほどの事例で、Cも宅地建物取引業者であった場合はどうか。つまり、売主も買主も媒介業者も全部宅地建物取引業者である場合です。

ここは何が言いたいかというと、このような宅地建物取引業者相互間の取引の場合にも、重要事項の説明が必要かということです。これは必要です。

宅地建物取引業法というのは、一般消費者の保護だけでなく、不動産取引の適正という趣旨もあります。したがって、宅地建物取引業法の規定は、基本的に宅地建物取引業者相互間の取引にも適用があります。

4.重要事項の説明の説明者(第1項)

重要事項の説明者は、言うまでもなく宅地建物取引士です。重要事項の説明義務は、宅地建物取引業者にあっても、実際に説明するのは資格を有する宅地建物取引士でないといけません。

それでは、宅地建物取引士であれば誰でもいいのか?これが意外なことに、「誰でもいい」というのが正解です。

別に、その宅地建物取引業者の「専任」の宅地建物取引士でなければならないということはありません。

ちなみに、「専任」の宅地建物取引士というのは、実は宅地建物取引業法では、設置義務のところにしか出てきません。事務所には5人に1人は宅地建物取引士を置くという規定ですね。

「設置」義務のところにしか、専任の宅地建物取引士の話が出てこないということは、「専任」の宅地建物取引士でなければできない事務というのは、宅地建物取引業法上一つもないということを意味します。

これも不思議な感じがするんですが、専任の宅地建物取引士というのは、事務所等に置いておけばそれでいいということです。つまり、「宅地建物取引士」の事務というのは規定されていますが、「専任の宅地建物取引士」の事務という規定はありません。

ということは、ここの重要事項の説明に限らず、「専任の宅地建物取引士が、~しなければならない」という文章はすべて「誤り」になります。これは、注意して下さい。

また、重要事項の説明をする宅地建物取引士は、その宅地建物取引業者の従業員である必要すらありません。

アルバイトで来ている宅地建物取引士の資格を持った者が重要事項の説明をしても、別に宅建業法違反ではありません。アルバイトであろうが、パートであろうが宅地建物取引士であればかまいません。

それでは、宅地建物取引業者が宅地建物取引士以外の者に重要事項の説明をさせた場合はどうなるかということですが、これは宅地建物取引業者が重要事項の説明義務を果たしていないことになりますので、宅地建物取引業者は依然として買主等に対して重要事項の説明義務を負っているということになります。

宅地建物取引士に重要事項の説明をさせない状態で契約を締結しますと、宅地建物取引業法違反になります。

5.重要事項の説明の相手方(第1項)

次は、重要事項の説明の相手方です。これは、最初に軽く何気なく説明の中で書いていますが、基本的には買主です。

物件の説明を売主にしても意味がありません。売主というのは、現在の所有者です。物件の所有者に説明をしても意味がありません。

ただ、宅地建物取引業は売買、交換、貸借とあります。「売買」の場合は、買主です。正確には「買主になろうとする者」です。契約前に説明しますので、そうなります。

「貸借」の場合は、「借主になろうとする者」です。

「交換」の場合は、気を付けて下さい。たとえば、A所有の甲不動産と、B所有の乙不動産を交換するとします。このときは、Aは乙不動産を取得し、Bは甲不動産を取得します。したがって、Aには乙不動産について、Bには甲不動産について重要事項の説明をしなければいけません。結果として、交換の場合は両当事者に重要事項の説明をすることになります。

6.重要事項の説明方法

次に、重要事項の説明方法です。これは、「一定の事項について、これらの事項を記載した書面(場合によっては図面)を交付して説明をさせなければならない。」ということになります。

つまり、書面の交付→説明という手順になります。書面を示しながら説明するということです。

書面を交付して説明するのは、口頭による説明だけでは理解しにくいからです。

この書面の交付→説明という手順は逆にすれば、宅建業法違反になります。試験などで「重要事項の説明をして、その後書面を郵送した」と出たら、業法違反です。

7 ITを活用した重要事項の説明

以上の重要事項の説明に関しては、対面による説明を前提としています。しかし、現在では、IT(テレビ会議やテレビ電話、インターネット等)を活用した重要事項の説明(以下、「IT重説」といいます。)も認められています。

これは、宅地建物取引業法で直接明文ができたわけではありません。宅地建物取引業法では単に「説明」が必要とされているだけです。ただ、「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(以下、「解釈・運用」といいます。)という「不動産業課長通知」により認められたものです。なお、この「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」というのは、宅建試験などでは、従来から試験に出題されています。

まず、このIT重説について気を付けなければならないのは、「宅地又は建物の『貸借』の代理又は媒介」のときだけ認められており、売買・交換のときにIT重説を行うことはできません。売買・交換のときは、従来通り「対面」での重要事項の説明が必要となります。なお、現在個人を含まない「法人間」において、IT重説が可能か実験を行っているようですが、現在のところ、法人間でも売買・交換の場合は、IT重説はできません。

次に、このIT重説が認められるための要件を見ていきます。解釈・運用に以下の4つの要件が定められています。

① 双方向でやりとりできるIT環境において実施

宅地建物取引士及び重要事項の説明を受けようとする者が、図面等の書類及び説明の内容について十分に理解できる程度に映像を視認でき、かつ、双方が発する音声を十分に聞き取ることができるとともに、双方向でやりとりできる環境において実施していること。

② 重要事項説明書等の事前送付

宅地建物取引士により記名押印された重要事項説明書及び添付書類を、重要事項の説明を受けようとする者にあらかじめ送付していること。

③ 説明の開始前に相手方の重要事項説明書等の準備とIT環境の確認

重要事項の説明を受けようとする者が、重要事項説明書及び添付書類を確認しながら説明を受けることができる状態にあること並びに映像及び音声の状況について、宅地建物取引士が重要事項の説明を開始する前に確認していること。

④ 取引士証を相手方が視認できたことの画面上での確認

宅地建物取引士が、宅地建物取引士証を提示し、重要事項の説明を受けようとする者が、当該宅地建物取引士証を画面上で視認できたことを確認していること。

まず、基本ですが、対面の重要事項の説明において、重要事項の説明書を「交付」して「説明」する、という流れになります。これはIT重説においても同様です。ただ、「説明」の部分がテレビ電話等によっても可能だということです。

