宅建業法32条(誇大広告等の禁止)

【解説】

1.誇大広告等の禁止

この規定は、簡単に言うと、実際よりも優良であると誇大に表示して、消費者等を誤認させるような広告等をしてはいけませんよ、ということ。

まず、全体として、この誇大広告の禁止は、条文の最後を見てもらえば分かりますが、「表示をしてはならない」という表現から分かりますように、誇大な内容の表示(広告)自体を禁止しています。

つまり、誇大な内容の広告をした時点で、宅地建物取引業法違反です。

したがって、たとえその広告を見た人が現実に誤認することがなかったとしても、また損害を受けた人がいなかったとしても、さらに実際に取引した人がいなくても、そのような広告をしたこと自体が宅地建物取引業法違反です。

また、広告中に予想である旨を併せて表示していたとしても誇大広告の禁止の規定に違反します。

次に、デメリット不表示も誇大広告の禁止の規制にかかります。

デメリット不表示というのは、物件のデメリット(欠点)を不表示(表示しない)にすれば、つまり、欠点を隠せば、その物件は実際のものより良い物件に見えますよね。それをデメリット不表示といいます。

たとえば、市街化調整区域内の土地であることを表示せずに広告したり、その土地が公道に接道していないため建築物が建築することができないにもかかわらず、このような都合の悪い事情を伏せて表示したりする場合です。

市街化調整区域というのは、原則として建物を建てることができません。したがって、安いことが多いんですね。これを隠せばデメリット不表示になります。

次に、誇大広告は「著しく」事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも「著しく」優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならないという点も気を付けて下さい。

広告というのは、売れるように、ある程度良い物件のように書くものであって、その程度は許されます。

ただ、社会一般に許容されている限度を超えて「著しく」事実に相違したりする場合に禁止の対象になります。

この判断は実際には微妙というのか、難しい部分もあると思いますが、その判断は、一般の購入者の常識(社会通念)によって判断され、専門家の目によって判断されるべきものではないとされます。

なお、不動産業界では、「不当景品類及び不当表示防止法」に基づく業界の自主規制として、「不動産の表示に関する公正競争規約」が定められており、この規約に準拠して作成された広告であれば、宅建業法上の誇大広告にもあたりません。

2.おとり広告等

これに関連して、「おとり広告」というのも、この誇大広告の禁止に触れます。

「おとり広告」とは、実際には取引する意思のない物件の広告のことです。

実際に売るつもりはないのに、非常によい条件の物件を広告に載せておいて、この広告に惹き付けられて来店したお客さんに、別の物件を勧めて契約をしようとするような場合です。

このおとり広告については、実在する物件であっても、宅地建物取引業者が取引する意思がなければ、おとり広告になります。

このように、おとり広告というのは、広告において売買すると表示した物件と現実に売買しようとする物件がまったく別の物になりますので、「著しく事実に相違する」広告に該当し、誇大広告の禁止に該当するわけです。

3.広告の方法

この広告には、新聞、折り込みチラシ、雑誌、立看板、放送、ダイレクトメール等の昔からある広告方法だけでなく、インターネットによる広告も規制の対象になります。

4.禁止の対象

次に、宅地建物取引業法上の誇大広告の禁止は、禁止の対象が決まっています。

大きく分けて、物件について、環境について、金銭についての誇大広告が禁止されます。

これ以外の事項については、誇大広告をしても、それは宅地建物取引業法上の誇大広告の禁止に該当しません。

たとえば、有名大手不動産会社と類似の商号を使用して、相手を信用させるような場合、会社の商号は、物件・環境・金銭のどれにも該当しませんので、民法上の詐欺などの他の法律に触れる可能性はあるかもしれませんが、これは宅地建物取引業法上の誇大広告の禁止に該当しません。

他に、代理または媒介によって取引しようとしているにもかかわらず、「地主直売」などの虚偽広告をする場合も、誇大広告の禁止の規定に違反するわけではありません。ただし、この場合については「取引態様の明示」の規定には違反します。

それでは、この物件、環境、金銭について、もっと詳しく見てみましょう。

  1. 宅地又は建物の所在、規模、形質
  2. 現在若しくは将来の利用の制限、環境若しくは交通その他の利便
  3. 代金、借賃等の対価の額若しくはその支払方法若しくは代金若しくは交換差金に関する金銭の貸借のあっせん

