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区分所有法47条(成立等)

【解説】

1.管理組合法人の意味

区分所有建物の場合、区分所有者というのは自動的に管理組合の構成員になります。したがって、どんな区分所有建物にも管理組合は存在します。この管理組合が何の活動もせず、全然機能していない場合もあります。しかし、それは管理組合が何もしないだけで、存在しないということではありません。

そして、この管理組合は「法人化」することができます。管理組合法人です。

この管理組合を法人にするというのは、どういうことか?この法人というのは、それ自体一つの存在で、法人名義で権利義務の主体となります。法人の典型例は株式会社ですが、株式会社というのは、社員や社長(代表取締役)から離れて、それ自体独立の存在です。その証拠に、社長が変わろうが、社員が辞めようが、会社それ自体は継続して存続していきます。つまり、会社名義で不動産を所有したり、銀行口座を作ったりできます。代表取締役は、あくまで、会社を代表しているだけで、権利義務自体は会社に帰属します。

これは管理組合法人でも同じです。たとえば、区分所有建物は、その管理のためにお金が必要なので管理費というのを毎月徴収しています。この管理費を、管理していかないといけないわけですが、その管理費のために銀行口座を作ります。このときに、管理組合法人にしておきますと、法人名義の口座を作ることができます。また、不動産についても管理組合法人名義で登記ができます。法人化しておくと、何かと便利な点が出てくるというわけです。

2.管理組合の法人化の要件

それでは、管理組合を法人化するにはどうしたらいいでしょうか。第1項に規定があります。

まず、「第3条に規定する団体は」とありますので、普通の管理組合が法人化することができます。

本条は実は法改正された規定なんですが、以前は区分所有者の数が30名以上というような要件がありましたが、現在はそのような区分所有者の数の要件はありません。区分所有者の数は2名以上いれば、法人化できます。

それ以外に特に要件はありませんので、たとえば管理規約の存在などは要求されていません(規約がないような管理組合が法人化するとは思えませんが、法律上は特に規約がなくても支障がありません。)

また、「第3条に規定する団体」の中には一部管理組合も含まれますので、一部管理組合も法人化することができます。

次に、「区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議」が必要となります。当然「4分の3」という数字が重要です。特別決議事項です。

そして、「集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め」る必要があります。

さらに、「その主たる事務所の所在地において登記をすることによって法人となる」となっています。つまり、法人の登記は、対抗要件ではなく、成立要件となっていますので、登記がない限り法人とはなりません。

このように成立した管理組合法人は、一般社団法人になります。財団法人などと試験出題されれば「誤り」です。

3.管理組合法人の登記

第1項により、管理組合法人となるには登記が成立要件となっていますが、この管理組合法人の登記については、組合等登記令という政令があり、次のような登記事項が定められています。

登記事項

一 目的及び業務
二 名称
三 事務所の所在場所
四 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
五 存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
六 別表の登記事項の欄に掲げる事項

※代表権を有する理事は登記事項だが、代表権を有しない有しない理事や監事は登記事項ではない。

※組合は登記事項に変更を生じたときは、主たる事務所の所在地においては2週間以内に変更の登記をしなければならない(令3条1項)。

※管理の目的物である建物を所在及び番号等で特定した上、これらの事項を証する書面を添付しなければならない

そして、この登記事項は、登記した後でなければ、第三者に対抗することができません(第4項)。

4.管理組合法人の成立前の集会の決議等

管理組合法人というのは、「第3条に規定する団体」(管理組合)が、法人格を取得したものですから、団体としての実体については同一性があります。

そこで、管理組合法人の成立前の集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人につき効力を生ずるとされています。

5.管理組合法人の代理権

法人化されていない管理組合においては、「管理者」が区分所有者の代理人とされていました(法26条2項)。

しかし、管理組合法人においては、管理組合法人自身が区分所有者を代理することになる。これについて、理事が代理するのではないことに注意して下さい。理事は、管理組合法人を「代表」します。

損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様である。

また、管理組合法人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができません。法人化されていない管理組合においては、管理者の規定として同様の規定がありました(法26条3項)。

6.管理組合法人の訴訟追行権

この規定も、法人化されていない管理組合おいて、「管理者」が原告又は被告となる旨の規定がありましたが、管理組合法人が原告又は被告となります。理事ではありません。

7.管理組合法人について他の法律の準用

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第4条及び第78条の規定は管理組合法人に、破産法第16条第2項の規定は存立中の管理組合法人に準用されています。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律について、読み替えた上で記載すると、

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第4条(住所)
「管理組合法人の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとする。」

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第78条(代表者の行為についての損害賠償責任)
「管理組合法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」

破産法の方は、元の条文がややこしいので、内容を記載しますと、「管理組合法人として存立中は、一般の法人とは異なり、債務超過は破産原因にならない。」となります。なぜならば、管理組合法人の債務について各区分所有権者が分割的個人的責任を負うからです(法53条)。

8.管理組合法人に管理者等の規定の不適用

法人化していない管理組合においては、管理者が区分所有者の代理人となっていましたが、管理組合法人は、それ自身が法人格を持つので、管理組合法人が区分所有者の代理人となります。

ところで、管理組合法人には、理事がいて、これは法人でない管理組合の管理者に相当するものですが、管理組合法人の場合は、法人が区分所有者の代理人となるので、理事が代理するわけではありません。理事は管理組合法人を「代表」します。

この「代理」と「代表」の違いというのは分かりにくいと思います。

代表というのは、法人の機関として、法人の行為とみなされることを行うことです。

法人の「機関」としてというのが、また分かりにくいと思いますが、法人の「手足」として、と考えれば分かりやすいかと思います。

法人というのは、それ自体抽象的な存在なので、法人の手足として活動する存在が必要です。それが法人の機関です。その法人の機関として「理事」というのがあります。

そして、理事が行為を行いますと、それは法人の行為となります。

イメージでいうと、上記の図のように、理事は法人の内部にいて、法人の手足として契約等を行いますが、代理人というのは、法人の外部の人間で、一定の行為の授権を受けて、本人(法人)のために契約等を行うと、その行為の効果が本人に帰属するというものです。

このように、管理組合法人には、「管理者」に相当する「理事」といますので、管理組合法人には管理者は不要となり、管理者は退任することになります。仮に同一人が管理者から理事になったとしても、法的には、それはその同一人が、一旦管理者を退任した上で、理事に就任するということになります。

以上より、管理組合法人は「第4節 管理者」の規定は適用されません。したがって、たとえば理事は共用部分を管理所有することはできません。

なお、第33条第1項ただし書(第42条第5項及び第45条第4項において準用する場合を含む。)の規定も準用されていませんが、この規定は、管理者(管理組合法人でいえば理事)がいない場合の規定ですが、管理組合法人においては、理事は必要的な機関であり、理事がいないという事態は存在しないからです。

9.管理組合の規定の管理組合法人への準用

第11項に対して、規約及び集会に関する規定は、管理組合法人についても、一定の読み替えの上適用されます。たとえば、規約は理事が法人の事務所で保管します。