細かく説明すると、まず重要事項の説明書の交付は、IT重説においても省略できません(上記要件②)。しかも、対面の重要事項の説明と同様、「紙」の重要事項の説明書でなければいけません。事前に相手方に送付しておく必要があるわけです。PDFファイル等による電子メール等の電磁的方法による交付は認められていません。そして、この重要事項の説明書には、宅地建物取引士の記名押印が必要である点も対面の重要事項の説明と同じです。

そして、その重要事項の説明書を見ながら、テレビ電話等で実際の説明を行うわけですが、重要事項の説明を行う前には、宅地建物取引士は、宅地建物取引士証を提示しなければいけません(上記要件④)。これも対面の重要事項の説明と同様です。このときに、相手方の買主等が宅地建物取引士証を画面上で確認できたことを伝えないといけません。つまり、IT重説においても、一方的に宅地建物取引士が説明するだけではなく、対面の重要事項の説明と同様に、相手方もそれなりに自分の意思を表示する場面が出てくるわけです。他に重要事項の説明の内容に質問をしたり、理解できたことを表示したりする必要も出てきます。そこで、IT重説を行うには、双方向でやりとりできるIT環境が要求されています(上記要件①)。そして、重要事項の説明の開始前に相手方の重要事項説明書等の準備とIT環境の確認が必要となります(上記要件③)

このようなIT重説ですが、相手方からIT重説を求められたからといって、宅地建物取引業者は必ずしもそれに応じなければならないわけではありません。上記の要件を満たす環境がないときは、IT重説をすることができないからです。

また、IT重説をするには、貸主及び借主の同意が必要となります。このうち貸主からの同意については、当該取引物件の重要事項説明が発生するたびに取得する方法もありますが、事前に包括的な同意を取得することも可能です。

8.説明事項の総論

それでは、重要事項としてどのようなことを説明しなければいけないのでしょうか。

後に出てくる第37条に基づき交付すべき書面(いわゆる37条書面)というのと類似している事項がありますので、注意する必要があります。

試験等では、この相違について非常に間違いやすいことになります。

抽象的に言えば、重要事項説明書は買主等が契約を締結するかどうかの判断材料とするのに必要な事項が定められているのに対し、37条書面は契約当事者の合意内容を明確にしておき後日の証拠としておくという観点から定められています。

そして、説明すべき重要事項として、「取引物件」に関する事項と「取引条件」に関する事項に大きく分けることができます。

なお、この重要事項の説明事項は、宅地建物取引業者の最小限の義務として規定されているものですから、これらの事項を過失によって説明しなかった場合にも宅地建物取引業者は免責されません。

また、本条(及び施行規則)に規定されている事項以外にもなお重要な事項はありますので、それらについての説明を怠れば、宅地建物取引業法(47条1号)違反に問われることはあります。

それでは、以下で具体的に説明事項について解説していきます。

9.説明事項

(1) 登記された権利(第1号)

これは、その物件について登記された内容を説明しなさい、ということです。

これは購入者としては、自分で調べるべきことなんでしょうが、非常に重要な項目ですので、重要事項の説明の対象になっています。

具体的には、その物件の名義人、抵当権などが設定されていれば、その内容等を説明します。

「登記名義人」というのは、登記記録の権利部に所有者として登記された者のことですが、それだけでなく「登記簿の表題部に記録された所有者の氏名」というのも入っているということは、不動産登記法で勉強しますが、登記記録の表題部は登記義務がありますが、権利部というのは登記義務がないので、表題部はあるけれども、権利部のない登記というのもあります。

そのような場合でも、表題部に記載されている所有者の氏名は説明する必要があるということです。

また、抵当権が設定されている場合は、引き渡しまでに抹消する予定であったとしても説明しないといけません。抹消予定かもしれませんが、現在登記されている以上、現在の登記の状態を説明しないといけないからです。

さらに、仮登記や買戻権の特約の登記も説明しなければいけません。

なお、登記記録に表示されない借地借家法10条1項(借地権の対抗力)、同31条(建物賃貸借の対抗力)など特別法上対抗力が認められている権利については、登記がされていなくても、実際に登記がなされているのと同じ効果が与えられているので、このような権利については、取引の相手方に対して重要な事項として説明しなければいけません。

注意しなければいけないのは、不動産登記記録の権利関係は変動するので、最新の権利関係を調査することを怠った結果、売買契約の締結直前になされた取引物件に対する不動産競売による差押登記、債権者からの仮処分、仮差押、代物弁済や売買の予約を原因とする仮登記等の登記を見落し、重要事項説明義務違反に問われている紛争事例が少なからずあるようなので、最新の登記記録の確認には気を付ける必要があります。

なお、売買契約による所有権移転登記の申請時期は37条書面には記載すべき事項ですが、重要事項説明書の説明事項ではないので、当該売買契約についての移転登記の申請時期については記載する必要はありません。

(2) 法令上の制限(第2号)

これは、簡単に言えば、われわれがいわゆる「法令上の制限」といわれている内容を説明しなさい、という規定です。

宅地や建物については、その使用や収益又は処分を制限する公法上の制限が多いので、買主にあらかじめその説明をしておきなさいという趣旨です。

法令上の制限というのは、具体的には都市計画法や建築基準法が代表です。

ただ、この説明すべき法令上の制限というのは、宅地か建物か、売買・交換か貸借か、などと区別して非常に詳細に規定されています(宅地建物取引業法施行令3条)。一度、条文をそのまま引用してみて、「これです」と紹介すれば納得していただけますが、はっきりいって多すぎて覚えきれません。

そこで、現実的で一番シンプルな覚え方をいいましょう。「基本的に、法令上の制限の内容は重要事項として説明する必要がある。特に売買・交換では必要だ。しかし、貸借の場合は重要事項として説明する内容は非常に少ない。」この程度でいいと思います。

ちなみに、こういう場合はどうでしょうか。「建物の貸借の場合に、建築基準法53条の建ぺい率を重要事項として説明する必要がある」

これは、不要です。貸借の場合は、法令上の制限で説明が必要なものというのは、非常に少ない。この建ぺい率の例で考えてもらえば分かりますが、建ぺい率というのは、敷地面積いっぱいに建物を建てることを禁止している規定です。これは、建物を建築したり、再築したりする人には関係のある話ですが、すでに建っている建物を借りる人にとっては関係ありません。したがって、説明不要です。

