宅建業法34条の2(媒介契約)

【解説】

1.媒介契約

まず、この媒介契約とは、どういうものでしょうか。

「媒介」という言葉から分かりますように、宅地建物取引業者に媒介を依頼する契約のことです。

上図を見て下さい。非常に簡単な話です。依頼者Aは、その所有している土地を売却したいと思いました。しかし、不動産の専門家でもないAは、不動産取引にも詳しくないし、有利な条件で買ってくれる人を探すノウハウもありません。普通、こういう場合は不動産屋に行きますよね。「この土地を売りたいんですけど…」ということで、宅地建物取引業者のもとを訪れます。そして、宅地建物取引業者に媒介を依頼します。この媒介を依頼する契約が「媒介契約」です。

この媒介契約に基づいて宅地建物取引業者Bは、買主Cを探してくると、今度は依頼者AとCとの間で売買契約を締結します。この場合、「媒介」で、代理ではないので、宅地建物取引業者に売買契約を締結する権限はありませんので、売買契約の当事者は、AとCになります。そんなに難しい話ではありませんが、丁寧に説明したのは、この媒介契約と後に締結する売買契約との区別を頭の中で付けておいて欲しかったからです。

媒介契約というのは、以上のようなものですが、この法的な性質についてはいろいろ問題がありました。

わが国の民法・商法には、不動産売買等の媒介契約に関する規定は設けられていません。

しかし、法的な性質としてこれを民法上の準委任(民法第656条)と解し、媒介契約の独自性を認めつつ信任関係が根幹にあることに鑑み、委任に関する規定が適宜準用されていましたが、必ずしも法律上の扱いは統一されておらず報酬請求権などをめぐって考え方が分かれていました。

ただ、媒介契約については、宅地建物取引業法で法的な整備がなされるまでは、宅地建物取引業者が依頼者との間において、書面を取り交わすことがほとんどなかったので、媒介に関する契約関係が非常に不明確で、媒介報酬や宅地建物取引業者の注意義務をめぐる紛争が少なからずありました。

一方、依頼を受ける業者の側からみると、依頼者は複数の業者に依頼したうえ、どこかの業者によって成約しても他の業者には報告もしてこないという状況なので、どれだけ努力したらいいのか分からず、費用を無駄にすまいとして勢い消極的となり、積極的に経費をかけて相手方を探す努力をしなくなります。

また、自分の手持ちの情報を公開すると、他の業者に依頼者を探し出され、物件を横取りされてしまう(抜かれてしまう)危険が絶えずつきまとうので、情報を公開したがらないことになる。したがって、今後不動産の流通市場を整備・近代化していくためには、この媒介に関する契約関係を明確化し、抜いた抜かれたといったトラブルをなくしていく必要がありました。

以上が、宅地建物取引業法で媒介契約の規定を設けた理由です。

具体的には、昭和55年の改正により媒介契約に関する規制(専任媒介契約、一般媒介契約)が設けられ、昭和63年の法改正においては専属専任媒介契約というのが認められ、さらに平成7年の改正では、物件情報の登録を専属専任媒介契約だけでなく専任媒介契約にまで義務付けられました。

2.媒介契約の書面化(第1項)

それでは、この媒介契約については、どのような規制があるでしょうか。

第1項で、「宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介契約を締結したときは、遅滞なく、一定の事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。」と規定しています。

要するに、宅地建物取引業者に媒介契約書面の作成・交付義務があるということです。

依頼の内容を明確にして、後日の紛争を防ぐために書面の作成等が義務付けられているわけです。

もっとも、媒介契約は、他の一般のもろもろの契約と同様、諾成・不要式の契約ですから、口頭により成立しますので、媒介契約自体が、書面を作成・交付してはじめて成立する旨を規定したものではありません。

あくまで、本条は媒介契約の成立の問題とは別に書面化を要求しているわけです。

次は、具体的な問題点について、詳しく見ていきましょう。

まず、最初の「宅地建物取引業者は」という主語に注目。宅地建物取引業者が、書面を作成し、記名押印し、交付するということです。

これは、「宅地建物取引士」ではないという点が出題されます。

宅地建物取引業法15条の説明で、案内所などにも専任の宅地建物取引士の設置義務があるという話をしました。ただ、すべての案内所に専任の宅地建物取引士の設置が必要なわけではなく、「契約を締結し、又はこれらの契約の申込みを受ける」ような案内所にだけ専任の宅地建物取引士の設置が必要であるということでした。

