民法186条(占有の態様等に関する推定)

【解説】

1.占有の態様に関する推定(第1項)

この規定は、占有者は、瑕疵のない自主占有をしていることを推定しています。

つまり、「所有の意思」「善意」「平穏」「公然」を推定しています。

このように民法が、占有者の占有が瑕疵のない自主占有であることを推定したのは、もともと占有制度が、物の支配という現状の事実状態を一応正しいものとして保護しておかなければ社会の秩序が保てないということから認められている以上、占有が瑕疵のない正当なものであると一応推定するのが、先ほどの占有制度の趣旨に合致するからです。 →民法180条「占有権とは」参照

ここで気を付けておいて欲しいのは、「善意」は推定されているが、「無過失」までは推定されていないという点です。

たとえば、AB間の売買契約が無効であるという場合、売買の目的物を占有している買主Bは、その売買契約が有効であると信じていたこと(善意)までは推定されるが、無過失までは推定されないので、買主Bが10年の時効取得(162条2項)を主張するには、過失の部分はB自身が立証する必要があります。

2.占有の継続に関する推定(第2項)

第2項は、前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定しています。

たとえば、取得時効の主張をするときには、時効期間中はずっと占有している必要があります。占有の喪失は取得時効の中断事由です(164条)。

しかし、この占有期間中ずっと占有していたという事実を証明するのは非常に難しいので、占有の開始時点と現在の占有を証明すれば、途中も占有が継続していたものと推定してくれるわけです。

たとえば、祖父が占有を開始した物について、父の代を経て、現在の相続人が占有している場合は、祖父が占有を開始して、現在の相続人が占有している事実だけを証明すればいいわけです。