なお、業法施行令で定められているものは、特定の地域、地区、区域等が公示・公告等によって公に明らかにされ、あるいは外見上明らかである等によって、業者がその宅地や建物に制限が加わっていることを、業者としての注意を払えば容易に知りうる事項に限られており、特殊の業務を行う場合、または特殊の用途に供する建物の建築を行う場合などに適用されるような特殊な制限は含まれていません。

参考までにいくつかの判例を挙げておきましょう。

【判例】開発許可手続について(大阪高判昭和58年7月19日)

宅建業法施行令3条1項1号には、都市計画法29条1項及び2項は掲げられているが、同法36条1項(工事完了検査済証の交付)の規定は掲げられていない。大阪高裁は、買主が土地を購入し家を建てる計画であることを仲介業者が知悉していた事案において、仲介業者は、重要事項説明書で開発許可を取得すること(都市計画法29条]を説明しただけでは足りず、本件土地に家を建築するには都市計画法に基づき開発行為について開発許可を受けたうえ、開発許可を受けた者が開発行為に関する工事を完了し検査済証の交付を受けることが必要(以下「本件建築規制」という。)であるが、…このような建築規制を受ける土地であることを宅地建物取引士をして第一審原告(買主)に説明しなかったものであることは明らかである。…宅地建物取引士をしてこれらの重要な事項の説明義務を尽くさなかったことは、明らかに宅地建物取引業者に対し重要事項の説明等の義務を課した宅地建物取引業法35条1項に違反するものである。」とする。都市計画法29条1項に該当する内容(開発行為の制限)だけでなく同法36条1項に該当する内容(開発許可に従った開発工事を完了させ検査済証の交付を受けるという開発許可制度の一連の手続)についてまで説明すべき義務がある。

【判例】建築確認(建築基準法6条)について(大阪高判昭和50年7月15日)

宅建業法施行令3条1項2号には建築基準法6条(建築確認)は掲げられていない。大阪高裁は、宅建業法違反等被告事件において、買主が既存建物を買い受ける場合、建築確認を受けた建物かどうかは、購入者の利益に関する重要な事項であることが明らかである。…宅建業法35条各号、施行令3条は、…業者として契約締結までに説明すべき最少限度の事項を列挙したものであることは、同条1項に「…少なくとも次の各号に掲げる事項について説明しなければならない」とあることからも明らかである。

(3) 私道に関する負担に関する事項(第3号)

これは非常に重要です。

私道負担というのは、個人の私有地なんですが、道路として提供しないといけない土地です。

これは土地を購入した人には説明してあげないといけません。買った土地が100平方メートルあっても、20平方メートルに私道負担があれば、その20平方メートルには建物を建てられませんし、私道の変更廃止は制限されていますし、建ぺい率も私道部分を除いて計算されるので、建築面積が少なくなってしまいます。これは買う前に教えておいて欲しい事項です。

ただ、注意して欲しいのが、建物の貸借「以外」のときは、私道負担の説明がいるという点です。逆に言うと、「建物の貸借」のときには、私道負担の説明は不要です。

建物の貸借というのは、すでに建っている建物を借りる場合です。私道負担というのは、建物を建築したり、再築したりするときには、私道負担部分には建物を建てられないということであって、すでに建っている建物を借りる人には関係のない話です。したがって、建物の貸借の場合には、私道負担の説明は不要だ、ということになります。

念のために、「土地」の貸借の場合には、私道負担に関する事項の説明をする必要があります。土地を借りた上で、建物を建築したり、再築したりする場合があるので、まさに「建築」に係る私道負担の説明が必要だからです。

この「私道」には、建基法42条の道路に該当する私道はもとより、これに該当しない、例えば通行地役権の目的となっているような私道をも含むものとされています。

また、「負担」には,私道について単独の所有権や共有持分はもたず,それを利用するための負担金を支払っているような場合も含みます。

つまり、自分の持っている土地が私道負担を負っているという場合ではなく、自分の土地は一切私道負担を負っていないけれども、他人の私道を通行するために金銭を支払っているような場合も、私道に関する「負担」になるわけです。

これら私道に関する負担は、現在の私道負担だけに限らず、将来生じることになっている私道に関する負担に関する事項も含みます。

例えば、売買等の対象になっている土地に建物を建築するために、買主等が建基法42条にいう道路等を造る必要がある場合などです。

以上の説明から分かりますように、この「私道に関する負担に関する事項」というのは、具体的には、私道負担の有無、私道面積、その位置等になります。

次に、私道負担がない場合でも、私道負担が「ない」旨の説明が必要だという点も確認して下さい。こういう場合でも、私道負担が「ない」旨の説明が必要です。

ちなみに、重要事項の説明は、基本的に「ない場合は、ない旨の説明をする」というのが基本です。例外もありますが、そのときはその旨の指摘をしますので、皆さんは、「ない場合は、ない旨の説明をする」のが原則だ、ととりあえず覚えておいて下さい。

(4) 飲用水、電気及びガスの施設の整備の状況(第4号)

これは常識的に理解できるのではないですか。電気・水道・ガスというのは、生活を営むために必要不可欠な施設です。これが整備されているかどうかを説明するというのは、当たり前の話です。

ただ、後半の「これらの施設が整備されていない場合においては、その整備の見通し及びその整備についての特別の負担に関する事項」という部分は注意して下さい。整備されていない場合は、「見通し」と「特別の負担」を説明するということです。

「特別の負担」というのは、水道などでも、それを引いてくるために費用がかかったりする場合があります。そのことです。

また、設置の有無だけでなく、設備の状況についても説明する必要があります。たとえば、排水のための施設の整備の状況について、汲み上げポンプ等が設置されているときは重要事項説明書に記載する必要があります。

(5) 未完成物件の場合(第5号)

これは未完成物件のときの説明事項です。

未完成物件のときは、「完了時」の形状、構造を説明するというのがポイントです。物件を取得する方は、工事中の状態を説明してもらっても仕方がないので、完成したらどうなるのかが知りたいわけです。したがって、「完了時」というのが重要。

