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借地借家法7条(建物の再築による借地権の期間の延長)

【解説】

1.当初の存続期間内の建物の再築による借地権の期間の延長

借地権というのは、「建物所有目的」だという話をしました。したがって、借地権者は土地の借地権の設定を受けますと、建物を建てます。

ところが、その建物が滅失したとします。たとえば、火災で焼失した場合だけでなく、借地権者や転借地権者が建物を取り壊したりしたような場合も含めます。

この場合、借地権はどうなるでしょうか?というのがまず問題になります。

この問いには、あまり難しく考えなくても結構です。たとえば、30年の期間で借地権を設定したのなら、借地権者は、30年間は借りる権利があるわけですから、借地権の存続期間中に建物が滅失しても、借地権は、そのまま続きます、というのが答えになります。

しかし、話はこれだけでは終わりません。借地権は、もともと建物所有目的です。建物が滅失すれば、借地権者は建物を再築しようとするはずです。

そこで、次の問題です。借地権者は、この土地に建物を勝手に再築していいでしょうか?これも答えは簡単に考えて下さい。借地権者は、30年間は建物所有目的で借地権を有しているわけですから、建物所有目的で借りて、建物を建ててどこも悪くありません。したがって、借地権者は借地権設定者(地主)の承諾なく、建物を再築することができます。

さて、次にさらに問題が生じます。たとえば、30年の期間で借地権を設定しました。20年後に建物が火災で焼失しました。そこで、借地権者が建物を再築しました。ここまでは、何の法的な問題もありません。

しかし、借地権の存続期間が満了したとき、すなわち30年目ですが、建物が滅失せず当初の建物が存続していた場合は、建物はそれなりに古くなっています。ところが、20年後に再築した建物は、新しい建物が建つので、まだ築後10年です。この点をどうするのかです。

先ほど、借地権の存続期間中に建物が滅失した場合は、地主の承諾なく建物を再築できるといいました。ただ、地主の承諾なく勝手に建物を建てるよりも、地主の承諾があった方がいいに決まっています。

したがって、建物再築の際に地主の承諾があったかどうかで借地借家法は対応を分けています。地主の承諾があった場合は、新しい建物を建てることを地主が承諾しているわけですから、借地権の存続期間を延長させます。

具体的には、借地借家法は以下のように規定しています。借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失があった場合において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造するにつき借地権設定者の承諾がある場合に限り、借地権は、「承諾があった日」又は「建物が築造された日」のいずれか「早い日」から「20年間」存続する。ただし、残存期間がこれより長いとき、又は当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間による。

ここは、「」で囲んだ部分がポイントです。承諾か、建物の築造か早い方から20年、ということです。

ただ、ただし書きにある通り、たとえば5年目で建物が滅失した場合は、残り25年になりますので、こちらの方が長くなります。その場合は、当初の30年の期間、つまり残りは25年で行きます。

また、地主がせっかく新しい建物を建てたんだから、30年また貸してあげましょう、ということなら、再築から30年ということもできます。

なお、この規定は、転借地権が設定されている場合に準用されていますので、転借地権者が地主の承諾を得て、建物を再築した場合も同様です。

それでは、地主の承諾が得られない場合はどうするのか?これは、先ほど説明しましたように、借地権者は建物の再築を強行することができます。そして、地主の承諾がないわけですから、承諾があった場合の存続期間の延長というメリットを享受することはできません。

したがって、この場合当初の30年の存続期間が満了した際に、更新というのが問題になりますが、「この地主の承諾を得ずに建物再築を強行したという点が正当事由の判断のときに借地権者にとってマイナスに働きます。正当事由の判断は総合的な判断なので、更新されるかどうかは、いろいろな事情で判断されますが、この点も正当事由の判断に入ってくるということですね。そして、借地権が更新されなかった場合は、借地権者は建物買取請求をすることができます。

2.みなし承諾

以上で、建物滅失後の再築の話の大枠は終わりですが、今までの話を総合すると、地主の承諾という点が分岐点になります。

したがって、借地権者としては、建物を再築しようとするときに、地主の承諾を取りに行きます。それに対して、地主が返事をしてくれないときに借地権者は困ってしまいます。

そこで、地主が借地権者に対して返事をしない場合の措置が規定されています。「借地権者が借地権設定者に対し残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造する旨を通知した場合において、借地権設定者がその通知を受けた後「2月」以内に異議を述べなかったときは、その建物を築造するにつき借地権設定者の承諾があったものとみなす。」つまり、2ヶ月経って返事がなければ、「承諾があった」ものとみなしてくれます。