そのときに、そもそも宅地建物取引士というのは、「契約」にまつわる場面でのみ登場しますという説明をしました。

そこで、この媒介契約ですが、媒介契約というのは、依頼者が宅地建物取引業者に依頼する契約であり、後に締結する売買契約などとは頭の中で分けて下さいと書きました。

そして、宅地建物取引士が関係してくるのは、当然売買契約の方の話です。

媒介契約は、その前段階の宅地建物取引業者に対する依頼の場面です。したがって、ここで宅地建物取引士が出てくるのは、まだ早い。ということで、この媒介契約では、宅地建物取引士ではなく、「宅地建物取引業者」の記名押印等で済むわけです。

次のポイントは、「売買」又は「交換」の媒介契約を締結したときに、媒介契約の書面の作成等の義務があるという点です。つまり、「貸借」が外されています。

この「貸借」に媒介契約書面の作成等の義務がないというのは、理論的には特に必然性というのはないと思います。まあ、「貸借程度なら、そこまで規制する必要はない」ということです。現に、昔から貸借にも媒介契約書面の作成等を義務付けようという話があるくらいですから。

ただ、書面の作成義務がないということから、貸借については、いつ媒介契約が成立したといえるのかというのは問題になります。

書面の作成・交付というようなはっきりした区切りがないからです。

例えば、依頼者が賃貸物件を探すため、宅地建物取引業者の事務所を訪れ、業者がいくつかの物件を紹介し、現地を案内し、その中の1つの貸主に係る物件について条件交渉し、賃貸借契約が成立したとします。

この場合、事務所等を訪れて物件の探索を依頼した段階では、いまだ取引物件も特定されませんので、原則としていまだ媒介契約は成立していません。

物件が特定されて取引交渉に入る段階で、媒介契約が成立すると解されます。

なお、上記は借主側から考えましたが、貸主側がその所有する宅地建物の賃貸を宅地建物取引業者に依頼する場合は、通常その時点で取引物件が特定されますので、その段階で媒介契約が成立したと解されます。

3.媒介契約書の記載事項(第1項各号)

媒介契約を締結した場合、「一定の事項」を記載した書面を作成等しなければならないという話をしました。それでは、媒介契約書には具体的にどのような事項を記載しなければならないのか。一つずつ詳しく見ていきましょう。

(1) 物件を特定するために必要な表示(第1号)

どの物件の媒介を依頼したのかはっきりしないようなら困りますので、これは当然の事項です。

(2) 売買すべき価額又はその評価額(2号)

「売買すべき価額」というのは、土地の売却の依頼ならば、この土地はいくらで売れそうか、といういわゆる「物件の売出し価額」のことです。

「評価額」というのは、交換の媒介の依頼における物件の依頼価額のことを指します。

これについては、もう一つ条文があって、「宅地建物取引業者は、この価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。」という第2項です。

宅地建物取引業者が媒介を行う際の売出し価額の決定は、通常は業者が依頼者の希望価額に対してアドバイスをして調整を行い、その結果売出し価額が決定されることになります。

このプロセスでは、依頼者の希望価額、業者の査定価額、調整の結果の売出し価額とがあり、依頼者に交付すべき書面にはこのうちの売出し価額を記載しますが、それを決定するにあたっては、当然のことながらプロである業者の査定価額が大きな意味を持ちます。

宅地建物の取引を円滑に行うには類似物件の取引事例などの情報や知識が必要とされますが、一般消費者にはこれが難しいから宅地建物取引業者に依頼するわけです。

このように宅地建物取引業者の査定価額が重要であるにもかかわらず、従来は、業者の長い職業的カンによって、「この場所でこれくらいの土地ならば、これくらいの金額です」と明確な根拠も示さず評価額を言ったり、値段に幅をもたせたり、値段で客を釣るような客寄せの手段とするためいい加減な値段を付けたりしがちでした。このような弊害を防ぐためです。

この根拠を明示する者は宅地建物取引業者です。宅地建物取引士が行う必要はありません。

また、この根拠の明示は、一般媒介契約や専任媒介契約の媒介契約の類型の区別なく行うことが必要です。

この場合の「根拠」というのは、価格査定マニュアルという不動産の価格を出すマニュアルのようなものがあるので、それを使ってもいいし、近隣の取引事例などを挙げてもかまいません。合理的な根拠があるものならば、特にその方法は問われていません。