このようにして、未完成物件の取引では、すでに完成した物件の取引と違って、取引の対象となるべき物ができあがっていないので、購入者等が眼で見て物件を確認することができません。そこで購入者等が完成物件の取引と同じ状態で安心して取引できるようにしようとしているわけです。

また、未完成物件について、重要事項説明書において、「工事が完了した後に建物の形状・構造について説明する」旨を説明した場合、つまり完成するまで説明しないというのは宅地建物取引業法違反です。

そして、最後に「その他国土交通省令で定める事項」というのがあります。

この「その他国土交通省令で定める事項」というのは、「宅地の場合にあっては宅地の造成の工事の完了時における当該宅地に接する道路の構造及び幅員、建物の場合にあっては建築の工事の完了時における当該建物の主要構造部、内装及び外装の構造又は仕上げ並びに設備の設置及び構造」です。「宅地」の場合と「建物」の場合が規定されていますので、別々に見ていきましょう。

まず、「宅地」の場合は、「宅地に接する道路の構造及び幅員」です。この「道路」というのは、建築においては非常に重要な要素です。法令上の制限の建築基準法でも勉強しますが、道路に関する規制というのは、いろいろありますし、試験にも出ます。たとえば、容積率などは前面道路の幅員からも制限を受けます。その意味で、この「道路の構造及び幅員」の説明が必要です。

次は、「建物」の場合、「主要構造部、内装及び外装の構造又は仕上げ並びに設備の設置及び構造」です。ここは、外装だけでなく内装の構造も説明が必要だという点を覚えておいて下さい。

最後に、この第5号に直接規定されているわけではありませんが、第35条1項の本文に「第5号において図面を必要とするときは、図面を交付して説明をさせなければならない。」という規定もありますので、特に未完成物件においては、図面の交付が必要な場合があります。

(6) 区分所有建物の場合(第6号)

この35条1項6号は、「分譲マンションの場合の重要事項の説明」と考えて下さい。区分所有建物(分譲マンション)の場合には、重要事項として何を説明すべきかということです。

一つずつ説明していく前に、注意点を言います。今から、マンションの場合の重要事項を説明していきますが、これらはマンションに特有のものを列挙しているという点です。

その他の説明すべき重要事項でも「建物」に関する部分は、当然マンションでも説明しないといけません。

この一般的な建物に関する説明すべき重要事項に加えて、マンションでは以下の事項をプラスして説明しないといけないということです。

それでは、マンションの場合の重要事項について個別に見ていきますが、これらの内容は宅地建物取引業法施行規則第16条の2に規定されています。以下のタイトルの後のカッコ書きは、この施行規則第16条の2の号数です。

とりあえず、貸借以外の説明事項を列挙していきます。貸借に関する事項は、最後にまとめて説明しましょう。

① 敷地利用権(規則1号)

これは区分所有法で勉強する敷地利用権のことです。

「建物の敷地に関する権利の種類」というのは具体的には、所有権、賃借権(定期借地権等)、地上権などのことです。

また、「権利の内容」というのは、具体的には、所有権の場合は対象面積を説明すれば足ります。

地上権、賃借権等の場合は、対象面積、存続期間、区分所有者の負担する地代・賃料等の額を説明しなければなりません。

② 共用部分に関する規約の定め(第2号)

この「共用部分に関する規約の定め」というのは、共用部分に関する持分の定めや規約共用部分に関する定めのことを指しています。

共用部分の持分というのは、基本的に専有部分の床面積の割合によって定まりますが、「規約で別段の定め」をすることができます。

このような定めがあれば説明する必要があります。

共用部分に関する区分所有者の持分というのは、転売価格にも影響しますが、それが不分明であるため、取引後において従来からトラブルが多発していたようです。

また、規約共用部分があれば、これも説明する必要があります。たとえば、101号室を集会室にするというような規約の定めがあれば、その規約の内容を説明しなさいということです。

本事項は、まず「その案を含む」というカッコ書きをしっかり覚えて下さい。マンションというのは、新築で分譲するときには、規約は「案」という形でしかない場合があります。そのような場合を考慮してこの規定があります。

次に、規約の定めが「あるとき」は、その内容を説明することになっています。ということは、規約の定めがないときは、何も説明する必要がありません。

前に、重要事項の説明というのは、「ない」ときは、「ないと説明」しなければならないという話をしたと思います。ところが、ここは違います。「ない」ときは、何も説明しなくていいのです。区分所有建物の重要事項の説明では、このパターンが多いので注意して下さい。

③ 専有部分の利用の制限(第3号)

これは、規約に「専有部分の用途その他の利用の制限」があるときは、それを説明するという話です。

たとえば、「専有部分の用途」の定めというのは、「このマンションは居住専用のマンションである」というような規約の定めがその例です。「専有部分の利用の制限」の具体例は、ペットの飼育禁止というような定めのことです。これが重要事項として説明が必要だというのは、理解できると思います。

そして、ここの注意点は、先ほどと同じです。まず、規約の「案」も含むという点と、「定めがあるとき」だけ、その内容を説明すればよく、定めがなければ何も説明する必要がないという点です。

また後でまとめて説明しますが、この点は区分所有建物の貸借の場合にも説明する必要があります。

④ 専用使用権(第4号)

「一棟の建物又はその敷地の一部を特定の者にのみ使用を許す旨の規約」というのは、専用使用権と言われますが、具体例としては、駐車場、専用庭、バルコニーなどがその例です。

マンションの1階部分であろうが、敷地内であろうが、それらの場所は、本来は共用部分で、みんなで使う部分です。しかし、駐車場にすれば、その部分のみは特定の者が使用することになります。そのような定めが規約にある場合は、それを説明するということです。

このような専用使用権が設定されていると、その部分の使用が妨げられるばかりではなく、転売価格等にも影響を及ぼすからです。

この専用使用権について、規約が定められていることを説明するだけで、その内容を説明しないときには、宅地建物取引業法に違反します。

ここも先ほどと同様、規約の「案」も含むという点と、「定めがあるとき」だけ、その内容を説明すればよく、定めがなければ何も説明する必要がないという点を確認して下さい。

