民法210条(公道に至るための他の土地の通行権)

【解説】

1.公道に至るための他の土地の通行権(隣地通行権)

この隣地通行というのは、いわゆる袋地、つまり他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に出るために、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる、という規定です。これは河川や水路などを通らなければ公道に出ることができないときも同じです。

この「公道に至るための他の土地の通行権」というのは、以前は囲繞地(いにょうち)通行権と言っていたものです。「囲繞地」という言葉は、読みにくく、分かりにくいので最近の民法の口語化の際に本条のように書き換えられましたが、内容的には変わっていません。

ちなみに、「囲繞」というのは、取り囲むという意味なので、「囲繞地」というのは、周りを取り囲んでいる土地という意味です。

2.隣地通行権~所有者の登記の有無

袋地の所有権を譲り受けた者がいたとします。ところが、まだ登記をしていません。この未登記の袋地の新所有者は、周りの土地の所有者に対して隣地通行権を主張することができるでしょうか?

この問題は難しいんではないですか?もともと登記がないと所有権を主張できないというのは、どういう場合でしたでしょうか。

典型的には、不動産の二重譲渡のような場合でしたよね。あれは第一譲受人と第二譲受人が、一つの不動産をめぐって相争っていたような場合です。両立しない権利をお互いが主張しているので、登記で決着をつけようとしたんですよね。

ところがこの事例では、そのようないわゆる対抗関係にありません。

普通に、周りの人に自分の所有権を主張して、周りの土地を通して下さいと言っているわけです。周りの土地の所有者と土地の所有権を相争っているわけではありません。

したがって、袋地の所有者は、登記なくその土地を囲んでいる他の土地を通行することができます(最判昭47.4.14)。