なお、この価格査定マニュアルというのは、昭和55年の宅地建物取引業法改正により媒介契約制度が施行されたことに伴い整備されたものです。

また、「書面」で根拠を示せと規定されているわけではありませんので、書面で示す必要はなく、口頭でもかまいません。

次に押さえておいて欲しいのは、「意見を述べるときは」、その根拠を明らかにしなければならない、という点です。

これは、「意見を述べないとき」は、根拠を示す必要もありません。根拠を明らかにする必要があるのは、「意見を述べるとき」だけです。

次に、意見を述べるときに、根拠を明らかにする必要があるのは、依頼者からの請求の有無を問いません。依頼者から、根拠を明らかにすることを請求された場合はもちろん、請求されていない場合でも、宅地建物取引業者自ら根拠を明らかにする必要があります。

また、依頼者の売却希望価格より高い価格を言う場合でも、必ず根拠を示さなければなりません。

※守秘義務との関係

媒介価額について評価を行うためには、豊富な取引事例の収集を行い、同種・類似の取引事例を使用することが必要となります。

この場合に取引事例の中には依頼者等の秘密にかかわるものが含まれているので、宅地建物取引業者等の秘密を守る義務(45条、75条の2)との関係が一応問題になります。

ただ、秘密を守る義務は、正当な理由があれば、この義務も解除されますので、取引事例を顧客や他の宅地建物取引業者に提示したり、その収集および管理を行う機構に提供する行為は、この根拠の明示義務を果たすために必要な限度において、45条および75条の2の「正当な理由」があるものと考えられます。

ただし、上記の範囲を超えて、①取引事例を根拠の明示義務を果たす目的以外の用途に使用したり、②価額の査定を行うためには不要と考えられる取引の当事者の氏名等の情報についてまで収集を行ったり、③営利を目的として取引事例の収集伝達の事業を営んだり、このような事業を行う者に取引事例を漏らしたり、④取引事例のデータを宅地建物取引業者以外の者に利用させること等は、許されません。

(3) 依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することの許否及びこれを許す場合の他の宅地建物取引業者を明示する義務の存否に関する事項(3号)

これ分かりにくいと思いますので、しっかり説明します。この記載事項が意味しているのは、媒介契約には、いくつか種類があって、今締結しているこの媒介契約は、どの種類の媒介契約なのかをはっきりしなさい、という意味です。

媒介契約というのは、前に説明したように、依頼者が宅地建物取引業者に不動産の売却等を依頼することですが、この依頼の仕方にいろいろな方法があります。具体的に言うと、以下の3種類です。

  1. 一般媒介契約
  2. 専任媒介契約
  3. 専属専任媒介契約

下図を見て下さい。

これが媒介契約の種類です。媒介契約は、大きく一般媒介契約と専任媒介契約に分かれます。

そして、専任媒介契約は、普通の専任媒介契約と専属専任媒介契約というものに分かれます。

また、一般媒介契約には明示型といわれるものと、非明示型といわれるものがあります。それでは、その各種の媒介契約はどういう内容を持っているのでしょうか。

まず、「他業者への依頼」に関してです。他業者への依頼というのは、依頼者Aが、宅地建物取引業者Bに媒介を依頼したが、Bだけに頼らず、他の宅地建物取引業者にも重ねてドンドン依頼できるのか、Bにだけ媒介を頼むのか、という違いです。

一般媒介というのは、他の宅地建物取引業者にも媒介を依頼できますという形式です。

これに対して、専任媒介・専属専任媒介は、一つの宅地建物取引業者に依頼してしまうと、他の宅地建物取引業者には依頼できない形式です。

ただ、一般媒介は、「明示型」と「非明示型」というのがあります。この明示型、非明示型というのも押さえておいて下さい。一般媒介というのは、他の宅地建物取引業者にも媒介を依頼できるわけですが、仮にAという宅地建物取引業者に一般媒介で依頼したとします。そして、他の宅地建物取引業者Bにも媒介を依頼したときに、Aに「Bという業者にも依頼しましたよ」ということを明示して教えないといけないのを「明示型」といいます。

そうではなく、Aに「他の業者Bに依頼した」ことを教えることなく、ドンドン依頼できるのを「非明示型」といいます。

一般媒介の場合、この明示型か非明示型かを決めないといけませんが、明示型の一般媒介か、非明示型の一般媒介かは、他の業者の明示義務以外には差はありません。これから、媒介契約について、「一般媒介では……」という説明をしていきますが、この一般媒介には、明示型も非明示型も同じ規制がかかっていると考えて下さい。

