区分所有法26条(権限)

【解説】

1.管理者の権限

管理者というのは、具体的には管理組合の理事長のような人のことですが、それでは、この管理者はどのような仕事をするのでしょうか。

いろいろな説明の仕方があるかとは思いますが、ここでは対外的な面と、対内的な面を分けて説明してみましょう。

対外的な面(区分所有者以外の人に対する関係)は、簡単な言葉でいえば管理組合の代表者ということですが、第2項に「区分所有者を代理する」とあるように、区分所有者の代理人です。

また、「区分所有者のために、原告又は被告」となることもあります。

次に、対内的な面(管理組合内部の仕事)が、ちょっと分かりにくいというのか、整理しずらいところかな、と思います。

もともと管理組合は、共用部分等の管理をするための団体ですが、基本的にはこの共用部分等の管理については、区分所有法は集会の決議と規約というのをもとに行うことになっています。

しかし、集会というのは、区分所有者の意思決定を行うものであり、規約というのは紙(又は電磁的記録)に書かれたものです。

集会で物事を決めたり、規約だけでは、具体的に話は前に進みません。

そこで、集会や規約で定められたことを実行する人が必要ですが、この実行役が管理者と考えれば分かりやすいと思います。

以上で理解した上で、第1項を読んでいただければ分かりやすいでしょう。

ところで、第1項では、管理者は共用部分等を「保存し」とありますので、管理者は保存行為をすることができますが、軽微変更をすることはできません。管理者が軽微変更まで行いたいのであれば、第27条の管理所有をする必要があります。

2.管理者の代理権

第2項は、先ほど述べましたように、管理者は区分所有者の代理人として法律行為を行います。そして、この法律行為の効果は区分所有者の全員に帰属することになります。

この法律行為の効果が区分所有者に帰属するというのは、区分所有者全員を意味するので、「区分所有者の一部の者」のために行うわけではありません。

また、第2項には「損害保険契約に基づく保険金額の請求及び受領」についても代理権を認めています。

もともと「共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項」とみなされていますので(法18条4項)、管理者が集会の決議に基づいて区分所有者を代理して保険契約を締結することができます。

ただ、管理者は保険契約を締結できるけれども、本来、保険金請求権は各区分所有者に帰属するものです。管理者は保険契約を締結できるからといって、当然に保険金を受領できるわけではありません。

しかし、もともと保険は共用部分等が既存・滅失した場合の補修等の費用に充てるものです。

したがって、一旦各区分所有者が保険金を受領し、再度その保険金を徴収して共用部分等の補修等を行うよりも、管理者が一括して保険金を受領し補修等の費用に充てる方が望ましい。

そこで、このような規定が定められたわけです。

上記の理由は、「共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金」にも当てはまります。

3.管理者の代理権に加えた制限

この代理権に関して、「管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。」と定めたのが第3項です。

これは、管理者の代理権に制限を加えることができることを前提に、その制限を第三者に対抗できない旨を定めています。

たとえば、一定の金額以上の契約については、管理者に代理権を認めないとする場合などです。

4.訴訟の原告又は被告(第4項)

その他に、「管理者は、規約又は集会の決議により、その職務に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができ」ます。

管理組合も訴えたり、訴えられたりする場合があります。管理費等の滞納などの問題を考えてみればすぐに分かる通りです。

その場合に管理組合を代表して原告又は被告となるわけです。

ただ、気を付けてもらいたいのは、管理者だからといって、当然に管理組合のために原告又は被告になることができるわけではありません。「規約」又は「集会の決議」が必要です。

なお、条文には「原告又は被告」とありますが、それに限らず、仮差押えや仮処分の申請又はその相手方となったり、民事執行・民事調停の当事者となることも含みます。

5.区分所有者に対する通知(第5項)

管理者は、「規約」又は「集会の決議」により、区分所有者のために原告又は被告となるということは、管理者が原告又は被告になるパターンは、「規約」による場合と、「集会の決議」による場合があります。

このうち、「規約」により原告又は被告となったときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければいけません。

集会の決議により原告又は被告となった場合は、区分所有者が集会で自ら選任しているわけですから、区分所有者に分かりますが、規約の場合は、包括的に原告又は被告になることを授権しているわけですから、訴訟があることが分からないからです。

「集会の決議」による場合は通知は不要だという点を確認しておいて下さい。

なお、この通知には第35条第2項から第4項までの規定、つまり集会の招集通知の規定が準用されています。

6.管理者のその他の法定権限

以上、管理者の権限を説明してきましたが、本条以外にも区分所有法には個別に管理者の権利・義務が定められていますので、それをまとめておきます。

  • 集会招集権(34条)
  • 集会の議長になる(41条)
  • 規約・集会の議事録等の保管、閲覧をさせる義務(33条、42条3項、45条2項)
  • 事務の報告義務(43条)