民法398条の12(根抵当権の譲渡)

【解説】

1.根抵当権の譲渡

普通抵当権は、被担保債権の担保のために抵当権があったので、付従性というのがありました。

これに対して、根抵当権の場合は、被担保債権は入れ替わるものであって、個々の債権との付従性から解放されています。

このように、根抵当権というのは、被担保債権は入れ替わり、極端には被担保債権が一時的にゼロになっても存続します。

このように普通抵当権というのは、被担保債権に依存して存在しているものであるのに対して、根抵当権は、個々の債権に依存せず存続することができます。これは、根抵当権は、被担保債権から切り離された独立した極度額という独立した「枠」の支配権となっているということです。

これは、従来の普通抵当権とは異なった考え方であり、根抵当権の処分については、従来の抵当権の処分と異なる方法が用いられます。

具体的には、
①根抵当権の全部譲渡(本条1項)
②根抵当権の分割譲渡(本条2項)
③根抵当権の一部譲渡(次条)

2.根抵当権の全部譲渡

根抵当権の全部譲渡というのは、根抵当権という「枠」の全部を第三者に譲り渡すことです。

この全部譲渡を行うには、「元本の確定前」であることと、「根抵当権設定者の承諾を得る」ことが必要です。

A=極度額1,000万円の根抵当権者
B=被担保債権の債務者、根抵当権設定者

この極度額1,000万円の根抵当権の全部をCに譲り渡す場合です。

この全部譲渡によって譲渡人Aは全く根抵当権を失うことになります。

逆に、Cは極度額1,000万円の根抵当権を自由に利用することができます。

Cは、この全部譲渡を受けたときに、AB間で定めていた被担保債権の範囲(たとえば、Bに対する手形割引による債権)をそのまま利用してもいいんですが、通常はこの被担保債権の範囲は変更することが多いでしょう。

被担保債権の範囲の変更というのは、元本確定前に根抵当権設定者の承諾を得て行うという点では、全部譲渡の場合と同じですから、全部譲渡を受けるとともに被担保債権の範囲を変更するわけです。

3.根抵当権の分割譲渡

根抵当権の分割譲渡とは、根抵当権者が、その根抵当権を二個の根抵当権に分割して、その一方を譲り渡すことです。

A=極度額1,000万円の根抵当権者
B=被担保債権の債務者、根抵当権設定者

上記の場合に、Aが根抵当権を極度額600万円と極度額400万円に分割して、極度額400万円の根抵当権をCに対して譲渡するような場合です。

この場合、一つの根抵当権を分割するわけですから、両者は同順位となります。

なお、本条2項但書と3項の「その根抵当権を目的とする権利(を有する者)」というのは、分かりにくいかもしれませんが、転根抵当権者や差押債権者のことです。

たとえば、分割譲渡される前の根抵当権について転根抵当権者がいるときに、当該根抵当権が分割譲渡された場合、両方の根抵当権に転根抵当権が存続することになると、非常に難しい問題が生じます。

そこで、「その根抵当権を目的とする権利は、譲り渡した根抵当権について消滅する」(第2項但書)、つまり転根抵当権は、分割譲渡された分の根抵当権について、転根抵当権は消滅します。

したがって、転根抵当権者は不利益を受けますので、「(分割)譲渡をするには、その根抵当権を目的とする権利を有する者の承諾を得なければならない」(第3項)ということになります。