借地借家法8条(借地契約の更新後の建物の滅失による解約等)
【解説】
前条は、「最初の」存続期間中に建物が滅失した場合の話です。次は、借地契約の「更新後に」建物が滅失した場合はどうするかです。
これは、最初の借地権存続期間中の建物滅失とは状況が異なります。
借地契約の更新後は、少なくとも30年はその建物は存在していたのであり、借地権者としては、ある程度建物を所有した目的を達していることになります。このような場合にまで、延長、延長…となれば、地主は困ってしまいます。
したがって、更新後の建物滅失の場合は、基本的に借地契約は終了する方向で話は進みます。
つまり、契約の更新の後に建物の滅失があった場合においては、「借地権者」は、地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる、ということになります。
これは、意味は分かりますよね。30年の借地契約が更新され、20年の最初の更新期間がやってきたとします。更新が始まって、10年後(当初からいうと40年後)に建物が滅失したとします。これは理屈でいうと、あと10年間は借地権者は、地代を払わないといけません。更新期間はあと10年残っているわけですから。
しかし、建物も40年経ってそれなりに古くなるまで使って、借地権者としては、ある程度満足ということになる場合も多いかと思います。その後建物を建てるつもりもないのに、あと10年間地代を払い続けるというのも負担です。したがって、借地権者側から「地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れ」ができるとした規定です。
逆に、地主側からも「地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れ」ができるとする規定もあります。
「借地権者が借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、借地権設定者は、地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。」
これは、当初の存続期間中に建物が滅失した場合に、地主の承諾なく建物を再築することができ、当初の約定の期間は、解約されることはないとされているのと対照的です。地主の承諾なく建物を再築すれば、即解約できるという規定です。
そして、この地主の承諾について、最初の存続期間中は、借地権者の再築する旨の通知に対して異議を述べなければ、「承諾したものとみなす」という規定がありましたが、更新後の建物滅失については、この「承諾とみなす」規定はありません。
以上の内容を大きくまとめると、最初の存続期間中の建物滅失は、借地権を延長するという方向で話が進むのに対し、更新後の建物滅失は、借地権を消滅させる方向で話が進みます。