マンション管理適正化法72条(重要事項の説明等)

【解説】

1.重要事項の説明

重要事項の説明というのは、マンション管理業者が管理組合に対して、管理受託契約を締結する前に、管理業務の重要な事項について説明することによって、契約内容を十分に理解して契約できるようにするものです。

もともと、管理受託契約は範囲が極めて多様かつ広範囲に及ぶので、管理業務の内容が不明確であったり、契約の解除に制限が設けられていたりして、管理組合に不利な内容の契約があり、トラブルが多く発生していました。また、管理受託契約は継続的な契約で、一旦契約を締結すれば、契約の見直しは困難なことも多くなります。

そこで、管理受託契約の締結前に重要事項の説明を必要としたわけです。

この重要事項の説明は、「マンション管理業者」が、管理受託契約を締結しようとするときは、「あらかじめ」、「説明会」を開催し、当該管理組合を構成するマンションの「区分所有者等及び当該管理組合の管理者等」に対し、「管理業務主任者」をして、「重要事項」について説明をさせなければならない、ということになります。カギカッコで囲んだ部分がポイントです。

(1) 説明義務者

まず、重要事項の説明が義務付けられているのは、「マンション管理業者」です。管理業務主任者に義務付けているわけではありません。あくまで管理業務主任者は、「説明者」ということになります。

したがって、重要事項の説明というのは、「マンション管理業者が管理業務主任者を使って説明する」ものということになります。

(2) 時期

そして、重要事項の説明は、「あらかじめ」、つまり契約前に行う必要があります。上記の趣旨からいうと当然です。

気を付けて欲しいのは、標準管理規約48条14号で「組合管理部分に関する管理委託契約の締結」というのが総会の決議事項とされているので、管理組合の総会の決議の前に、この重要事項の説明を行う必要があるということです。

(3) 書面の交付

そして、「マンション管理業者は、当該説明会の日の1週間前までに、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等及び当該管理組合の管理者等の全員に対し、重要事項並びに説明会の日時及び場所を記載した書面を交付しなければならない。」というふうに、「1週間前」までに書面の交付が必要です。

この書面の交付は、専有部分が共有に属するときは共有者の1人に、区分所有者が書面の交付を受けるべき場所を通知しているときはその場所に、通知していないときはその専有部分に宛てて、重要事項説明書を交付すれば足ります。

また、一般の意思表示と同様、重要事項説明書の交付時期は,説明会の1週間前までに「到達」するようにするのが望ましいと考えられます。

(4) 説明会

そして、重要事項の説明は、説明会を開いて行わなければいけません。説明会の開催が要求されているのは、マンションの不適切な管理による不利益は、共用部分等の共有者である区分所有者が被ることになるからです。

(4) 説明の相手方

このように説明会が要求されているので、説明の相手方は、区分所有者等になりますが、管理組合の管理者等に対しても説明する必要があります。したがって、管理者等がいる場合でも、管理者等だけでなく、区分所有者等に対しても説明する必要があります。

この説明会については、施行規則83条に規定があり、「できる限り説明会に参加する者の参集の便を考慮して開催の日時及び場所を定め、管理事務の委託を受けた管理組合ごとに開催する」ものとされています(同条1項)。「管理事務の委託を受けた管理組合ごとに開催する」とされているのは、複合用途型のマンションで、全体共用部分と一部管理組合がある場合や、団地管理組合の他に各棟管理組合が併存している場合に、複数の管理組合から委託を受けることがあるからです。

そして、区分所有者等や管理者等には、説明会に参加してもらわなければいけませんので、「マンション管理業者は、説明会の開催日の1週間前までに説明会の開催の日時及び場所について、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等及び当該管理組合の管理者等の見やすい場所に掲示しなければならない」とされています。

(5) 説明者

そして、実際に説明会で説明するのは、「管理業務主任者」ということになります。

これについては、通達があり「重要事項の説明については、事務所ごとに置かれる法第56条第1項の成年者である「専任の」管理業務主任者が行うことが望ましいこと。」とされています。これは、重要事項の説明は必ずしも専任の管理業務主任者が行うことは法律上要求されていないが、やはり専任の管理業務主任者が行うことが「望ましい」ということになります。