なお、この専用使用権に関する規約の「内容」は説明しなければいけませんが、専用使用権を有する「特定の者」の住所や氏名まで説明する必要はありません。これは、先ほどの具体例が分かっていれば、そのようなことまで説明する必要はないということは理解できるでしょう。普通、駐車場のような場合、月々の賃料やどのように使用者を決めているかなどは説明する必要はあるでしょうが、現在の駐車場の使用者までは説明しないでしょう。

この専用使用権については、「規約」だけでなく、カッコ書きで「これに類するものを含む。」とされています。

これは、専用使用権は、規約だけでなく「集会の決議」によっても認められます。したがって、具体例としては「集会の決議」の内容を説明することになります。

⑤ 修繕積立金や管理費を特定の者にのみ減免する旨の規定(第5号)

この「修繕積立金や管理費を特定の者にのみ減免する旨の規定」というのは、具体的にどのような場合かイメージしにくいと思いますが、たとえば、マンションの分譲業者がその例になります。

新築マンションを分譲する場合、マンションが完売すれば、そのマンションはすべて住民のものになるので問題はありません。ところが、売れ残る場合があります。この売れ残りの部屋というのは、当然マンションの分譲業者の所有です。つまり、区分所有者の中にマンションの分譲業者が含まれます。この分譲業者も、区分所有者としてその義務を果たさないといけないので、本来管理費も修繕積立金も支払わないといけないはずです。

しかし、分譲業者は、これを嫌います。そこで、規約で売れ残りのマンションの分については、管理費や修繕積立金の支払を減免する旨の規定を設けることがあります。そのような場合のことです。

このような規定があると、分譲業者を除いた他の住民で管理費や修繕積立金を負担しなければいけないので、普通の住民の負担が重くなります。これを事前に重要事項として説明しておきなさい、ということです。

この規定のポイントも今までと同じ。規約の「案」も含むという点と、「定めがあるとき」だけ、その内容を説明すればよく、定めがなければ何も説明する必要がないという点です。

⑥ 修繕積立金等(第6号)

これはいわゆる修繕積立金といわれているものです。

マンションというのは、時間が経てば老朽化し始めますので、たとえば外壁の修理を一定の時間が経てば実施します。このときには、修理の費用の負担がまとめて住民にのしかかってきます。それは困るので、日頃から少しずつ修繕積立金というお金をプールしていきます。これは通常のマンションの管理費用とは別に発生します。

このような修繕積立金がしっかり積み立てられているマンションは、財産価値も高いので、重要事項の説明対象とされているわけです。

そして、この修繕積立金はマンションに住む上でのコストですので、マンションを買う人にあらかじめ教えておいてあげないといけません。

ここのポイントも先ほどと同じ。規約の「案」も含むという点と、「定めがあるとき」だけ、その内容を説明すればよく、定めがなければ何も説明する必要がないという点です。

さらに、「既に積み立てられている額」も説明します。マンションによっては、将来のことを考えてこういう修繕積立金をきっちりと積み立てているマンションもあれば、お金のかかる問題は先送りにして、あまり積み立てていないマンションもあります。

あまり積み立てていないマンションの場合は、実際に修繕を行うときに、一気に住民に負担がかかってきます。そういうことも説明しなさいということですね。

また、この修繕積立金等についての滞納があるときはその額も告げないといけません。その理由は、区分所有法でも勉強しますが、この修繕積立金の請求権という債権は、特定承継人に対しても請求することができます。つまり、マンションの買主が負担しないといけないからです。

⑦ 通常の管理費(第7号)

これは非常に分かりやすいと思います。「通常の管理費用」というのは、いわゆる管理費です。

マンションに住んでいる以上、管理費というものを支払わないといけません。そのお金で、共用部分の清掃などをするわけですよね。

このような管理費は、区分所有者が月々負担する経常的経費であり、この管理費がいくらであるからはマンションを購入しようとする者にとっては重大な利害関係がありますので、重要事項の説明の対象となっているわけです。

そして、この管理費も第6号の修繕積立金と同様、滞納がある場合には新たな所有者が負担しなければならないので、当該区分所有建物についての滞納があるときは,その額を説明しなければいけませんので、宅地建物取引業者としては滞納額の有無・金額を調査する必要があります。

(7) 建物状況調査、建物の建築及び維持保全の状況に関する書類に関する事項(第6号の2)

建物状況調査等については、別ページに解説があります。 →建物状況調査

(8) 代金、交換差金及び借賃以外に授受される金銭(第7号)

ここで注意して欲しいのは、代金、交換差金、借賃「以外」に授受される金銭を重要事項として説明しなさい、ということです。

「代金、交換差金及び借賃以外に授受される金銭」の具体例ですが、売買の場合ですと手付金、賃貸借なら手付金、保証金、敷金、権利金、礼金などです。

賃貸借の場合の権利金、礼金、敷金、保証金などについては、その違いについて難しい問題があります。したがって、これらの金銭がどのような目的で授受されるのか説明する必要があるわけです。

これらの金銭について、どこまで説明しなければならないのか、逆に言うとどのような金銭について説明しなかったら宅地建物取引業法違反になるのかは難しい点がありますが、上記以外の例としては、売買の場合は、固定資産税等精算金(「実費」「日割清算」といった記載だけではなく、額が確定していない場合は、例えば「概算」等として目安となる具体的な額を記載するのが望ましい)、所有権移転登記費用など買主が負担すべき費用、貸借の場合は、共益費はもちろん、入居時に鍵交換代が借主の負担とされているなどで借主が負担することになる金銭などが考えられます。

また、代金等以外の金銭の「額」と「授受の目的」を説明します。金額と、何のためのお金なのかということです。少し、細かいですが「授受の時期」については説明の対象になっていません。この代金等以外の金銭の「授受の時期」は後で勉強する契約成立後の書面(37条書面)の記載事項になっています。

ところで、非常に不思議なことなんですが、実は重要事項の説明の中には、「代金、交換差金、借賃」そのものは入っていません。

代金等「以外」を説明しないといけないことになっています。つまり、代金等は重要事項として説明しなくても、宅地建物取引業法違反にならないんですね。ある意味では、買主にとって代金等というのは最重要関心事項です。それが説明不要というのは、変な感じですが、おそらく代金等をわざわざ重要事項として説明しなくても、それを聞かない人はいないということだろうと思います。だいたい不動産の広告などを見ても、必ず代金は記載されています。そして、問い合わせる人も、代金については、問い合わせるというのか、最初の交渉の材料になっているはずなので、これをいちいち重要事項の説明の対象にする必要はないということだろうと思います。

