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区分所有法11条(共用部分の共有関係)

【解説】

1.共用部分の共有関係

区分所有建物は専有部分と共用部分に分かれますが、何と言っても問題が多いのが共用部分です。共用部分で、まず確認しないといけないのが、共用部分は、基本的に区分所有者全員の共有に属する、という点です。

もちろん、一部共用部分ついては、これを共用すべき区分所有者の共有に属します。

2.共用部分の共有関係に関する規約の定め

ただ、この点については「規約で別段の定め」をすることができます。

たとえば、「区分所有者全員の共用部分を一部区分所有者の共有」としたり、「一部共用部分を区分所有者全員の共有」とすることができます。

ただし、第27条第1項(管理所有)の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできません。

この規定は、若干分かりにくいと思いますが、規約で別段の定めをする場合として、ある特定の者を共用部分の所有者と定めることができます。これは管理の都合上、特定の者に共用部分の管理を委ねた方がよい場合もあるからです。

しかし、そのような場合でも、区分所有者以外のいわば部外者に管理を委ねると、区分所有者の利益に反するような事態もあり得るので、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできないとしているわけです。

ただ、これには「管理所有の場合を除いて」という例外があります。

つまり、管理所有の場合には、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることができます。

管理所有というのは、管理者が、共用部分を所有することです。そして、この管理者について特に資格等の制限はないので(法25条)、区分所有者以外の者も管理者になることができます。

つまり、区分所有者以外の者が管理者になっている場合、区分所有者以外の管理者が、共用部分の所有者になれば、結果的に区分所有者以外の者が共用部分の所有者になっていますが、それが管理者ならば認められるということです。

3.共用部分の対抗要件

第3項は、共用部分について民法177条の規定の適用を排除しています。

民法177条は、不動産物権の対抗要件の規定で「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」というおなじみの規定です。

そして、専有部分を売買した場合などの対抗要件は、問題なく登記ですが、区分所有者は専有部分の所有権だけでなく、共用部分の共有持分というものも持っています。

この共有持分は、所有権ですから、その共有持分の対抗要件はどうするのかという問題です。

普通考えれば「登記」ということになりそうですが、その登記が対抗要件という民法177条の規定を排除しているのが本項ですから、専有部分の譲渡に伴う共用部分の持分移転は、登記なく対抗できるということを意味しており、共用部分の共有持分については独自の対抗要件は不要です。

これは、共用部分の共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従うとされているので(法15条1項)、このような扱いになっています。