区分所有法39条(議事)
【解説】
1.集会の議事
本条は、集会の議事は、原則として「区分所有者及び議決権」の各過半数で決する旨を定めています。
区分所有法において、集会の決議というのは、「区分所有者及び議決権」で定めるという規定になっています。
ここに「区分所有者」というのは、区分所有者の頭数(あたまかず)、つまり人数で決めます。
それに対して「議決権」というのは、専有部分の床面積で決めます(38条参照)。
「及び」というのは、「両方とも」という意味です。
つまり、「区分所有者及び議決権の各過半数」というのは、人数の点でも、床面積の点でも、過半数で決めないといけないという意味です。
ちなみに、「過半数」の意味は分かると思いますが、きっちり半分というのは過半数ではありません。「過」半数というくらいですから、ほんの少しでも半数を超えていないといけません。
また、区分所有法にいう「区分所有者及び議決権」というのは、「『総』区分所有者及び『総』議決権」という意味です。「集会に出席した区分所有者及び議決権」という意味ではありませんので、たとえば普通決議で過半数といっても、結構重い要件になります。
もっとも標準管理規約では、普通決議は「出席組合員の議決権の過半数」となっています(標準管理規約47条2項)
最後に、区分所有法では、いわゆる定足数の定めというはありません。
2.議決権の行使者
集会で、議決権を有するのは区分所有者です。当たり前ではないか、と思うかもしれませんが、実はマンションには区分所有法の表現でいうと「占有者」という人がいる場合も結構あります。「占有者」というのは簡単にいうと賃借人です。
マンションの住民の中には、自分でそのマンションに住まず、自分の部屋を人に賃貸している人もいます。この場合、マンションに住んでいるのは「占有者」、区分所有者はそのマンションとは別のところに住んでいます。
この場合でも、区分所有者に議決権があります。占有者には議決権はありません。 →占有者の意見陳述権については第44条参照。
また、売れ残り住戸の分譲業者も区分所有者になるので、議決権があります。
3.代理人による議決権行使(第2項)
集会は、必ずしも区分所有者本人が出席しなければならないというものではなく、代理人が出席して議決権を行使してもかまいません。
この代理人による議決権行使とは、区分所有者本人から代理権を授与された代理人が集会に出席して議決権を行使することです。つまり、賛成・反対は代理人が決定します。
夫が専有部分の名義人で区分所有者であるが、仕事で忙しいので妻が出席して議決権を行使するなどという場合です。
4.書面による議決権行使(第2項)
マンションというのは、多くの人が住んでいるので、全員が集会の日に参加できるとは限りません。
そこで、書面による議決権行使というのが認められています。
集会の招集通知には、「会議の目的たる事項」(議題)というものが書かれています(第35条1項)。それについて賛成・反対を書面によって意思表示しておくというような場合です。つまり、賛成・反対は本人が決定します。
5.電磁的方法による議決権行使(第3項)
この「電磁的方法」による議決権の行使というのは、ややこしそうですが、要するにメールのことです。
今は、マンション全体でインターネットの回線を引いているところが多いでしょうから、書面だけでなくメールによっても議決権行使ができますということです。
ただ、この電磁的方法による議決権行使をするには、「規約又は集会の決議」が必要だという点は、確認しておいて下さい。