ここで、話のまとまりとして、非常に大切なことであるにもかかわらず、重要事項の説明の対象になっていないものをまとめておきましょう。一つは、今説明した代金、交換差金、借賃の額です。

次は、「引渡しの時期」です。引渡しの時期というのは、住宅の場合ですと、いつから住めるのかということで、非常に重要な事項です。しかし、重要事項の説明のどこを見ても、それは出てきません。これが重要事項の説明の対象から外されているのは、重要事項の説明というのは、契約前に行います。契約前の段階では、引渡しの時期はまだはっきりしないことも多いという理由からです。

同じく、「移転登記の申請時期」というのも、重要事項の説明の対象ではありません。これも、理由は同じで、重要事項の説明の段階では、まだその時期がはっきりしないことが多いということで、説明対象から外されています。

以上、「代金、交換差金、借賃」「引渡しの時期」「移転登記の申請時期」の3つは、重要事項の説明対象ではないということをまとめて覚えておいて下さい。というのは、理由があります。この3つをセットで覚えておくと、次の項目である契約成立後の書面を勉強する際に非常に役に立つからです。どのように役立つかは、その契約成立後の書面のときに説明します。

(9) 契約の解除に関する事項(第8号)

解除というのは、契約を白紙撤回することで、契約の存否にかかわる重要なことです。

そこで、このような解除の手続(ex. 無催告解除の特約があるのか)や、その効果について説明しないといけないという規定です。

ここでいう解除には通常の売買契約のほか、賃貸借のような継続的契約関係における将来に向かってのみ解除の効力が生じる解約告知も含まれます。

また、解除のために新たな契約をする解除契約、一定の事由発生を契約の失効に結びつける失権約款も含まれます。

とくに割賦販売契約については、42条(宅地又は建物の割賦販売の契約の解除等の制限)によって契約の解除についての制限が課せられているので注意が必要です。

(10) 損害賠償額の予定又は違約金に関する事項(第9号)

売買契約においては、この損害賠償額の予定や違約金について定めがなされることが意外に多いです。そこで、これらの事項を重要事項として説明するようにしたわけです。

民法は違約金を損害賠償額の予定と推定していますが(民法420条3項)、違約金には、違約罰という場合もあり、この場合には別途損害賠償の請求ができます。

つまり、違約金の金額の損失で済む場合もあれば、プラスして損害賠償の請求に応じなければならない場合もあります。

そこで、これらをはっきりさせようというわけです。

次に、この損害賠償額の予定や違約金については、定めがなされない場合もありますが、定めがない場合は、「定めがない」旨の説明をしないといけません。

これは、通常の重要事項の説明の場合と同じで、前に説明したように「ないときは、ない旨の説明」が必要だということです。

(11) 手付金等の保全措置の概要(第10号)

この手付金等の保全措置については、別に規定がありますので、そのときに詳述しますが、宅地建物取引業者から不動産を購入した買主は、売主である宅地建物取引業者が倒産した場合などに、売主に支払った手付金等について保全措置が講じられていると、確実に手付金などが戻って来ます。

このような保全措置が取られますと、買主は手付金等を支払う前に、銀行等の保証書、保険証券等を受け取ることができますが、これらを確実に受け取るように注意を喚起しようとしているわけです。

ちなみに、この手付金等の保全措置については、宅地建物取引業法37条の規定に基づき交付する書面の記載事項とはなっていません。

(12) 支払金又は預り金の保全措置を講ずるかどうか及びその措置を講ずる場合の措置の概要(第11号)

今度は、「手付金等」ではなく、「支払金又は預り金」の保全措置の話です。

手付金等の保全措置は、よく宅建で勉強しますが、支払金又は預り金の保全措置というのは、この重要事項の説明でちょっと出てくるくらいなので、分かりにくいと思います。

この「支払金又は預り金」とは、「代金、交換差金、借賃、権利金、敷金その他いかなる名義をもって授受されるかを問わず、宅地建物取引業者が受領する金銭」(施行規則16条の3)を指します。名目は何であれ、お金を受け取るときは、「保全措置を講ずるかどうか及びその措置を講ずる場合の措置の概要」を重要事項として説明しなさいということになります。

しかし、「支払金又は預り金」の中には、先ほどの手付金等の保全措置が講じられた手付金は含まれません。これは、あくまで「手付金等の保全措置」として説明されるからです(施行規則16条の3第2号)。

また、受領する額が50万円未満のものも除かれています(同1号)。したがって、受領する金額が50万円以上の場合には、その説明が必要となります。

さらに、手付金等の保全措置と同様、登記以後に受領するものや(同3号)、当然ですが「報酬」もここには含まれません(同4号)。

具体的には、先ほどの条文に出てきた代金、交換差金、借賃、権利金、敷金以外に固定資産税、都市計画税の精算金、保証金、登録免許税の預り金などです。

保全措置の方法としては、「第64条の3第2項の規定による保証の措置」「その他国土交通省令・内閣府令で定める保全措置」と第11号で規定されています。

「その他国土交通省令・内閣府令で定める保全措置」は、施行規則に規定があり、①銀行等による一般保証委託契約、②保険事業者による保証保険契約、③指定保管機関との間における一般寄託契約という3つの方法が認められており(施行規則16条の4)、完成物件の場合の手付金等の保全措置と同様の方法が認められています。

また、「(宅建業法)第64条の3第2項の規定による保証の措置」というのは、宅地建物取引業保証協会が行う上記①と③の方法のことです。

そして、この「支払金又は預り金」の保全措置というのは、手付金等と異なり保全措置をとることを義務づけられていません。したがって、あまり保全措置が取られることはないかと思います。その場合には、保全措置は講じない旨を説明しておけば大丈夫です。

ただ、保全措置を講じないので、何も説明しないというのはダメです。

(13) 代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあっせんの内容等(第12号)

これは要するに、ローンのあっせんのことです。住宅などを買うときは、宅地建物取引業者はお客さんに銀行ローンをあっせんしてくれます。そのことです。これは、お客さんにとっては非常に重要ですよね。