(6) 重要事項

それでは、説明しなければならない「重要事項」とは、どういうものでしょうか。これは、施行規則84条に列挙されています。

なお、この列挙事項ですが、これについても通達があり、「施行規則第84条各号に掲げる重要事項は、マンション管理業者が管理組合を構成するマンションの区分所有者等及び当該管理組合の管理者等に説明すべき事項を限定的に列挙したものであるが、これ以外にも場合によっては説明するのが望ましい事項があり得ること。」とされていますので、重要事項の説明事項は、最低限説明しなければならない事項という意味になります。一つずつ見て行きましょう。

①マンション管理業者の商号又は名称、住所、登録番号及び登録年月日

②管理事務の対象となるマンションの所在地に関する事項

③管理事務の対象となるマンションの部分に関する事項

④管理事務の内容及び実施方法(法第76条の規定により管理する財産の管理の方法を含む。)

⑤管理事務に要する費用並びにその支払の時期及び方法

この管理事務に要する費用というのは、委託業務を行うために必要な一切の費用のことで、標準管理委託契約書6条に規定がありますが、定額委託業務費(その負担方法が定額でかつ精算を要しない費用)だけでなく、定額委託業務費以外の費用も含みます。

⑥管理事務の一部の再委託に関する事項

そもそも基幹事務については、マンション管理業者は一括再委託することはできませんが(第74条)、基幹事務であっても一部の再委託はできますし、基幹事務以外の管理事務は再委託することはできます。そのような再委託が許される場合について、その内容などを記載します。

⑦保証契約に関する事項

保証契約というのは、財産の分別管理の規定で定められている保証契約のことです(施行規則87条)。

⑧免責に関する事項

⑨契約期間に関する事項

⑩契約の更新に関する事項

⑪契約の解除に関する事項

債務不履行の場合等の契約の解除に関する内容を記載します。

2.重要事項の説明が不要な場合

第1項には括弧書きで、例外的に重要事項の説明が不要な場合が規定されています。「新たに建設されたマンションの当該建設工事の完了の日から国土交通省令で定める期間(1年)を経過する日までの間に契約期間が満了するものを除く。」という部分です。

これは、まず「工事の完了の日」から起算して1年であり、「分譲開始」の日から1年ではありません。この「工事の完了の日」というのは、具体的には、工事の全過程を終了して、注文者・買主への引き渡しを残すのみに至った段階とされています。建築基準法施行規則別記様式19号(完了検査申請書)の「工事完了年月日」が参考とされます。

このように工事完了の日から1年までの間に管理受託契約の期間が満了するものについて、重要事項の説明が不要とされているのは、マンションの新規分譲の際には、区分所有者は順次入居してくるものであり、管理組合が実質的に機能しているとはいえないので、重要事項の説明を事前に行うための手続を進めるのに不都合が生じる反面、マンションの管理業務は直ちに必要となるので、1年以内に終了する最初の暫定的な短期の管理受託契約については、重要事項の説明を不要としたものです。

したがって、最初の管理受託契約でも、工事完了から1年以上に及ぶものや、1年以内の契約でも「更新」をする場合には、重要事項の説明が必要です。

なお、この場合でも重要事項の説明が不要なだけで、契約成立時の書面(第73条)については、このような例外は定められていませんので、必要になります。

最後に、若干細かい話ですが、本条で「管理受託契約」という言葉が使われていますが、その定義として「マンション管理業者は、管理組合から管理事務の委託を受けることを内容とする契約(新たに建設されたマンションの当該建設工事の完了の日から国土交通省令で定める期間(1年)を経過する日までの間に契約期間が満了するものを除く。以下「管理受託契約」という。)」というふうに規定されています。つまり、「管理受託契約」というのは、工事完了から1年未満のものは除かれていることになります。そして、この工事完了から1年未満のものを除いた管理事務の委託契約(管理受託契約)について、契約前に重要事項の説明のための説明会等が必要だ、というふうに規定されています。さらに括弧書きで「次項に規定するときを除く。」となっていますので、工事完了から1年未満のものを除いた管理事務の委託契約(管理受託契約)でも、同一の条件で更新する場合は、説明会までは不要です、という規定の仕方になっているわけです。これが、法律の条文の書き方です。

