民法370条(抵当権の効力の及ぶ範囲)

【解説】

1.総論

次は、抵当権の効力の及ぶ目的物の範囲という話をしましょう。

分かりにくい表現ですが、たとえば建物に抵当権を設定したとします。このときに抵当権の効力は、どこまで及びますか?という問題です。

ちなみに、「抵当権の効力が及ぶ」というのは、抵当権を実行して競売にかけて、お金に変えることができるという意味です。抵当権が、抵当目的物を競売して、債権の回収を図るものである以上、当然の話です。

そして、建物に抵当権を設定しているのだから、建物に抵当権の効力が及ぶに決まっているではないか、と思われるでしょう。それはその通りです。建物に抵当権の効力が及ぶのは当然です。

しかし、建物にはいろいろなものが付属しています。その意味で、その抵当権の効力が及ぶ「建物」というのは、どの範囲までなのかというのが問題になるのです。

2.土地・建物

まず、土地に抵当権を設定した場合、その抵当権の効力は建物に及びません。

これは、当然の話ですが、日本では土地と建物は別個の不動産です。土地に抵当権を設定したからといって、その抵当権の効力が建物に及ぶことはありません。

よく、抵当権を設定するときに、土地と建物を一緒に抵当にいれる場合がありますが、土地と建物は別の不動産ですので、このような場合は、一つの債権の担保として土地と建物の2つの不動産を抵当に入れたことになります。このような抵当権を共同抵当といいます。

3.附加一体物・従物

次に付加一体物というのが問題になります。この付加一体物とは何かということですが、民法は「抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産に付加して一体となっている物に及ぶ。」と規定しています。

この「不動産に付加して一体となっている物」というのが付加一体物です。この付加一体物というものに、抵当権の効力は及ぶとしているわけです。

そして、この付加一体物という概念は、この抵当権のところでしか出てきませんので、抵当権の効力が及ぶものとして、経済的に抵当目的物と一体となったものという程度で考えておけばいいです。

これだけだと、何のことか分かりませんが、この付加一体物と似たものに「従物」というのがあります。

この付加一体物の例として増築部分、従物の例として母屋と独立した湯殿・物置というのが例としては分かりやすいと思います。

付加一体物というのは、抵当目的物と「一体」となったものと考えて下さい。

それに対して、「従物」というのは、一応独立した物です。しかし、母屋と独立した物置というのは、物置自体は、離れて建っているかもしれませんが、やっぱり母屋と一緒に取引した方が経済的には価値があります。このように一応独立しているが、主物(今の例では母屋)と一緒に扱った方が経済的な価値のある物を指します。

まとめると、付加一体物と従物は独立性の違いです。付加一体物の例である増築部分というのは、建物から切り離すことはできません。

さて、この付加一体物と従物ですが、付加一体物は先ほどの民法の規定にあるように抵当権の効力は、抵当権設定の前に付加されたものか、設定後に付加されたものであるかどうかを問わず及びます。「抵当権設定の前後を問わず」というのは、抵当権を設定したときに、すでに増築された場合は当然のことながら、抵当権を設定した後に増築された場合でも、増築部分は切り離せないわけですから、増築部分にも抵当権の効力が及び、増築部分も含めて競売にかけて、その競売代金から債権の回収を図ることができます。

次に、従物というのは、抵当権の設定時に存在していた従物に対して抵当権の効力は及びます。これが判例の考え方です。そして、抵当権設定後の従物に関しては、判例はどうもはっきりしないようです。ここが付加一体物と従物の違い、つまり独立性があるかどうかの違いなんですね。付加一体物は、抵当権設定後に付加されたものにも問題なく抵当権の効力が及びます。

4.従たる権利

抵当権の効力の及ぶ範囲として、「従たる権利」というのを説明していきます。

これは、たとえば借地上の建物に抵当権を設定したとします。つまり、賃借権を設定して土地を借りて、その借りた土地の上に建物を建てた場合、その建物の所有者は借地人ですから、借地人が借地上の建物に抵当権を設定したとします。このこと自体は何の問題もないですよ。借地上とはいえ、自分の所有している建物に抵当権を設定して借金しても何も悪くありません。

問題なのは、その建物が競売された場合です。この場合に、抵当権の効力が建物にしか及ばないとすると、競落人(競買人)は、とんでもない目にあいます。

建物というのは空中に浮いているわけではありませんので、必ず土地を利用する権利というものが必要です。これは今後も絶対に必要な知識ですので確認しておいて下さい。建物の所有権というのは、必ず土地の利用権とセットでないと、建物は存続できません。

ということは、抵当権の効力が建物にしか及ばないとすると、建物を競落した者は、建物の所有権しか取得できず、土地の利用権がありません。

ということは、土地の所有者から「出て行け!」と言われると出ていかないといけません。これは、おかしいというのか、このような建物を競売で競落する人はいないので、担保としての目的を達することができません。

建物に抵当権を設定するということは、「従たる権利」として、土地の利用権(本事例では土地賃借権)にも抵当権の効力が及んでいると考えざるを得ないということです。

結局、この場合、建物が競売されますと、競落人は建物の所有権とともに、賃借権の譲渡も受けることになりますので、基本的には土地の賃貸人の承諾が必要となります。

賃貸人が承諾してくれない場合は、賃貸人の承諾に代わる裁判所の許可(借地借家法20条)が必要となり、これらを得ることができない場合は、競落人は土地の賃貸人に対して建物買取請求権(借地借家法14条)を行使することになります。

5.果実

第371条参照