区分所有法44条(占有者の意見陳述権)
【解説】
1.占有者の意見陳述権(第1項)
集会において議決権を有するのは、区分所有者であって、占有者には議決権はありません。
ただ、「占有者は、建物等の使用方法につき、区分所有者が規約又は集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う」(法46条2項)ので、占有者に集会での意見陳述権というものを与えました。
本条で「区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者」というのが出てきますが、ちょっとイメージが湧きにくい表現ですが、具体的には賃借人のような人を指し、不法占拠者などは含まないという意味です。これは当然ですね。不法占拠者に意見陳述権を与える必要はありません。
次に、この占有者の意見陳述権は、賃借人などであればどんな場合でも意見を陳述できるとは限りません。あくまで「会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合」に限ります。
そして、占有者は、建物等の「使用方法」につき義務を負うわけですから、たとえば、集会でペット禁止にしようという議題のときには、ペットを飼っている占有者は利害関係があるといえるでしょう。
ただ、この利害関係は「法律上の利害関係」を指しものだと言われます。つまり、単なる事実上の利害関係は含まれないことになります。
たとえば、集会の議題が、専用使用料や管理費の値上げだったとします。専用使用料や管理費というのは、建物等の「使用方法」に関するものではなく、「管理」に関する事項なので、占有者は「法律上の利害関係」はないものとされます。
確かに、管理費が値上げされると、賃貸人である区分所有者は、負担が大きくなるので、賃借人(占有者)に対する賃料の値上げという形で間接的に影響が生じる可能性はあります。しかし、そのようなものは、単なる「事実上の利害関係」にすぎないと考えられます。
2.集会の掲示(第2項)
第1項で述べましたように占有者には議決権はないので、集会の招集通知の必要はありませんが、占有者には集会での意見陳述権がありますので、この権利を確保するために、集会の日時、場所及び会議の目的たる事項を建物内の見やすい場所に掲示しなければいけません。