区分所有法60条(占有者に対する引渡し請求)

【解説】

1.占有者に対する引渡し請求

本条は、占有者に対する措置についてです。

占有者に対する措置については、「行為の停止等の請求」がありますが、これは区分所有者に対するものと同じです。

それ以外の占有者に対する措置が本条の規定で、占有者に対する引渡し請求です。

これは占有者は賃貸借契約等に基づいて占有しているわけですから、「占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求することができる。」ということになります。

なお、本条第1項の「使用又は収益を目的とする契約」というのは、具体的には賃貸借契約、使用貸借契約、そして、転貸借契約も含みます。

つまり、賃貸借契約等の解除→引渡し請求ということになります。これは、占有者に出て行ってもらうという意味です。

この請求を行うに当たり、事前に、賃貸している区分所有者の同意を得る必要はありません。

2.手続的要件

この措置も強力な措置なので、「訴え」+「区分所有者及び議決権の3/4以上の集会の決議」が必要になります。また、弁明の機会を与える必要がありますが、占有者に弁明の機会を与えればよく、区分所有者には与える必要はありません。

ちなみに、この集会の決議で直ちに管理組合(又は管理組合法人)が賃貸借契約を解除できるわけではありません。集会の決議を経て、「裁判所に解除を請求」することができるという意味です。解除をするのはあくまで裁判所です。

そして、この訴訟の被告は賃貸人・賃借人の両方になります。これは、契約当事者以外の者の請求に基づき、契約の解除の効果を生じさせるものだからです。賃貸借契約が解除されると賃料収入を失うことになる賃貸人にも訴訟の場で弁論をさせる必要もあるでしょう。

3.効果

原告の請求に対して、裁判所は「被告(賃借人)は、原告(管理組合又は管理組合法人)に対して引き渡せ」という判決をすることになります。そして、判決に基づき専有部分の引渡しを受けた者(管理組合法人又は管理者等)は、遅滞なく、その専有部分を占有する権原を有する者(通常は、専有部分の所有者・賃貸人)に、これを引き渡さなければいけません。転貸借契約の解除の場合は、転貸人に引渡すことになります。

判決→原告(管理組合又は管理組合法人)に引渡し→区分所有者(賃貸人)に引渡しという流れになり、直接区分所有者に引き渡されるわけではないことに注意して下さい。

判決により、直接区分所有者に引き渡せばよいようなものですが、区分所有者が引渡しを受けない場合は、そのまま賃借人に占有が残り、賃借人を追い出すという目的が達成できなくなるので、一旦原告(管理組合又は管理組合法人)に引き渡すようにしているわけです。