民法93条(心裡留保)

【解説】

1.当事者間の効力

「心裡留保」とは、民法の表現で言うと、「表意者がその真意ではないことを知ってした」意思表示のことです。

表意者が自分で真意でないことを知って意思表示をしているわけですから、分かりやすい例で言えば、冗談で意思表示をしたような場合です。

これは、本人の真意ではないにしても、一応本人は意思表示をしているわけですから、原則として、この意思表示は有効です。

ただ、本人はその気がないわけですから、相手方も本人が真意ではないということを知っていた(悪意)か、過失があって相手が真意でないということに気が付かなかったような場合にまで、無理に契約を有効とする必要はありません。本人も冗談で言ったし、相手方もこれは冗談だと分かっているような場合ですよね。

このような場合、つまり相手方が悪意か、善意でも過失があった場合は、契約は例外的に「無効」となります。

2.第三者との関係

そこで、この心裡留保による契約が例外的に無効になった場合は、A→B→Cと不動産が譲渡された場合に、ACの優劣はどうなるかということが問題になります。

これはAの落ち度の具合で考えましょう。心裡留保による意思表示は、本人のうかつな発言によって契約をしたわけですから、Aに落ち度ありです。

したがって、心裡留保による無効は、善意の第三者に対抗できません。

それでは、ここでちょっと問題を出してみましょう。

A→B→Cと不動産が譲渡され、Aの意思表示が心裡留保によるものであったとしましょう。Bが善意無過失か悪意(又は過失)か、Cが善意か悪意か、で下図のように4通り考えられます。この場合、ACの優劣はどうなりますでしょうか?

①と②は、Cが善意であろうと、悪意であろうと、Bが善意無過失である以上、AB間の契約は有効です。したがって、不動産はCのものになります。②がひっかかりやすかったでしょうか。

③と④は、Bが悪意なので、AB間の契約は無効となりますが、③のCが善意であれば、不動産はCのものとなります。