民法199条(占有保全の訴え)

【解説】

本条は、占有者がその占有を妨害される「おそれ」があるときに、事前にその妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる旨を規定している。

これは、その占有の妨害が行われていないことが前提です。実際に妨害があれば、占有保持の訴えか占有回収の訴えを行うことになります。

この「占有の妨害のおそれ」というのは、具体的には隣地の樹木が倒れそうになっていたり、隣地の崖が大雨のためにゆるんでいるような場合です。このような場合に、現実に樹木が倒れたり、崖が崩れるまでは何もできないというのではおかしな話になります。

「妨害の予防」の措置というのは、具体的には上記の例で言うと、樹木に支柱を施したり、崖崩れの予防工事などを行います。

予防措置の費用負担は、占有の妨害の危険を生じさせている者になります。

また、損害賠償については、現実にはまだ損害は生じていないので、損害賠償の「担保」の請求になります。

もう一点気を付けて欲しいのは、「妨害の予防『又は』損害賠償の担保の請求」となっており、両者は選択的になっていることです。両方を同時に請求することはできません。

これは、占有保持の訴えが「妨害の停止『及び』損害の賠償を請求」、占有回収の訴えが「物の返還『及び』損害の賠償を請求」となっており、両方を同時に請求できるのと異なっています。

これは、占有保全の訴えは、まだ現実には占有の妨害は発生しておらず、妨害の予防を講じれば、占有の妨害は生じず損害賠償責任をする必要はなくなるので、両方を同時に認める必要はないからです。