民法657条(寄託)

【解説】

寄託契約というのは、物の保管を委託する契約ですが、実際の寄託制度は倉庫業などで利用されており、それらは商法の規定の適用を受けるので、民法の寄託の意義は少なくなっています。

民法によると、上記の条文を見てもらえば分かりますが、有償か無償かは特に規定されていないので、有償・無償を問わないものと考えられています。

また、「ある物を受け取ることによって、その効力を生ずる」と規定されていますので、要物契約です。

次に、寄託者(物を預けた方)Aが、受寄者(物を受け取った方)Bに物を引渡した後に、寄託者Aが寄託物の所有権を第三者(譲受人C)に譲渡した場合、譲受人Cは自分の所有権を受寄者に対抗するには引渡し(動産物権変動の対抗要件)を受けている必要があるのか、という問題があります。

判例は、「寄託者は、いつでもその返還を請求することができる」(第662条)と規定されているので、受寄者は寄託者にその返還に応じる義務があることを理由に、引渡しがなくても譲受人は受寄者に所有権の取得を対抗することができるとしているようです(最判昭29.8.31)。

しかし、受寄者は寄託者(譲渡人)に返還すべきか、譲受人に返還すべきかについて利害関係を有するので、通説は譲受人は引渡しがなければ、所有権の取得を受寄者に対抗できないと解しています。