民法528条(申込みに変更を加えた承諾)

【解説】

契約の承諾というのは、「イエス」か「ノー」でないといけません。

「イエス」で初めて両当事者の意思が合致したということで、契約が成立します。

つまり、申込に対して条件を付したり、変更を加えて承諾したとしても承諾としては無効です。

しかし、実際の取引においては、両当事者がいろいろ契約の条件を出し合い、交渉していくものでしょう。

そうであるならば、条件を付したり、変更を加えた承諾というのは、新たな申込とみなした方が取引の実際に合致します。

そこで本条は、承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなしています。

この規定は、変更を加えた承諾等に対しては、「申込の拒絶」+「新たな申込」とみなします。

したがって、最初ある土地を「1億円で売却したい」というAからBへの申込に対して、Bが「8,000万円でなら買います」という変更を加えた承諾をした場合、この段階で「1億円での売却」という申込に対しては拒絶とみなされるとともに、「8,000万円での購入」という新たな申込をしたことになります。

そして、「8,000万円での購入」という新たな申込に対して、相手方から全然返事がなかったため、Bがあわててやっぱり「1億円でも購入します」という「承諾」をすることができるかというと、この承諾だけでは契約は成立しません。

というのは、最初の1億円での売却の申込に対して8,000万円での購入を申し出た時点で、「1億円の売却」という申込は拒絶されており、申込の効力が失われているからです。

ところで、民法523条で遅延した承諾は新たな申込とみなすことが「できる」という規定と、本条の変更を加えた承諾は新たな申込と「みなす」という規定があり、違いがあります。

この違いですが、遅延した承諾は、たとえば極端に1年後とか2年後に承諾が遅延して到達した場合でも想定して、そのような承諾を自動的に新たな申込と「みなす」ということになりますと、申込者の方では迷惑です。

それに対して、変更を加えた承諾は、先ほど述べましたように、商談ではいろいろ駆け引きや、やり取りがあるので、お互いの変更を加えた承諾は新たな承諾と「みなす」ということで、やり取りをしていくと考えます。

私は、そのようにしてこの違いを覚えています。