民法373条(抵当権の順位)

【解説】

1.抵当権の順位

本条は、説明がいらないくらい明確な規定で、同一の不動産について数個の抵当権が設定されているときは、抵当権の順位は登記の前後によって決まるということで、民法177条がある以上当然の話だと思います。

この抵当権の順位というのは、具体的には優先弁済の順位ということで、先順位の抵当権が優先して弁済を受け、後順位の抵当権者は、先順位の抵当権者が優先弁済権を受けた「残余」についてのみ弁済を受けることができるということです。

したがって、後順位抵当権者は必ずしも被担保債権全額の弁済を受けることができるとは限りません(もっとも一番抵当権者でも、抵当不動産の競売金額が少なければ全額の弁済を受けることができない場合もありますが…)。

なお、同順位の抵当権者間では、被担保債権の額に比例して弁済を受けることができます。

これで十分に意味は分かると思いますが、念のため具体例で説明しますと、ある不動産について、債権者A~Dのために抵当権が設定されていたとします。

A…第1順位、被担保債権額7,000万円
B…第2順位、被担保債権額4,000万円
C…第2順位(Bと同順位)、被担保債権額2,000万円
D…第3順位、被担保債権額3,000万円

この不動産について競売がなされ、競売価格が1億円だったとします。A~Dが弁済を受けることができる金額を考えてみて下さい。

Aは、第1順位ですから、競売代金のうちから7,000万円満額の弁済を受けることができます。

BとCは第2順位で同順位ですが、二人の被担保債権の額は合計6,000万円で、競売代金の残額の3,000万円を超えています。そこで、債権額で按分した額について優先弁済を受けることができます。

つまり、競売代金の残額3,000万円を、B:C=4,000万円:2,000万円 → B:C=2:1で分けることになりますので、Bは2,000万円、Cは1,000万円の弁済を受けることができます。

したがって、Dが受けることができる金額は、ゼロになります。

2.無効登記の流用

抵当権の順位に関して、「無効登記の流用」という問題があります。

AがB所有不動産に対して1番抵当権を有していましたが、このAの1番抵当権が弁済でも何でもいいんですが、何らかの理由で消滅したとします。

ところが、このAの1番抵当権の登記が抹消されない間に、さらにAがこの不動産に対して抵当権を設定した場合に、前の1番抵当権の登記を後の抵当権の設定の際に流用できるのか?という問題です。

この問題については、肯定する説も否定する説もあり、判例も様々なものがあるようです。

流用を肯定する説は、不動産登記は、物権変動の過程を忠実に反映していなくても、現在の権利関係を公示していればよいという考えがあります。

逆に、流用を否定する説は、後順位抵当権者や第三取得者などの正当な利害関係を有する第三者の利益を保護を考慮します。

つまり、後順位抵当権者は、順位上昇の原則により、自分の順位が上がったと思いますし、第三取得者は抵当権の負担がなくなったと思うわけです。

そこで、現在の通説は、この両方の要請を考慮して、制限的に登記の流用を肯定します。

つまり、第三者が存在しない場合は、当事者間で登記の流用を肯定してもよい。

そして、第三者が存在する場合には、流用前に登場した第三者に対しては流用登記の効力を認めることができないと考えます。先ほど指摘した後順位抵当権者や第三取得者の利益を害するからです。

逆に、流用後に登場した第三者に対しては流用登記の効力を認めます。この場合、第三者は流用された登記を前提に利害関係に入っているからです。