民法550条(書面によらない贈与の撤回)

【解説】

贈与契約は無償であるということから、いくつか特殊な扱いがなされます。

まず、「書面によらない贈与の撤回」という問題があります。

契約というのは、当事者の口頭の合意、つまり口約束だけでも成立します。この贈与契約でもそうです。そこで、気軽に口約束で贈与すると約束してしまったような場合、このような書面も作成していないような贈与契約の撤回を認めたものです。

これは裏を返せば、「書面による贈与」は一方的な意思表示では撤回できないということを意味しています。ちなみに、ここの「書面」というのは、特に形式というのは決まっていないので、どんな形の書面でもかまいません。

また、この規定の但書は特に要注意です。「ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。」という部分です。これは、書面によらない贈与でも、履行が終わった部分については、撤回できないという意味です。

その理由は、いくら書面によらない贈与は撤回できるとしても、軽率な贈与の撤回を認めるというこの規定の趣旨から考えて、現実に履行の終わった部分についてまで、元に戻せというのは、行き過ぎだからです。

問題は、具体的にどこまで「履行」すれば、「履行が終わった」といえるかです。判例によれば、たとえば不動産の場合、「登記又は引渡」が終了すれば、履行が終わった、すなわち贈与者は撤回できない、としています。「又は」ということですから、登記か引渡しかどちらか一方でも行われれば、履行が終わったことになります。