次に、専任媒介・専属専任媒介というのは、他の宅地建物取引業者に媒介を依頼できませんが、これは他の業者に代理を依頼することもできません。つまり、宅地建物取引業者Aに専任媒介や専属専任媒介の形で媒介を依頼したので、他の業者には「媒介」は依頼できない。それでは、他の業者に「代理」の形で依頼しようというのも認められませんよ、という意味です。専任媒介や専属専任媒介で業者Aに依頼した以上、その業者一本に絞るべきで、媒介という形式であれ、代理という形式であれ、他の業者には依頼できません、ということです。

そこで、それでは専任媒介と専属専任媒介とはどう違うのか、という疑問が生じます。それは「自己発見取引」が認められるかどうかという点です。

「自己発見取引」というのは、依頼者自身が自分で取引の相手方を見つけてくることです。宅地建物取引業者Aに土地の売却の媒介を依頼したが、その後で依頼者が、自分の友人でこの土地を買いたいという人を見つけてきたような場合です。

専任媒介では、この自己発見取引は認められます。

専属専任媒介では、この自己発見取引も認められません。つまり、取引はその宅地建物取引業者を通してのみしか認められないわけです。

以上、この3種類の媒介契約の種類の意味をご理解いただけましたでしょうか。

今の説明を読んできて、要するに専任媒介契約や専属専任媒介契約は、宅地建物取引業者にとって有利な契約だが、依頼者にとっては一般媒介契約の方が有利ではないのかと思われる方が多いと思います。

ただ、これは一概には言えませんよ。確かに宅地建物取引業者は、依頼者に対して専任媒介契約や専属専任媒介契約を締結することを望みます。それに対して、依頼者が、それは宅地建物取引業者が自分に有利なようにしようとしているのではないかと思い、一般媒介契約を締結したとします。

しかし、依頼を受けた業者は、このような一般媒介契約のお客に対してよりも、専任媒介契約や専属専任媒介契約のお客さんに対しての方が熱心に契約の相手方を探してくれます。

というのは、一般媒介契約の場合、一生懸命相手方を探してきたとしても、依頼者は別の業者で契約を締結してしまう可能性があります。その場合、業者がかけてきた労力は無駄になってしまいます。それならば、専任媒介契約や専属専任媒介契約のお客さんの方が、そのような無駄がないので一生懸命相手方を探そうとします。これは企業である以上、仕方のないことです。

そのへんのところは法律でもよく考えられていて、専任媒介契約や専属専任媒介契約であっても、宅地建物取引業者というのは、「報酬」のところで勉強しますが、成功報酬主義というのが取られているので、媒介契約を締結しただけでは、1円のお金にもなりません。相手方を見つけて、契約をして初めて報酬というのがもらえるわけです。

専任媒介契約や専属専任媒介契約で、依頼者を囲い込んでいるだけでは何の得もありません。

ただ、専任媒介契約や専属専任媒介契約は、依頼者を強く拘束しますので、後で出てきますが、有効期間というのが定めてあって、3か月以上依頼者を拘束することはできないようになっています。

したがって、みなさんが思うほど、専任媒介契約や専属専任媒介契約は依頼者に不利ではありません。宅地建物取引業者が、一生懸命相手方を探してくれるというメリットもあります。その宅地建物取引業者が、あてにならないと思えば3か月後に別の業者に頼めばいいんですね。

最後にまとめますと、媒介契約書には、一般媒介契約か専任媒介契約か専属専任媒介契約かの区別、そして、次にも注意して欲しいんですが、一般媒介契約の場合には明示型か非明示型かの区別を記載しないといけないということになります。

(4) 媒介契約の有効期間及び解除に関する事項(4号)

記載事項の4つ目は、有効期間及び解除に関する事項です。

① 有効期間

この有効期間については、第3項に規定があるので後述します。

ただ、気を付けて欲しい点があります。一般媒介契約に関してです。一般媒介契約には有効期間の制限がありません。ということは、有効期間をどのように定めてもよいし、定めなくてもかまいません。ただ、ここに「有効期間に関する事項」は、媒介契約書の記載事項になっていますので、一般媒介契約については、有効期間の制限はありませんが、媒介契約書には、有効期間について記載しなければいけません。

