宅建業法30条(営業保証金の取戻し)

【解説】

1.営業保証金の取戻し

宅地建物取引業の開始に当たって、営業保証金が必要であるならば、宅地建物取引業を止める場合には、供託所に供託している供託金を返してくれます。

宅地建物取引業者が、供託金を返してもらうことを「営業保証金の取戻し」といいます。

この営業保証金の取戻し事由は、いくつかあります。そして、それぞれの取戻し事由について、いくつか問題点が出てきます。

この取戻し事由は、まず大きく宅地建物取引業を止める場合というのがあります。

宅地建物取引業を止める以上、営業保証金が不要になって、取り戻せるという理屈自体は非常に分かりやすいと思います。

この取戻し事由の中の宅地建物取引業を止める場合というのは、具体的には以下のものです。

① 免許の有効期間の満了
② 死亡、合併、破産手続の開始、解散、廃業
③ 免許取消処分

簡単に言えば、どんな理由であれ宅地建物取引業を止めるときは、営業保証金が不要になるので、営業保証金を取り戻すことができるということになります。

この中で最も注意を要するのは、「免許取消処分を受けた場合」でも、営業保証金を取り戻せるという点です。

免許取消処分というのは、宅地建物取引業者が何か悪いことをしたから、免許を取り消されたのではないの?そんな悪い業者でも、営業保証金を取り戻せるの?という素朴な疑問があるからです。

この考えは、2つの点で間違っています。1つは、免許取消処分というのは、宅地建物取引業者が悪いことをした場合だけに限らないという点です。免許取消処分の中には、「宅地建物取引業を1年間休止する」というようなものもあります。

ただ、宅地建物取引業者が悪いことをした場合に免許取消処分になる場合もあります。しかし、そのことと営業保証金の取戻しは別です。もともと、営業保証金は、宅地建物取引業者自身のお金です。それをその宅地建物取引業者自身が取り戻せるのは当然です。

その他の取戻し事由として、事務所の一部廃止というのがあります。この場合は、事務所新設の場合と異なり、営業保証金を供託しすぎていることになります。したがって、その超過額については、営業保証金を取り戻すことができます。

また、本条には直接規定がありませんが、主たる事務所の移転で有価証券がらみで供託している場合に、従前の供託所からの営業保証金を取り戻せる場合というのがあります(第29条)。

2.営業保証金の取戻し方法(第2項)

本条は第1項で取戻し事由の規定があります。この第1項の規定を中心に営業保証金の取戻し事由をまとめたのが上図です。

この図をよく見て下さい。⑤と⑥の間が太い線で区切られています。これは、右の列の「取戻方法」と関連しています。

この事務所の一部廃止から上の取戻し事由の場合は、取戻しをするときに、「還付の権利を有する者に対し、6月を下らない一定期間内に申し出るべき旨を公告し、その期間内にその申出がなかった場合でなければ、これをすることができない。」とされています。

もともと営業保証金は、宅地建物取引業者と取引した者を保護するためのものです。宅地建物取引業者が、たとえば宅地建物取引業を廃業したといって、営業保証金をすぐに宅地建物取引業者に返してしまったのでは、その営業保証金から還付を受ける権利を持っていた者が、還付を受け損なう可能性があります。

そこで、宅地建物取引業者に取戻しを認める前に、公告というのを出して、還付を受ける権利を有する債権者を探して確認した上で、取り戻しというのを認めているわけです。

ちなみに、この公告の期間である6か月という数字は覚えておいた方がいいです。

さて、次の取戻し事由に話を戻します。「主たる事務所の移転(有価証券で供託)」というのは、前条で説明したばかりです。有価証券のみ、または金銭と有価証券で営業保証金を供託していて、主たる事務所が移転して、もよりの供託所が変更になった場合は、移転後の主たる事務所のもよりの供託所に新たに供託するので、二重供託の状態になります。そこで、移転前の主たる事務所のもよりの供託所の分の営業保証金は取り戻せるという話です。

そして、この場合は先ほどの6か月の公告というのは、不要です。公告が必要だったのは、還付を受ける権利を有する者に還付を受けるチャンスを与えるためでしたよね。ところが、主たる事務所の移転の場合の取戻しは、二重供託を解消するためのものですから、しっかりと移転後の主たる事務所のもよりの供託所に供託金が積まれています。したがって、ここから還付を受けられるからです。

次の取戻し事由ですが、「取戻し事由発生後10年を経過したとき」というのは分かりますでしょうか。取戻し事由というのは、今勉強しているところで、たとえば宅地建物取引業を止めたような場合ですよね。そのように取戻し事由が発生して10年経つと、債権は10年で時効にかかりますので、宅地建物取引業者に対して債権を有している者も、ほとんど時効でその債権は消滅しています。したがって、この場合も公告は不要になります。

なお、取戻し事由の最後の「保証協会の社員となったとき」ですが、これは後の弁済業務保証金のところで説明します。

最後に、この営業保証金の取戻しの際の公告についてですが、この取戻しの公告をすれば、免許権者に届け出なければいけません。「営業保証金の取戻しをしようとする者が(取戻しの)公告をしたときは、遅滞なく、その旨を当該宅地建物取引業者が免許を受けている国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。」