説明内容としては、「金銭の貸借のあっせんの内容」だけでなく、「あっせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置」も説明しないといけません。

具体的には、売買契約のところで勉強しますが、売買契約にローン条項(特約)というのを付けることがあります。簡単に言えば、ローンが成立しないときに売買契約を解除できるという条項です。その説明をする必要があるということです。

(14) 住宅瑕疵担保保証保険契約の締結等(13号)

これは比較的最近追加された項目です。これは瑕疵担保責任の話ですが、よく欠陥住宅などで、お客さんが宅地建物取引業者からその欠陥を直してもらえなかったり、宅地建物取引業者が倒産したような場合に、その保証をしてもらおうという制度です。

そのような措置を「講ずるかどうか」を説明しないといけません。講じない場合には、講じない旨の説明が必要だということです。また、措置を講ずる場合の措置の概要も説明事項です。

ここでもう一つ注意して欲しいのは、民法での「売主が瑕疵担保責任を負わない旨の特約」というのも認められていましたが、このような特約については重要事項の説明の対象にはなっていません。これは後で説明する契約成立後の書面の記載事項ではありますが、重要事項の説明の対象ではありません。

(15) 国土交通省令で定める事項

ここでは、宅地建物取引業法そのものではなく、宅地建物取引業法の「施行規則」というちょっと細かい法律からの説明事項です。

ここは「貸借」の場合の重要事項の説明の話が多いんですが、「宅地」の場合と「建物」の場合のそれぞれについて、「売買・交換」の場合と「貸借」の場合が規定されており、かなりややこしくなっています。

最初に全体を図表化したものを掲げておき、以下一つずつについて解説していきます。

宅建業法の重要事項の説明事項として国土交通省で定められた事項のまとめ

① 宅地造成等規制法により指定された造成宅地防災区域内にあるときは、その旨

もともと宅地造成等規制法は、宅地造成に伴う崖崩れなどの防止を目的にしていますので、宅地であろうが、建物であろうが、売買・交換であろうが、貸借であろうが、重要事項として説明しないといけません。

② 土砂災害警戒区域内にあるときは、その旨

「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」というのも、土砂災害から国民の生命及び身体を保護するための法律ですから、宅地・建物を問わず、売買・交換・貸借を問わず適用されます。

③ 津波災害警戒区域内にあるときは、その旨

津波防災地域づくりに関する法律は、津波による災害から国民の生命、身体及び財産の保護を図るための法律ですから、宅地・建物を問わず、売買・交換・貸借を問わず適用されます。

なお、宅建業法施行規則第16条の4の3に最初に規定されている第1号(造成宅地防災区域)、同2号(土砂災害警戒区域)、同第3号(津波災害警戒区域)の3つは災害に関するもので、これ以降の部分を含めて、宅地・建物を問わず、売買・交換・貸借のすべてに適用されるのは、この3つですから、これはグループ化してセットで覚えておくのがいいでしょう。

④ 石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは、その内容

この「石綿」というのは、アスベストのことです。アスベストというのは、いろいろ社会的な問題にもなっている通りで、その調査の結果の記録の説明が必要だということです。

このアスベストは、「建物」に適用されるというのはすぐに分かるでしょう。ただ、建物であれば、売買・交換だけでなく、貸借にも適用されます。

しかし、「記録されているときは」という表現から分かりますように、記録がないときは、説明は不要です。

ただ、記録があれば、石綿が使用されていなくても説明が必要になります。

⑤ 耐震診断を受けたものであるときは、その内容

これは簡単に言うと、耐震診断を受けた建物であるときは、その内容を説明しなさいということです。

これも「建物」の場合に説明が必要だというのは分かるでしょう。ただ、建物であれば、売買・交換・貸借を問いません。

そして、「耐震診断を受けたものであるときは」という表現から分かりますように、耐震診断を受けた建物でないときは、説明は不要です。

次に、「一定の者が行う」となっていますが、具体的には、建築基準法に規定する指定確認検査機関、建築士法に規定する建築士、住宅の品質確保の促進等に関する法律に規定する登録住宅性能評価機関、地方公共団体のことですが、軽く見ておく程度でいいでしょう。

最も注意してほしいのは、建物は「昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手したものを除く」となっている点です。これは、この昭和56年というのは、それ以前は旧耐震基準で建物が建てられているので、耐震性能の点で不十分である可能性があります。昭和56年以降は新耐震基準で建てられているので、説明は不要です。

⑥ 住宅性能評価を受けた新築住宅であるときは、その旨

この「住宅性能評価」というのは、とりあえず、一定の性能を有する住宅だということを評価して保証する制度だという程度の理解で結構です。

絶対に覚えておいて欲しいのは、この規定は「新築」住宅に適用があるという点です。

しかも、売買・交換に適用があり、貸借には適用がありません。

⑦ 台所、浴室、便所その他の当該建物の設備の整備の状況

これは「建物」の設備の話ですから、建物の場合の説明事項です。しかも貸借に限られています。

この「建物の貸借」に適用されるという点を覚えて下さい。

⑧ 契約期間及び契約の更新に関する事項

この契約期間やその更新が重要であるということは理解できると思います。

そして、契約「期間」、「更新」という言葉から分かりますように、「貸借」に適用される説明事項です。

貸借なら土地、建物の両方で説明する必要があります。

⑨ 定期借地権、定期建物賃貸借、高齢者の居住の安定確保に関する法律の終身建物賃貸借

これも適用されるのは賃貸借だというのは理解できるでしょう。

定期借地権、定期建物賃貸借は借地借家法で勉強するので大丈夫でしょう。

そして、定期借地権は土地について、定期建物賃貸借は建物について適用されるというのも説明するまでもありません。

最後の「高齢者の居住の安定確保に関する法律」の「終身建物賃貸借」というのは、高齢者の場合、賃借人が死亡した時に終了するという賃貸借を特別に締結できる制度があるんだという程度でいいです。そして、この場合は建物に適用されます。