② 解除に関する事項

次に解除に関する事項ですが、媒介契約を解除すると、媒介契約の効力は遡及的に消滅しますので、依頼者および宅地建物取引業者者の双方が媒介契約の解除に関する事項を合意しておくことが必要であることから記載事項とされています。

具体的には、解除ができる場合と解除の効果などが記載の主な内容になります。

なお、当然ですが、書面に明記されていなくても当事者の一方に債務不履行があった場合などには、民法の規定に従い、契約の一般原則により解除権の行使はできます。

たとえば、依頼を受けた宅地建物取引業者がまったく成約に向けて努力をしないときなどが解除事由となると考えられますが、媒介契約の性質については考え方も分かれているので、あらかじめ解除事由や解除の効果などは媒介契約の中で合意しておけばいいわけです。

最後に、この契約の解除に関する事項は、必ず記載する必要があります。

したがって、もし解除について特に定めがなければ、「定めなし」と記載しなければいけません。

(5) 指定流通機構への登録に関する事項(5号)

この指定流通機構というのは、後の第5項・第6項の説明のところで再度詳しく説明しますが、専任媒介契約(専属専任媒介契約を含む)は、指定流通機構への登録の義務がありますので、当然この「指定流通機構への登録に関する事項」については、記載しなければいけません。

ただ、注意して欲しいのは、一般媒介の場合です。一般媒介の場合は、指定流通機構へ登録しなくてもいいんですが、指定流通機構に登録しない場合は、「登録しない」旨の記載は必要になります。

登録しないからといって、何も記載しないのは宅地建物取引業法違反です。

(6) 報酬に関する事項(6号)

この報酬に関する事項も、媒介契約書の記載事項です。

この報酬に関する事項については、確かに媒介の依頼を受けた時点では売買等の契約が成立していませんので、売買の成約価額は決まっていません。

しかし、あらかじめ報酬の額や支払方法、消費税に関する事項等を取決めて媒介契約書に記載する必要があります。

「報酬に関しては、まだ決まっていなかったので記載しなかった」というようなことは許されません。

(7) その他国土交通省令・内閣府令で定める事項(7号)

媒介契約書には、それ以外にも宅地建物取引業法施行規則に記載事項の規定があります。

具体的には、まず「違反に対する措置」の記載が必要です。

① 専任媒介契約にあつては、依頼者が他の宅地建物取引業者の媒介又は代理によつて売買又は交換の契約を成立させたときの措置

② 依頼者が売買又は交換の媒介を依頼した宅地建物取引業者が探索した相手方以外の者と売買又は交換の契約を締結することができない旨の特約を含む専任媒介契約(次条及び第十五条の九において「専属専任媒介契約」という。)にあつては、依頼者が当該相手方以外の者と売買又は交換の契約を締結したときの措置

③ 依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを許し、かつ、他の宅地建物取引業者を明示する義務がある媒介契約にあつては、依頼者が明示していない他の宅地建物取引業者の媒介又は代理によつて売買又は交換の契約を成立させたときの措置

この①~③については、難しそうですが、先ほど書きましたように「違反に対する措置」と一括りで覚えておけば大丈夫です。

①については、専任媒介契約は、他の業者に依頼してはいけません。にもかかわらず、他の業者に依頼して契約を成立させたときは、どうするか。その措置について媒介契約書に記載しなさい、ということです。

具体的には、依頼者が専任義務に違反して成約に至ったときには、違約金を支払わなければならないなどです。

たとえば、後述の標準媒介契約約款によると「約定報酬額に相当する金額を違約金として請求することができます。」となっています。

そして、このような取り決めについて、依頼者側に注意を喚起させて依頼者が思わぬ損害を被らないようにするために、書面には依頼者が専任義務に違反して成約したときの措置について記載しなければならないこととしているわけです。

なおここでいう専任媒介契約には、専属専任媒介契約も含まれますので、この記載が必要です(専属専任媒介契約で、依頼者が自己発見取引をしたときは、下記②によります。)。

②は、専属専任媒介契約は自己発見取引も認められません。にもかかわらず、自己発見取引をしたときは、どうするか。その措置について媒介契約書に記載しなさい、ということです。

③は、明示型の一般媒介契約は、他の業者に依頼すればその業者を明示しなければいけません。にもかかわらず、明示していない他の業者の媒介で契約を成立させたときは、どうするか。その措置について媒介契約書に記載しなさい、ということです。

