区分所有法35条(招集の通知)
【解説】
1.集会の招集手続(招集の通知)
この集会というのは、基本は管理者が招集しますが、招集するにはそれなりの手続というものが必要です。区分所有者全員に集会が行われることをちゃんと伝達しないといけないわけですね。
そのために招集通知というものが必要です。「集会の招集の通知は、会日より少なくとも『1週間前』に、『会議の目的たる事項』を示して、各『区分所有者』に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で『伸縮』することができる。」ということになります。『』で括ったところが重要です。
今日通知して、明日集会というのでは、みんなの都合がつきません。そこで、「1週間前」には通知するということです。
ところで、この「1週間前」のカウントの仕方ですが、特に変わったところはありません。民法で初日不算入の原則というのを勉強しますが、これは日付を後にカウントする場合だけでなく、前に遡る場合にも適用されます。
たとえば、8月20日13:00から集会が行われるとします。当然、8月20日は丸1日ありませんので、不算入です。
そこで、
①8月19日
②8月18日
③8月17日
④8月16日
⑤8月15日
⑥8月14日
⑦8月13日
8月13日が7日前になりますので、その前日の12日までに通知を発信しなければいけません。
中7日という説明の仕方もありますが、普通に民法で初日不算入の原則を適用すれば終わりです。
そして、招集通知は、「区分所有者」に対して行う必要があります。「占有者」に通知する必要はありません。
次に、この「1週間」というのは、規約で「伸縮」できます。「伸縮」というからには、短くも長くもできるという意味です。長くする方は、よく分かります。実際のマンションでも、規約で集会の招集は、2週間前というところも多いかと思います。短くする方は、ひっかかりやすいので注意して下さい。マンションといっても、大規模なマンションだけではありません。少ない世帯のマンションもあります。そういうところは、この期間を規約で「5日前」とかに短くしてもかまいません。
なお、先ほど招集通知の条文で、「会議の目的たる事項」を示して通知する、というのが出てきました。この「会議の目的たる事項」というのは、いわゆる「議題」のことです。たとえば、「管理費の額の改定」、「敷地の使用方法について」などてです。
これは、招集通知であらかじめ議題を示して、住民にあらかじめ考えておいてもらおうという趣旨です。
2.集会の招集通知~専有部分が数人の共有に属する場合
第2項は、専有部分が数人の共有に属するときの規定ですが、具体的には専有部分が夫婦共有名義なっている場合です。
このような場合、「共有者は、議決権を行使すべき者1人を定めなければならない。」(法40条)とされていますが、それに対応して、集会の招集通知は、議決権を行使すべき者にすれば足ります。
議決権を行使すべきものを定めていないときは、共有者のうちの任意の一人に通知すれば足ります。
3.集会の招集通知のあて先
集会の招集通知は、招集者がすべての区分所有者の現在の住所を調査して通知しなければならないとするのは酷であるから、「管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したとき」は、その場所に通知すればよいが、「これを通知しなかったとき」は、区分所有者の住所として最も可能性が高い専有部分にあてて通知すれば足りる旨を規定しています。
もっとも、通知先の届け出がなかったとしても、招集者が区分所有者の住所を把握しているときは、その住所に通知すること自体は差し支えありません。
4.掲示による通知
さて、この招集通知の通知方法ですが、普通は同じマンションに住んでいるので、郵便受けに通知を入れる形が多いんでしょうか。
ただ、掲示による招集通知という方法が認められています。
この掲示による招集通知が認められているのは、「建物内に住所を有する区分所有者」又は「通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者」になります。つまり、第3項により通知のあて先が「専有部分」になる場合に、この掲示による通知が認められることになります。
「管理者に対して通知を受けるべき場所を通知した」区分所有者に対しては、この掲示による通知は認められませんので、掲示による通知をしている場合でも、別途郵送等により通知する必要があります。
さらに、この規定で気を付けて欲しいのは、どんな場合でもこの掲示による招集通知が認められているわけではないということです。あくまで「規約に特別の定めがあるとき」しかこの掲示による招集通知は認められません。
以上、第3項と第4項の規定を一つにまとめておきます。なお、建物内に住所を有する区分所有者については、通知を受けるべき場所は当然専有部分だということでまとめています。
5.集会の招集通知~議案の要領
集会の招集通知をする際には、「会議の目的たる事項」(議題)を示す必要があります。
それだけではなく、一定の重要な事項を会議の目的とする場合には、それに加えて「議案の要領」も通知しなければならないとしたのが本項です。
ところで、この「議案の要領」の意味ですが、まず「会議の目的たる事項」(議題)は、集会で討議ないし決議する項目を指します。たとえば、「規約の変更」などです。
これに対して、「議案の要領」の「議案」とは、決議内容についての案です。たとえば、「規約中第○条第○項を「…」と改める。」などです。
そして、「議案の要領」の「要領」とは、議案を要約したもので、その内容が複雑であるときにこれを要約したものです。
このように一定の重要な事項について、議案の要領を通知することによって、区分所有者が十分な検討をした上で集会に臨むことができるようにしたわけです。
問題は、議案の要領の通知が必要な「一定の重要な事項」とは何かということですが、それは第5項で条文の形で示されています。
第17条第1項(共用部分の重大変更)、第31条第1項(規約の設定・変更・廃止)、第61条第5項(大規模滅失の場合の復旧)、第62条第1項(建替え)、第68条第1項(団地規約の設定)又は第69条第7項(団地内建物の一括建替え承認決議)になります。
これらの事項の共通点は、特別決議事項だということです。
特別決議事項というのは、重要だから特別決議事項になっているわけですから、当然といえば当然です。
ただ、気を付けてもらいたいことがあります。同じ特別決議事項でも、管理組合の法人化と義務違反者に対する措置が外されているということです。これらについては、議案の要領の通知が必要とされていません。
これは、そのやり方について多様のバリエーションがあるわけではなく、会議の目的たる事項さえ示されていればあらかじめ判断できるからです。