民法714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)

【解説】

1.監督義務者の責任~総論

本条は、未成年者(第712条)や精神上の障害(第713条)を持つ者で、責任を弁識する能力を欠く者(責任無能力者)が加害行為を行った場合には、その監督義務者に監督上の過失があれば、損害賠償請求を負わせようとするものです。

この監督義務者の責任は、被害者に対する直接侵害ではなく、間接侵害に着目し、監督義務者の自己責任を基礎として、過失についての証明責任を転換した規定ととらえられています。つまり、責任無能力者の加害行為があった場合に、監督義務者は自己に過失がなかったことを証明しなければ免責されない、ということになります。

2.監督義務者

本条の監督義務は、危険発生の予見可能性のある状況下での結果回避義務だけでなく、責任無能力者の生活全般について、その身上を監護教育する義務も含みます。したがって、監督義務者の免責の証明は難しいものとなるでしょう。

また、本条の監督義務者は、「責任無能力者を監督する『法定』の義務を負う者」です。

この法定の義務は、未成年者の場合ですと、親権者(第820条)・親権代行者(第833条、867条)・未成年後見人(第857条)・児童福祉施設の長、成年被後見人の場合は、成年後見人(第858条)などです。

3.代理監督者(第2項)

この監督義務者の責任は、「監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者」(代理監督者)も負うことになります。

代理監督者は、たとえば、託児所・幼稚園の保母、小学校の教員、精神病院の医師、少年院の職員などです。

この代理監督者と監督義務者の責任は併存することが可能で、不真正連帯債務となります。

4.本人に責任能力がある場合

本条は、本人が責任無能力者であることを前提にしています。本人に責任能力があれば、本人が責任を負い、本条の適用は無理です。

しかし、本人が責任を負うといっても、十分な賠償の資力を有していなかったり、監督義務者に責任追及するには本人が責任無能力者であることを証明しなければいけませんが、それが難しかったりする場合があります。特に本人が12歳程度以上の未成年者のような場合に問題になります。

このような場合に監督上の過失と損害の間に因果関係があれば、第709条(一般不法行為)により監督者の賠償責任が認められます(最判昭49.3.22)。