なお、この違反した場合の措置の具体的な内容ですが、たとえば、専任媒介契約なのに、他の業者の媒介で契約が成立した場合は、元の業者は約定(やくじょう)報酬額を請求できるというような定めが具体例になります。

もう一つ、媒介契約書の記載事項として宅地建物取引業法施行規則に定めがあります。

「当該媒介契約が国土交通大臣が定める標準媒介契約約款に基づくものであるか否かの別」です。

これは、「標準媒介契約約款」の意味がわからないと思います。媒介契約を締結すると、媒介契約書を作成しないといけませんが、この媒介契約書については、国土交通省が契約書のひな形(モデル)を作成しています。このモデルを使うのかどうか、ということを記載するわけです。

「基づく」か「基づかない」かを記載します。「基づくものであるか否かの別」を記載しますので、「基づかない」場合も、「基づかない」ということを記載する必要があります。

「標準媒介契約約款に基づかないので、記載しなかった」というようなことは許されません。

このように標準媒介契約約款に基づくものであるか否かの別を記載させるのは、一般の依頼者が、個々の宅地建物取引業者の示す書面が標準媒介契約約款を用いたものかどうかを一字一句確かめることを期待するのは無理なので、一目でチェックできるようにこのような記載が義務づけられている。

またこれによって、標準媒介契約約款を活用しやすくすることによって、その普及を図ることを目的としています。

4.媒介契約の有効期間(第3項、第4項)

媒介契約の有効期間というのには規制があります。

「依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約(専任媒介契約)の有効期間は、3月を超えることができない。これより長い期間を定めたときは、その期間は、3月とする。」(第3項)

ここでいう専任媒介契約は、「依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる」という表現から分かりますように、専属専任媒介契約も含みます。専属専任媒介契約は、専任媒介契約の一種と考えてもらえばいいかと思います。

この専任媒介契約(専属専任媒介契約も含む)は、3か月という有効期間があります。先ほど説明しましたように、専任媒介契約は依頼者に対する拘束が強いので、3か月という期間を区切ったわけです。

気を付けてもらいたいのは、たとえば有効期間を4か月と定めた場合、その媒介契約自体が無効になるわけではなく、3か月を超える部分のみ無効になるという点です。つまり3か月の範囲内では有効です。したがって、有効期間を4か月と定めれば、3か月の媒介契約として有効です。

期間を定めなかったときは、契約上の有効期間は無期限となるので、この場合も有効期間は3ヵ月となるものと考えられます。

そして、3か月経過した後に、有効期間を延長することもできます。「この有効期間は、依頼者の申出により、更新することができる。ただし、更新の時から3月を超えることができない。」(第4項)

更新した期間も3か月を超えることはできません。

そして、重要なのは、この更新は「依頼者の申出」によらなければならないことです。したがって、有効期間を自動的に更新する旨の規定は無効になります。

ただ、依頼者の申出があれば、有効期間の更新は何度でもすることができます。

最後に、これは媒介契約も「契約」である以上、当然のことですが、依頼者が更新を申し出ても、宅地建物取引業者の方から更新を拒むことはできます。宅地建物取引業者が更新を強制されるいわれはありません。

以上に対して、一般媒介契約には有効期間に関する規定がありません。規定がないということは、特に制限がないということです。ということは、有効期間をどのように定めてもよいし、定めなくてもかまいません。

5.指定流通機構(第5~7項)

これは、まず「指定流通機構」というのが分からないでしょう。

この指定流通機構というのは、要するに物件情報を流すところです。実際は、この指定流通機構というのは、レインズといって、宅地建物取引業者がお客さんから依頼された物件の情報を流しています。今はインターネットを利用している業者が多いと思いますが、ファックスでもできます。

こういうところに物件情報を流すことによって、多くの業者がその物件情報を目にすることができるので、成約の可能性が高まるということです。

もともと媒介というのは成約に向けて努力する行為なので、宅地建物取引業者は成約に向けて積極的に努力すべであるが、依頼者にとっては果たして業者が本当に努力しているかどうか、十分に判明しない場合が多いのでこの義務が課されています。

この流通機構の設立については当初はいろいろな事情があって、全国で106機構という乱立状態だったようですが、建設大臣の指定機構制がとられたり、指定流通機構を公益法人(財団法人、社団法人)化する措置がとられ、統合・再編され、現在では全国で4機構に統合されています。

