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区分所有法68条(規約の設定の特例)

【解説】

1.団地規約

本条は、なかなか難解な条文ではないかと思います。書いてあることは、それなりに分かる感じがしますが、具体的に、どのような状況で誰の同意が必要なのか等について分かりにくい部分があります。そこで、まず抽象的に条文を解説した上で、次に具体例を挙げておいて、その例を使いながら解説することにします。

団地においては、全員の共有する土地又は附属施設については、団地管理組合の管理の対象となります。しかし、団地内の「一部」の建物所有者の共有に属するものについては、そのままでは団地管理組合「全体」で管理することはできません。

そこで、規約を設定して、団地内の「一部」の建物所有者の共有に属するものでも、団地管理組合「全体」で管理することができます。それが本条の「規約の設定の特例」です。

まず、この「一部の建物所有者の共有に属するものを団地管理組合全体で管理」するには、規約を設定する必要があるわけですが、そのためには団地管理組合「全体」の区分所有者及び議決権の3/4以上の集会の決議が必要です。これは規約の設定である以上、前提です。そして、全体として3/4の決議が必要なだけでなく、当該「一部」の建物所有者の3/4の同意も必要となります。要するに「全体の3/4+一部共有者の3/4」の両方の同意又は決議が必要となるわけです。

より詳しく説明すると、「一団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)が当該団地内の一部の建物の所有者(専有部分のある建物にあっては、区分所有者)の共有に属する場合における当該土地又は附属施設(専有部分のある建物以外の建物の所有者のみの共有に属するものを除く。)」にあっては、(団地管理組合全体の3/4の決議とは別に)当該土地の全部又は附属施設の全部につきそれぞれ共有者の4分の3以上でその持分の4分の3以上を有するものの同意が必要です。

次に、「当該団地内の専有部分のある建物」にあっては、(団地管理組合全体の3/4の決議とは別に)その全部につきそれぞれ集会における区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による決議があることを必要とします。

以上を前提に具体的に見ていきましょう。

上記の例を見て下さい。A・B・Cは区分所有建物で、D・Eは一戸建てです。
A~Eは、通路を共有しています。
A・Bは甲地を共有しています。
D・Eは丙地を共有しています。

① 通路について

この場合、A~Eは通路を共有しているので、全体で団地を形成しています。さて、この団地の規約の設定の特例ですが、なかなか難解な条文ではないかと思います。

② 甲地について

甲地については、A・Bのみが共有しており、A~E全員で共有しているわけではないので、A~E全体の団地規約(以下、この全体の団地規約を単に「団地規約」という。)でその管理の対象と定めることはできないはずです。

しかし、本条によって管理の対象とすることができるので、本条のタイトルは「規約の設定の『特例』」となっているわけです。A~Eで、通路だけでなく、甲地もまとめて管理しようというわけです。それが第1項1号です。

「一団地内の土地又は附属施設が当該団地内の『一部』の建物の所有者の共有に属する場合における当該土地又は附属施設」を団地規約で管理の対象と定めることができます。

その場合の要件は、まず団地規約で甲地を管理の対象に取り込むわけですから、A~E全体の共有者の4分の3以上で、かつ、その持分の4分の3以上有するものの同意で団地規約を設定する必要があります。

それに加えて、AとBの共有者の4分の3以上でその持分の4分の3以上を有するものの同意が必要なります。

つまり、A~Eの3/4と、A・Bの3/4の両方の同意が必要となるわけです。

以上を満たすと、A~Eで、通路+甲地を管理できるようになります。

③ 乙地について

団地規約で、本来は管理の対象でない土地を管理の対象に取り込むには、「一団地内の土地が当該団地内の一部の建物の所有者の共有に属する場合」でなければいけません。甲地にあっては、AとBで土地を「共有」していましたが、乙地にあっては、Cしかありません。

そこで、全体の団地規約に管理対象として取り込めないのか、というと、そうではありません。

第1項第1号は、「一団地内の土地が当該団地内の一部の建物の所有者(専有部分のある建物にあっては、区分所有者)の共有に属する場合」については、全体の団地規約に管理対象として取り込めます。「一部の建物の所有者(専有部分のある建物にあっては、区分所有者)」とありますので、区分所有建物が一つしかない場合でも、その区分所有者が共有していればいいんです。

ということは、Cは区分所有建物ですから、区分所有者が複数いますので、その複数の区分所有者が共有していれば、団地規約に取り込むことができます。したがって、乙地についても団地規約に取り込むことができます。

もちろん、そのときの要件は、A~Eの3/4と、Cの3/4の両方の同意です。

④ 丙地について

それでは丙地ついてはどうでしょうか。

これは、DとEが土地を共有しているので、団地規約に取り込むことができそうに思えますが、これはできません。

というのは、第1項第1号に「専有部分のある建物以外の建物の所有者『のみ』の共有に属するものを除く。」となっているからです。つまり、一戸建て「のみ」の共有に属するものを除くということです。

その理由は、第1項第2号で区分所有建物以外の建物を除外したためであるとされています。それゆえ、戸建建物が団地の規約に従うのは65条の団体の構成員となったときのみということになります。

したがって、団地規約の管理の対象取り込めません。

⑤ A棟等について

次に、A棟・B棟・C棟それぞれの建物(の共用部分)についてはどうでしょうか。

これは、第1項第2号によって、団地規約の管理の対象に取り込むことができます。「団地内の専有部分のある建物」に該当するわけです。

このときの要件は、A~Eの3/4と、Aの3/4、Bの3/4、Cの3/4すべての同意です。

なお、区分所有建物が団地規約で管理の対象になっても、棟の管理組合が消滅することはなく、義務違反者に対する措置や復旧・建て替え決議等の固有の権限を行使することになります。

⑥ D建物等について

これはできません。第1項の第1号・第2号いずれにも出てこないからです。

このように、戸建ての建物を対象にできないのは、そもそもその管理は、その各所有者が自らすべきものだからです。

2.一部共用部分が含まれる場合(第2項)

これは、団地規約に組み込もうとする区分所有建物に一部共用部分がある場合の話で、この場合は通常の一部共用部分に関する規約の規定が準用されます(31条2項)。

3.団地規約からの離脱

第1項で、一部の建物所有者の共有に属する土地又は附属施設(1号)、あるいは区分所有建物(2号)が団地規約の管理対象物に含まれた後に、団地規約から離脱しようという場合は、当然のことながら、当該一部建物所有者や区分所有者のみの決議で団地規約から離脱することはできず、団地規約自体の変更又は廃止によらなければ、団地規約から離脱することはできません。