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区分所有法4条(共用部分)

【解説】

1.共用部分

マンションは専有部分だけから成り立っているわけではありません。全員が使う廊下とかエレベーターとかがあります。これを共用部分というわけです。

そして、この共用部分も2つの種類があります。法定共用部分と規約共用部分です。

2.法定共用部分(第1項)

法定共用部分とは、「数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分」のことをいいます。

「構造上」区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるということですから、その建物の部分の構造から考えて、誰が見ても共用部分と考えられるところです。

廊下、エレベーターが典型例です。

また、ベランダ、バルコニーも建物の基本構造部分であり、法定共用部分になります。このベランダ等については、専有部分だと考える人も多いと思いますが、ベランダ等は緊急時の避難路にもなるという点でも、共用部分だとされています。

ただ、通常時は各専有部分の区分所有者だけが使用できるという専用使用権というのが認められています。共用部分に専用使用権が設定されているのがベランダ等だということになります。

また、「全員」又はその「一部」の共用に供されるべき建物の部分ということですから、構造上、一部共用部分というのも含まれます。

これは、文章の最後の「区分所有権の目的とならない」という部分から分かりますように、法律が定めた共用部分なので、区分所有権の目的=専有部分となりません。

したがって、規約で法定共用部分を専有部分とすることはできません。

また、構造上の観点から、全体の共用部分か一部共用部分かも決まりますので、規約で一部共用部分としたりすることもできません。

「区分所有権」の目的とはなりません。要するに、この法定共用部分は、誰か個人の所有にすることはできず、住民のものだ、ということです。

そして、法定共用部分であるためには、区分所有者の供用に供されうる状態にあれば足り、現実に供用に供されていなくてもかまいません。

法定共用部分かどうかは、「構造」で決まるということです。

3.規約共用部分(第2項)

共用部分の2つ目は、規約共用部分です。

廊下とかエレベーターは、法律上当然に共用部分になりますが、管理組合というのは集会を開かないといけないわけですから、たとえば101号室を集会室にしたいというような場合があります。

しかし、101号室は専有部分です。そこで、規約によってこのような専有部分を共用部分とすることができます。

正確に言うと、「第1条に規定する建物の部分」(専有部分のこと)及び「附属の建物」を規約共用部分とすることができます。

専有部分を規約共用部分とするのは先ほどあげた例です。

また、附属の建物、たとえば別棟の小さな建物を集会室として利用するというような場合があります。

この附属の建物を規約共用部分とするという点は気を付ける必要があります。附属の建物は、そのままでは共用部分ではなく、附属の建物を共用部分とするには、規約が必要です。

もともと共用部分の定義というのは、第2条4項にあって、「専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第4条第2項の規定により共用部分とされた附属の建物」となっています。

したがって、附属の建物は、「専有部分以外の建物の部分」でも、「専有部分に属しない建物の附属物」でもない以上、「第4条第2項の規定(規約)により共用部分とされた附属の建物」という規定があってはじめて共用部分と認められるのであり、規約がなければ共用部分とはなりません。

4.共用部分の対抗要件(第3項)

法定共用部分は誰が見ても共用部分と分かるので、共用部分であることを登記しなくても対抗できますし、そもそも法定共用部分の登記などというものはできません。

しかし、規約共用部分は、法定共用部分と異なり、本来は専有部分であったり、附属の建物ですから、独立に売買の対象になったりします。

そこで、区分所有法は、この規約共用部分は、共用部分である旨を登記しないと第三者に対抗できないとしています。

たとえば、101号室を集会室とした場合、第三者がこの集会室とされた101号室を購入して登記することもできるので、そのような場合は、この登記を先に備えた第三者に規約共用部分であることを対抗できないとしたわけです。

ただ、あくまで登記がなければ、第三者に「対抗」(主張)できないだけですから、規約によって101号室を共用部分としておけば、登記をしなくても、101号室を「共用部分」とすること自体はできます。ただ、第三者が現れたときに、第三者に共用部分であることを対抗できないだけです。

ちなみに、規約共用部分である旨の登記は、登記簿の表題部に登記されます。