民法722条(損害賠償の方法及び過失相殺)

【解説】

過失相殺というのは、債務不履行による損害賠償のときにも出てきました。この債務不履行のときの過失相殺と、不法行為のときの過失相殺は微妙に違いますので、注意が必要です。

Aを加害者、Bを被害者として、BがAに対して不法行為による損害賠償として100万円の治療費を請求しようとしているとします。

しかし、実はこの事故では被害者のBにも過失があって、本来は50万円の治療費程度のケガで済んだものが、Bの過失もあってケガが大きくなり、100万円の治療費になってしまったという場合は、100万円満額の損害賠償請求を認めるのは不当だ、というのが過失相殺です。

不法行為の趣旨は、被害者の救済だけでなく、「損害の公平な分担」というのもありました。

そこで、民法は「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」と規定しています。この条文にはいくつかポイントがあります。

まず、「損害賠償の『額』を定めることができる」となっています。これは、債務不履行のときには「損害賠償の『責任』及びその『額』を定める」となっていました。これは、債務不履行のときの過失相殺は、損害賠償の「責任」自体を免れることができるということで、簡単にいえば、過失相殺の結果、賠償金額「ゼロ」というのも認められるということです。それに対して、不法行為の場合の過失相殺は、いくら過失相殺をしても賠償額「ゼロ」というのは認められません。被害者救済です。

次に、「損害賠償の額を定めることが『できる』」となっています。つまり、被害者に過失があっても、裁判所は必ずしも過失相殺をする必要はなく、過失相殺を行うかどうかは裁判所の裁量に委ねられています。これは、被害者救済という観点から考えれば、分かりやすいでしょう。過失相殺をすれば、損害賠償額が減ってしまいます。この点、債務不履行による損害賠償における過失相殺では、必ず過失相殺しなければならなかったのと異なります。

次に、裁判で被害者に過失があるということが分かった場合には、加害者からの主張がなくても、裁判所は過失相殺を行うことができます。

ところで、「『被害者』に過失があったとき」に過失相殺がなされますが、たとえば幼児が被害者で、被害者自身には過失はないが、その幼児を監督すべき者(典型的には親)に過失がある場合にも過失相殺ができます。これを被害者「側」の過失といいます。

※債務不履行・不法行為の過失相殺の比較