1.が物件に関する誇大広告、2.が環境に関する誇大広告、3.が金銭に関する誇大広告になります。

一つずつ見ていきます。

① 宅地又は建物の所在
② 宅地又は建物の規模

この2つに関する事実に相違する表示が禁止されるというのは理解できるでしょう。

③ 宅地又は建物の形質

この「形質」というのは具体的には分かりにくいかもしれません。

たとえば、土地の地目、電気・ガス・水道等の供給施設あるいは排水施設の整備状況、建物の構造、新築・中古の別、適している用途の別などがこれにあたります。

④ 現在または将来における利用の制限

この④と、次の⑤⑥は環境に関する誇大広告です。

この環境に関する誇大広告については、現在だけではなく、「将来」の環境についても、規制の対象になるというのをしっかり覚えておいて下さい。

「利用の制限」というのが分かりにくい方もおられるかと思いますが、典型的には、建築基準法による用途制限、建ぺい率制限、農地の転用制限等の公法上の制限が中心になります。

したがって、「間もなく線引きの見直しが行われ、当地は市街化調整区域から市街化区域に変更される予定です。したがって、開発行為が容易になりますから地価が上昇し、投資の対象として大変有利です。」とか「間もなく用途地域が変更され商業開発が進みます。」といった表示を根拠なく行った場合は、禁止事項に該当します。

ただ、このような公法上の制限だけでなく、地上権、地役権、通行権、永小作権等の用益物権がついていたり、入会権があったり、第三者の賃借権がある場合等の私法上の利用の制限も含まれます。

⑤ 現在または将来における環境

これは、具体的には宅地又は建物の周囲の状況のことで、付近の商店街、学校、病院等の状況、公共施設等の整備状況、景観等をいいます。

したがって、根拠もないのに「近いうちにレジャー開発が進みます」などというのは、この禁止に該当します。

⑥ 現在または将来における交通その他の利便

これは分かりやすいと思いますが、たとえば、通勤等に利用する交通機関の種類、所要時間等や交通機関の建設計画、都心あるいは副都心等の業務中心地に出るために利用する交通機関の便利さなどです。

したがって、まったく根拠なく新幹線や高速道路の建設計画があるとか、新交通システムの導入計画があるとかの表現をした場合は、この禁止に触れます。

⑦ 代金、借賃等の対価の額若しくはその支払方法

金銭に関する誇大広告が禁止されるというのもよく理解できると思います。ある意味、代金等は一番重要ですから。

この代金、借賃等には、権利金等も含まれます。

支払方法については、割賦払の場合は、頭金の額・支払回数・支払期間等がこれに該当します。

⑧ 若しくは代金若しくは交換差金に関する金銭の貸借のあっせん

この代金等については、「金銭の貸借のあっせん」も誇大広告の禁止の対象になっている点も気を付けて下さい。

銀行ローンのあっせんのことです。

このローンについては、融資の際の金利の表示にアド・オン方式というのがあります。

このアド・オン方式というのは、特殊な利息支払方法で、元利合計額を毎月均等に分割弁済し、しかも計算が簡便であるためか、期間が比較的短い月賦販売や提携ローンなどでよく用いられます。

具体的には、2年分の利息24万円を元金に上乗せ(add on)した224万円を貸し付けたうえで、その利息を天引きした形をとって、現実には200万円を交付します。

そして、もし4か月据え置後20か月分割弁済とするときは、5か月目から毎月11万2,000円ずつ返すことになります。

このアド・オン方式も、それ自体は別に違法ではありませんが、元本をなし崩しに返すのであるから、残高が減っていくにもかかわらず、2年間まるまる据え置いたような利息計算をするので、実質的な利率が表向きの利率よりかなり高い(大ざっぱにいって二倍近い)ものとなります。

逆にいえば、実質金利よりずっと低い利率を公称することになります。

このようにアド・オン方式で金利を表示すると、金利が低く見えますので、アド・オン方式のみによる金利の表示は誇大広告の禁止に該当します。

しかし、アド・オン方式による金利の表示に加え実質金利も併記しておくと、これは誇大広告の禁止に該当せず認められます。