消費者契約法2条(定義)
【解説】
1.消費者(第1項)
消費契約法は、消費者の利益を擁護するため、「消費者」と事業者との契約(消費者契約)について、その契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消したり、消費者の利益を不当に害するような契約の条項の全部又は一部を無効としたりしています。
この消費者契約の一方の当事者である「消費者」とは、まず、「個人」をいいます。法人というのは、個人と異なり、反復継続して何らかの活動をしているので、構造的に事業者との格差はないからです。
また、個人でも事業者であれば、消費者とはいえません。カッコ書きの「事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く」というのはそれを意味します。
ここで「事業」というのは、目的の営利・非営利は問いません。したがって、慈善事業として無償で行われる場合も含みます。公益・非公益も問いません。
「事業のために」契約の当事者となるというのは、事業の遂行そのものでなくても、事業の遂行に必要な行為も含みます。したがって、工務店が会計管理のためにパソコンを購入する行為は、事業の遂行といえます。
なお、事業を行っている個人でも、事業遂行に関係しない個人的な契約を締結する場合は「消費者」となります。
たとえば、工務店の経営者が家族のインターネットのためにパソコンを購入する行為は「消費者」として契約を締結する場合といえます。
2.事業者(第2項)
次は、消費者契約の他方の当事者である「事業者」の定義です。
「事業者」とは、①「法人その他の団体」及び②「事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人」になります。
これらの事業者は反復継続的な活動が予定されているので、構造的に消費者との契約に関して、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差があると考えられるからです。
なお、②の個人は「事業として又は事業のために」という限定がありますが、①の法人その他の団体については、そのような限定がなく、すべて「事業者」となっています。
法人については、その目的が営利か非営利かは問題とならないとされているので、株式会社等の営利法人だけでなく、特定非営利活動促進法(NPO法)に基づく非営利的なNPO法人、民法に基づく公益法人や各種の協同組合法に基づく農業協同組合、生活協同組合、宗教法人、医療法人、労働組合、学校法人も法人となり、消費者契約法の「事業者」にあたります。また、私法人だけでなく国や地方公共団体等の公法人も契約当事者となる場合には事業者となり得ます。
この点について、賃貸借契約の賃貸人は事業者になるか、という問題があります。賃貸人が法人であれば問題なく事業者です。賃貸人が個人でもアパート経営を行っていれば、反復継続性があり事業者となります。それだけでなく、個人が下宿屋をしたり、1軒だけ借家を持っている場合でも、賃貸を繰り返すことについて反復継続性が認められ、事業者となります。
3.消費者契約(第3項)
本法において消費者契約とは、消費者と事業者との間で締結される契約と規定されており、消費者と事業者の間で締結される契約であれば、すべて消費者契約となり、業種による適用除外は認められません。唯一の適用除外は労働契約のみです(第48条)。
なお、不動産の取引で媒介業者が事業者であったとしても、売買契約等の契約当事者が消費者同士であれば本法は適用されません。