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区分所有法59条(区分所有権の競売の請求)

【解説】

区分所有者に対する措置で最も強力なものが区分所有者に対する「区分所有権の競売の請求」です。

「使用禁止の請求」は、専有部分の使用を禁止するだけで、専有部分の所有権つまり区分所有権は元の区分所有者にあります。ところが、この「区分所有権の競売の請求」は、専有部分自体を競売にかけて、区分所有者から区分所有権を奪おうというものです。言い換えれば、義務違反者にマンションから「出て行ってもらう」という意味です。

したがって、当該義務違反者が、専有部分をすでに譲渡した場合には、本人はすでに出て行っているわけだから、この競売請求は認められません。

また、この競売において義務違反者が買受人となることはできない(第4項)。義務違反者を排除することが目的だからです。

この競売請求が認められるには、「他の方法によっては … 区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難」な場合であり、いわば「伝家の宝刀」的意義をもつ最終手段です。

そして、「他の方法によっては … 区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難」であれば、必ずしも使用禁止の請求を経なくても競売請求が認められます。

競売請求は、このように大変強力な措置ですので、必ず「訴え」という方法で行い、その訴えを行うには、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の集会の決議が必要です。また、その集会において、当該区分所有者に弁明の機会を与えなければいけません(第2項)。

ただ、義務違反者の立場を長期間不安定にしないように、競売の申立ては、判決が確定した日から6月を経過したときは、することができません(第3項)。