民法113条(無権代理)

【解説】

代理人の行為の効果が本人に帰属するためには、

  1. 代理人が有効に契約等をしたこと
  2. 代理人が顕名をしたこと
  3. 代理人に代理権があること

の3つの要件が必要です。

この中の3.の代理人に「代理権」がなかった場合が「無権代理」です。

「権」限の「無」い代理という意味で、「無権代理」というわけです。

それでは、この代理権がない場合は、どうなるのか?この質問に単純に答えるのは、簡単です。

代理人の代理権というのは、代理人の行為の効果が本人に帰属するための要件ですから、代理権がなければ、代理人の行為の効果は本人に帰属しない。これが大原則です。

それでは、なぜ代理権がなければ、代理人の行為の効果は本人に帰属しないのか?この質問に対する答えも簡単です。

代理権がないのに、代理人(この場合、代理人に代理権がないので、「無権代理人」といいます。以後、このように表記します。)が代理行為を行うということは、無権代理人が本人から頼まれもしないのに、勝手に代理行為を行ったということです。このような代理行為を認めていたのでは、本人の利益を害します。つまり、本人の利益保護という観点から、無権代理行為の効果は本人に帰属しないわけです。

裏を返して言えば、無権代理行為が行われたが、本人が後からそれを認めることはかまわないということになります。また、相手方も本人に効果が帰属すると信じて取引に入っている以上、取引の安全も害しません。

これを無権代理行為の「追認」といいます。

たとえば、Aが友人のBに対して、「転勤が決まったので、今の自宅を売りたい。」という話をしたとします。このときは、AはBに代理権は与えていなかったとします。その話を聞いて、BがAの自宅を買いたいという人を見つけて契約したとします。その話を後でAが聞いて、条件も値段もいいので、この契約で売りたいと思ったとしますよね。

このときに、この契約の効果は絶対にAに帰属しないとする必要もないわけです。A本人が、望んでいるわけですから。このように、無権代理行為というのは、原則として本人に効果が帰属しないが、本人は追認することができます。これを本人の「追認権」という表現もします。

他方、やっぱりBが勝手に決めた契約はイヤだとします。そのときは、本人は「追認拒絶権」を行使することもできます。本人が追認拒絶権を行使しますと、契約の効果は本人に帰属しません。

ちなみに、本人が放っておいても、効果が本人に帰属しないのなら、追認拒絶権というのは意味がないと思われるかもしれません。

この追認拒絶権は、本人が追認しない、つまり本人に効果が帰属しないということを明確にするという意味があります。本人が、追認しないで放っておくと、基本的には本人に効果が帰属しないが、いつ追認がなされて、本人に効果が帰属するか分からないというふうに、不安定な状況になります。追認拒絶権は、それに終止符を打って、効果不帰属を明確にするという意味があるわけです。

ところで、この追認又は追認拒絶は、誰に対して行うのか。普通に考えれば、相手方に対して、追認したり追認拒絶したりしそうに思いますが、これは無権代理人に対して行っても、相手方に対して行っても、どちらでもかまいません。

ただ、無権代理人に対して追認したり追認拒絶したりした場合には、相手方は追認や追認拒絶の事実を知ることができない可能性がありますよね。

そこで、民法は、追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない、と定めています(第2項)。ただし、相手方が追認とか追認拒絶の事実を知ったときは、これを主張できます。相手方が知っている以上当たり前ですよね。

最後に無権代理人についてまとめておきます。