民法356条(不動産質権者による使用及び収益)

【解説】

質権者というのは、原則として質権の目的物を使用・収益することはできません(第350条で留置権に関する第298条2項を準用)。 →第350条参照

しかし、不動産質権の場合にこの原則を貫くと、質権者は目的物の使用収益ができないし、質権設定者も目的物の占有を取り上げられているので使用収益できないことになります。つまり、誰も使用収益できないことになります。

目的物が動産のようなものであれば、この状態も我慢できるかもしれませんが、不動産の場合には、これは社会経済上不都合だということになります。平たく言えば、不動産というのは、「遊ばせるのはあまりにもったいない」ということです。

そこで、不動産質権については、質権者に使用収益権を認めたのが本条です。

収益権もありますので、質権の目的物を他人に賃貸して賃料を受領することもできます。

また、すでに他人に賃貸している物件(いわゆる収益物件など)について質権を設定する場合は、指図による占有移転の方法により占有を移転し、質権設定者が賃借人に質入れした旨を通知すれば、質権者は賃借人に対して以後賃料を請求することができます(大判昭9.6.2)。