そして、この指定流通機構への登録についてですが、この義務があるのは、専任媒介契約(専属専任媒介契約を含む)を締結した依頼者の物件のみです。

一般媒介契約の依頼者の物件は、指定流通機構に登録する義務はありません。

ただ、勘違いしてもらっては困りますが、一般媒介契約の場合も、宅地建物取引業には登録の「義務」がないだけで、業者自身がすすんで一般媒介契約の依頼者の物件を登録することはできます。一般媒介だからといって、登録することができないわけではなく、登録できます。注意して下さい。

それでは、指定流通機構に登録するときには、物件のどのような事項を登録するのでしょうか。

  1. 当該専任媒介契約の目的物である宅地又は建物につき、所在、規模、形質、売買すべき価額
  2. 当該宅地又は建物に係る都市計画法その他の法令に基づく制限で主要なもの
  3. 当該専任媒介契約が宅地又は建物の交換の契約に係るものである場合にあっては、当該宅地又は建物の評価額
  4. 当該専任媒介契約が専属専任媒介契約である場合にあっては、その旨

内容的にはそんなに難しい話ではないと思います。当然のことが並んでいます。

次に、この指定流通機構への登録は、「一定の期間内」にしなければいけませんが、その期間についてです。「この期間は、専任媒介契約の締結の日から7日(専属専任媒介契約にあっては、5日)とする。この期間の計算については、休業日数は算入しないものとする。」という施行規則の規定があります。また、この5日と7日の計算については、宅地建物取引業者の休業日は除くというのも覚えておいて下さい。

もちろん、この5日と7日は民法の規定にしたがって、初日不算入です。

そして、専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者が、指定流通機構に登録をしますと、指定流通機構から宅地建物取引業者に対して「登録を証する書面」というのが発行されます。宅地建物取引業者はこの「登録を証する書面」を遅滞なく依頼者に引き渡さなければいけません(第6項)。ちゃんと法律どおりに登録しましたということを依頼者に示すわけです。

そして、登録されますと、この物件情報が各業者に流れます。その結果、契約がまとまりますと(成約といいます)、無事終了となりそうなんですが、成約したのに、いつまでも指定流通機構にその物件の登録が残っているのは困りますので、指定流通機構に成約した旨を通知しないといけません。

「宅地建物取引業者は、登録に係る宅地又は建物の売買又は交換の契約が成立したときは、遅滞なく、その旨を当該登録に係る指定流通機構に通知しなければならない。」(第7項)ことになります。

6.業者の報告義務(第8項)

それでは最後に、宅地建物取引業者の報告義務についてです。

媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、依頼者に対して、専任媒介契約の場合は、業務の処理状況を2週間に1回以上、専属専任媒介契約の場合は、1週間に1回以上報告しなければいけません。

これは、2週間ごと、1週間ごとという意味ですから、たとえ専属専任媒介契約で1ヶ月に4回以上報告するなどと定めても、1週間に1回以上報告がなければ、宅地建物取引業法に違反することになります。

この業務の処理状況の報告というのは、具体的には、たとえば、相手方を探索するために、どういう広告を出して、それに対してどれくらい反応があったか、などという宅地建物取引業者の仕事ぶりを報告するということです。

ここで、押さえておくのは、専任媒介契約・専属専任媒介契約にのみ、この報告義務があるということです。

もちろん一般媒介契約の場合にも、業者は依頼者に報告すべきでしょうが、法律的には義務付けられていないということになります。

そして、この報告に関しては、「書面で」という規定はありませんので、口頭の報告でも法律的にはかまいません。

なお、「媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、当該媒介契約の目的物である宅地又は建物の売買又は交換の申込みがあったときは、遅滞なく、その旨を依頼者に報告しなければならない。」とされています。この報告は、専任媒介に限りませんので、注意して下さい。

7.特約

本条は媒介契約の規制について実効性を保つために、本条に反する特約を無効とするものです。

したがって、たとえば有効期間やその更新について、あるいは指定流通機構への登録、報告義務について、本条の規定する内容に反する特約は無効になります。

なお、媒介契約において、一定期間中に目的物件を売却できなかったときは、宅地建物取引業者が媒介価額を下回る価額で買取る旨の特約は、売主が宅地建物取引業者に安く売ることを義務付けず、売主の希望があれば宅地建物取引業者が買取るべきことを定めたのみであれば差し支えないという旨の通達があります(昭和57年5月13日建設省不動産業課長通達)。