※この記事は一般的な条文解説で、宅建等の資格試験の範囲を超えた内容も含みます。当サイトの記事が読みやすいと感じた方は、当サイトと資格試験向け教材の関係をご覧下さい。

マンション管理適正化法73条(契約の成立時の書面の交付)

【解説】

1.契約成立時の書面

この契約成立時の書面というのは、簡単にいえばいわゆる「契約書」のことです。正確に言うと、契約成立時の書面というのは、本条や施行規則に規定された一定の事項が記載されていないと、その要件を満たさないので、契約成立時の書面というのは、マンション管理適正化法73条によって要求されている書面としか言いようがないんですが、普通にいわれる契約書と考えていいかと思います。

逆に言うと、管理の委託契約を締結し、その契約書を作成した場合に、本条(又は施行規則)に規定された事項を記載し、管理業務主任者の記名押印をしておけば、この契約書をもって「契約成立時の書面」とすることができます。

もともと、管理の委託契約は、諾成契約であり、当事者の意思表示の合致があれば成立するものですが、マンションの管理事務は、極めて多様であり、かつ、広範囲に及ぶので、契約内容を明確にするための一定の事項を記載した書面の作成を要求しているわけです。

2.交付の相手方

この契約成立時の書面を交付する相手方は、「管理組合の管理者等(当該マンション管理業者が当該管理組合の管理者等である場合又は当該管理組合に管理者等が置かれていない場合にあっては、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等全員)」ということになります。

つまり、管理者等が選任されている場合は、管理者等に交付します。

管理者等が選任されていない場合や、マンション管理業者が当該管理組合の管理者等である場合は、区分所有者等全員に交付しなければいけません。マンション管理業者が管理者等である場合は、書面を交付する者と、交付を受ける者が同一になるため、利益相反的状況が生じるので、それを避けるためです。

図にまとめてみましょう。

また、この契約成立時の書面については、通達がありますので、それを見ておいて下さい。内容的には、それほど難しいものではないと思います。

国総動第309号、平成14年2月28日

第二「契約成立時の書面の交付」について
1 法第73条に規定する「契約成立時の書面の交付」については、当初契約と同様に更新契約の際にも行う必要があること。
2 更新契約の際には、当初契約又は前回更新契約(以下「当初契約等」という。)から変更した部分以外の部分について当初契約等において交付した書面の当該部分のコピーを貼り付けることにより、当該更新契約において交付すべき契約成立時の書面としても差し支えないこと。
3 法第73条第2項に規定する「記名押印」については、第一2(2)ロ)及びハ)と同様の解釈によるものとし、当該マンション管理業者が当該管理組合の管理者等である場合又は当該管理組合に管理者等が置かれていない場合において区分所有者等に対して交付すべき書面については、その全てが原本であるべきものであるが、区分所有者等の数が膨大である等業務に支障をきたす場合にあっては、区分所有者等のうちいずれか2名に対して原本を交付し、他の区分所有者等に対しては原本のコピーをもって交付すべき書面に代えることができるものであること。また、これらの場合においては、原本を交付した者の氏名を区分所有者等に交付すべき書面に明記すること。

3.契約成立時の書面の記載事項

契約成立時の書面の記載事項は、本条第1号~第8号、施行規則85条に規定されています。上記の条文に内容が書いてあるので、それを確認してもらえば結構ですが、ここでは「重要事項の説明書」と「契約成立時の書面」の記載事項の比較の一覧表を掲載しておきましょう。契約成立時の書面については、必要的記載事項(必ず記載しなければならない事項)と、任意的記載事項(定めがあれば、必ず記載しなければならない事項)の二つがありますので、「必」と「任」でそれを示しています。