以上の制度は更新がない等の問題がありますので、重要事項として説明するということです。

⑩ 宅地又は建物の用途その他の利用に係る制限に関する事項

この「用途その他の利用に係る制限に関する事項」というのは、区分所有建物の重要事項の説明のところで出てきましたね。

ここで言っているのは、この区分所有建物以外の場合でも「用途その他の利用に係る制限に関する事項」は重要事項として説明しなさいよ、ということです。

この規定は、宅地・建物を問わず、貸借に適用があります。

⑪ 契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項

これは「敷金」という言葉から分かりますように、「貸借」に適用される規定です。

貸借なら、宅地・建物双方に適用されます。

この敷金等は、後で揉めるもとになりますので、重要事項として説明しなさい、ということです。

ちなみに、ここでは敷金等の精算に関する事項は説明しなければいけませんが、「金銭の保管方法」までの説明は必要ありません。

⑫ 宅地又は建物の管理の委託を受けている者の氏名及び住所

これも、区分所有建物の重要事項の説明のところで、出てきたものだと思います。管理会社の話です。

これも、区分所有建物を除いていますので、区分所有建物以外の場合でも、管理を委託している場合は、その委託を受けている者の住所・氏名を説明しなさい、ということになります。

これも宅地・建物を問わず、貸借の場合のみ適用されます。

⑬ 契約終了時における当該宅地の上の建物の取壊しに関する事項

これは「宅地の上」の建物の取り壊しに関する事項ですから、「宅地」の貸借の場合にのみ適用されます。

(16) 割賦販売の場合

それでは、割賦販売の場合の重要事項について説明します。

割賦販売というのは簡単に言うと、分割払いのことです。ローンとは違いますよ。ローンというのは、銀行からお金を借りていっぺんに売買の残代金を支払います。売主に分割で支払うわけではありません。後は、確かに毎月返済していきますが、それは銀行との関係で借金を返済する話です。

この割賦販売の場合には、次の3つの事項を説明します。

①現金販売価格
②割賦販売価格
③宅地又は建物の引渡しまでに支払う金銭の額及び賦払金の額並びにその支払の時期及び方法

ここのポイントは、何と言っても①の「現金販売価格」です。割賦販売なので、②の「割賦販売価格」の説明が必要なのはよく分かります。しかし、現金販売をするわけではないにもかかわらず、「現金販売価格」の説明が必要だというわけです。

これは、通常割賦販売価格は、現金販売価格より高くなります。それは、支払を待ってあげる分、相手を信用してあげているわけです。割賦販売にすることにより、この信用の供与分としていくら金額が上乗せされているのかを明確にするために、この現金販売価格の説明が必要になるわけです。

次に、③の「引渡しまでに支払う金銭の額」と「賦払金」ですが、「賦払金」はカッコ書きの説明の通りで、1回ごとに支払う金額のことです。「引渡しまでに支払う金銭の額」というのは、俗にいう「頭金(あたまきん)」のことです。

10.宅地建物取引士証の提示(第4項)

重要事項の説明をするときは、説明の相手方に対し、宅地建物取引士証を提示しなければいけません。

宅地建物取引士証を提示させることによって名義貸しを防止しようとしているわけです。

そして、どんな理由があっても、「やむを得なかったので提示せずに説明をした」という場合は、すべて宅建業法違反です。

また、この宅地建物取引士証の提示は、相手方からの請求がなくても、提示しなければいけませんし、相手方の承諾があったとしても、その提示を省略することはできません。

以前に相手方等を現地案内したときなどに、宅地建物取引士証を提示したことがあったとしても、重要事項の説明の際に再度提示しなければいけません。

また、宅地建物取引士証に代えて、従業者証明書を提示してもダメです。

要するに、まとめると重要事項の説明の際には、「必ず」宅地建物取引士証の提示が必要だと覚えておいて下さい。

11.宅地建物取引士の記名押印(第5項)

この重要事項説明書には、宅地建物取引士が記名押印する必要があります。

ちょっと補足ですが、記名押印の意味は知っておいた方がいいと思います。

記名押印に似た言葉として、「署名」というのがあります。署名というのは、要するに手書き、自署のことです。

記名押印というのは、文字通り、名前を書いてハンコを押すという意味ですが、「記名」の部分は、自署である必要はありません。印刷された文字でも、ゴム印でも、パソコンでプリントアウトされたものでも大丈夫です。ハンコが押してあるというのが重要なんですね。

よく、署名捺印というのがあります。自署した上で、ハンコを押すというパターンですよね。これは、先ほどの署名と記名押印をミックスしたようなパターンですが、署名押印したからといって、効力が強くなるということはありません。

そして、この重要事項の説明書には、記名押印が必要なわけですから、宅地建物取引士が手書きで署名したからといって、押印しなければ宅地建物取引業法違反です。

最後に、重要事項説明書に記名押印する宅地建物取引士と、第37条の契約内容を記載した書面に記名押印する宅地建物取引士は、同一であることが望ましいですが、別人でもよいとされます。

それでは、重要事項説明書について、説明する宅地建物取引士と書面に記名押印する者が同一である必要があるかというのが問題になります。

これは基本的には同一である必要があるのではないかと思います。

第37条書面の場合は、説明は不要で、書面に記名押印さえあればよく、その点では37条書面の責任者さえはっきりしていればよいことになります。

しかし、35条書面の場合は説明が重要であり、口頭による説明と重要事項説明書の内容が一致していることを確認するために宅地建物取引士の記名押印が要求されているからです。

なお、国土交通省による重要事項説明書の様式には、「説明をする宅地建物取引士」とされており、その部分に記名押印が必要な形になっていますので、少なくとも実際に説明する宅地建物取引士が重要事項説明書に記名押印することが予定されています。

12.買主等が宅地建物取引業者の場合

さて、以上で重要事項の説明というのは、どういうものかということは書きましたが、この重要事項の説明については、買主等が宅地建物取引業者の場合には、特別な扱いがなされています。買主等である宅地建物取引業者は、不動産取引のプロですから、重要事項の「説明」は不要とされています。ただ、重要事項の「説明書」の交付は必要で、宅地建物取引士による重要事項の説明書の記名押印も必要とされます。

もちろん、買主等が宅地建物取引業者である場合でも、法律上強制されていないとはいえ、重要事項の説明を行うことは何ら問題ありません。ただ、そのときは親切で行っているわけですから、宅地建物取引業法の規制はないので、宅地建物取引士以外のものが説明してもかまいません。ただし、重要事項の説明書の記名押印及び交付は法律上の義務ですから、宅地建物取引士の記名押印が必要となります。