3.管理受託契約の更新(同一の条件)(第2項・第3項)

第2項と第3項は、「従前の管理受託契約と同一の条件」で更新される場合の規定です。

この場合は、あらかじめ区分所有者等全員に対し重要事項を記載した書面を交付し(説明会は不要)(第2項)、管理組合に管理者等が置かれているときは、当該管理者等に対し、書面を交付した上で重要事項の説明が必要となります(第3項)。

管理受託契約の更新が「同一の条件」ではない場合は、特に規定がありませんので、通常の新規の管理受託契約の締結の場合と同様に、第1項が適用され、説明会等が必要とされます。

この第2項と第3項は条文の規定の仕方がややこしいと思います。

まず、第2項で、管理者等が置かれるいるか否かを問わず、区分所有者等全員に対して重要事項の説明書の交付が必要である旨を規定した上で、第3項は、管理者等が置かれているときには、管理者等に対しては説明が必要だと規定しています。

管理者等が置かれているかどうかという観点からまとめると、以下のようになります。

管理者等あり…区分所有者等全員に書面(2項)+管理者等に書面・説明(3項)
管理者等なし…区分所有者等全員に書面(2項)

以上を前提に、第1項~第3項まで全体をまとめてみます。

次の問題は「同一の条件」とはどういう場合か、です。これについては、通達があります。

国総動第309号、平成14年2月28日
5 「従前の管理受託契約と同一の条件」について
法第72条第2項に規定する「同一の条件」には、施行通達第二3(1)ハの「マンション管理業者の商号又は名称、登録年月日及び登録番号」の変更に加え、以下に関しての契約内容の軽微な変更も含むものであること。
(1) 従前の管理受託契約と管理事務の内容及び実施方法(法第76条の規定により管理する財産の管理の方法を含む。以下同じ。)を同一とし、管理事務に要する費用の額を減額しようとする場合
(2) 従前の管理受託契約に比して管理事務の内容及び実施方法の範囲を拡大し、管理事務に要する費用の額を同一とし又は減額しようとする場合
(3) 従前の管理受託契約に比して管理事務に要する費用の支払いの時期を後に変更(前払いを当月払い若しくは後払い、又は当月払いを後払い)しようとする場合
(4) 従前の管理受託契約に比して更新後の契約期間を短縮しようとする場合
(5) 管理事務の対象となるマンションの所在地の名称が変更される場合

これは上記通達を読んでいただければ分かりますが、要するに管理組合に有利な内容に変更される場合も含む、と考えれば分かりやすいでしょう。

4.管理業務主任者証の提示(第4項)

管理業務主任者は、重要事項の「説明」をするときは、管理業務主任者証を提示しなければいけません。これは、説明会で説明するときも、第3項で管理者等に対して対面で説明するときでも同じです。

この重要事項の説明の際の管理業務主任者証の提示義務に違反した場合は、10万円以下の過料に処せられます(第113条)。

5.管理業務主任者の記名押印(第5項)

重要事項の説明書には、管理業務主任者が記名押印する必要がありますが、通達がありますので、それを紹介しましょう。

国総動第309号、平成14年2月28日
(2) 重要事項説明書への「記名押印」
イ)法第72条第5項において、管理業務主任者は重要事項説明書に記名押印をすべきこととされているが、この場合において「記名」されるべき管理業務主任者は、原則として、重要事項について十分に調査検討し、それらの事項が真実に合致し誤り及び記載漏れがないかどうか等を確認した者であって、実際に当該重要事項説明書をもって重要事項説明を行う者であること。
ロ)また、「記名」については、署名と異なり、当該管理業務主任者以外の者によりなされ又は印刷によっても差し支えないが、「押印」については当該管理業務主任者が自らが行わなければならないこと。